2074話 都合よくいかないな
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打ち合わせも終わり、昼食も済んだ頃……外でのんびり食休みをしていたはずの子どもたちが、不貞腐れた顔で食堂へ入ってきた。
何が起きているのか理解できていなかった俺は、近くにいた妻たちに助けを求める視線を向けた。
「シュウ君、外を見てみて」
ミリーに促されて、食堂から外を見る。
「ん? 暗いな。午前中はあんなに晴れてたのに、曇っちゃったのか?」
俺の少しズレた返答にため息をつきながら答えてくれた。
「はぁ……曇っただけじゃなくて、雨が降ってきたのよ。拠点がほとんど完成しててまだ助かったわね。馬車を中心とした拠点だったら、面倒だったわね」
よく目を凝らしてみると、小雨だが雨が降っているのを確認することができた。
内装はまだ途中だが、箱となる部分は完成しているので、室内での作業は問題なくできる状態だ。拠点の内装に関しては、時間がある時にのんびりやっていけばいいだろうと考えており、その前に時間的に余裕のない兵士たちの駐屯地を整備する予定だったのだ。
大雨になっても作業は出来るけど……そこまで急いでする作業でもない。先ほどまで話していた橋の計画は明日以降に持ち越しだな。
「となると、午後は何する?」
妻たちも土木組も、子どもたちも集まってきており、午後から何をするのがいいのか話し合いになる。
「ん~子どもたちは、2~3日勉強をしていないから、復習の意味も込めて簡単な勉強をしようかな?」
ピーチの言葉に、シンラたちは露骨に嫌な顔をしている。お前たち、勉強って言っても大したことしてないだろ。それなのにその顔ってどうなんだ?
実際の所シンラたちの勉強とは、知育玩具で遊ぶだけなのだが、動き回って遊ぶことが好きな下の子たち3人は、知育玩具でこまごまとした作業をするのが好きではないのだ。
嫌がることだから、俺はあまり強制はさせたくないのだが、妻たちが教育熱心になってしまっているようで、短時間でもいいから知育玩具などで遊ばせるようにしているのだ。
意味は分かっていないだろうが、姉たちにつられてゲームをしている姿も見られるので、動き回らなくても問題はないのだが……知育玩具は苦手なようなのだ。
母親に嫌なことを押し付けられれば、父親に助けを求めに来そうなのだが……下の子たちは、絶対に俺の所に来ない。向かう先は、姉たちの所か違う妻たちの所、従魔たちの所のどれかだな。特に従魔たちの所に行くことが多いな。
あいつらは、無条件で子どもたちを甘やかすので、初孫ができたおじいちゃんか! とツッコみたくなるレベルで甘やかすので、多少困っている。
それを注意したところで、最終的にメグちゃんが出てくるので、甘やかさないようにお願いするにとどまっている。ミーシャたちにもお願いして、下の子たちを余り甘やかさないように話してもらっているが、あまりうまくいっていない。
シンラたちは、ミーシャたちと一緒にいれば比較的大人しいので、ミーシャたちと一緒に勉強させてみてはどうか? という話になった。ミーシャたちと一緒というが、ミーシャたちがシンラたちと知育玩具で遊ぶ形のようだな。
シンラたちは、まだずっと起きていられないので途中でお昼寝をする必要がある。その時にミーシャたちも簡単な勉強……今までの復習をさせてはどうか? という話になったのだ。
ミーシャたちはシンラたちとは、遊ぶだけでいいと解釈したのか問題ないと答えが返ってきた。無理に勉強させる必要もないので、疲れたのなら一緒に寝ても問題ないしな。
子どもたちの中でも、ウルは別みたいだ。シルキーたちが時間の合間を縫って、勉強を教えているようで、いつ休んでいるのか心配になる位勉強熱心で少し困っている。勉強することは悪い事じゃないけど、それだけだと良くないと言いますか……
そんなことを妻たちに話すと、
「ウルちゃんは、シュウと違って効率よく色々しているから、心配いらないわよ。シュウは仕事は出来るのに、効率が悪いから時間がかかったりするのよ。もう少しウルちゃんを見習ったら?」
と、カエデに突っ込まれた。
え? 俺ってそんなに効率悪いの? 領主の仕事だって午前中にしっかり終わらせてるし、色々と熱中すると暴走する癖はあるけど、効率が悪いって程の事は無いと思うんだけど……
「またバカな事考えてる。シュウは、仕事は出来るって言ったじゃない。それ以外の時間の使い方に無駄があるって言ってるのよ。特に、色々開発中の時のシュウは、シルキーたちにも雷を落とされるくらい、いろんなものを度外視しているでしょ?」
それは、俺だけじゃなくて、鍛冶している時のお前やリンドもそうだろ!
そこから5分ほど、両者のボディーをえぐるような舌戦の末に、痛み分け……これ以上の話し合いは、お互いのためにならないので、強制終了とした。
内装に関しては、俺が口を出すと混乱の元になるので、午前中にあった問題の対処を検討するために、ディストピアへ戻ることにした。
正直なところ、俺って色々なモノに対するセンスがないから、こういったことは妻たちに任せるに限るのだ。俺の服は、全部妻たちが選んでくれたのを着ている。初めは、自分で選んでいたのを着ていたのだが、生活に慣れてきたところ、俺の格好がおかしいということになり、服などは妻たちが選んでいる。
選び始めた頃は、まだ妻ではなくご主人様とか呼ばれて、格好がダサい……ということを、遠回しに言われていたっけな?
懐かしい事を思い出しながら、庁舎へ向かった。
先に連絡を入れていたので、グリエルとガリアが間を置かずに執務室へ入ってきた。
「シュウ様、いきなりですが報告させていただきます。今の所、この書類を作った人間の特定はできていません。部署も名前の人物もあるのですが、その人物は全く違う場所で働いているので、名前だけ使われた形になっているようです」
「そこで、綾乃さんとバザールさんに相談したところ、ハッキングとまではいわないが、全てのシステムがオープンな状態だから、その隙をついて改ざんされたのではないか? との事でした」
2人の報告を聞いて、俺は思わず唸ってしまう。
この世界でも改ざん自体は普通に行われているが、俺たちの関係者で改ざんを行う者がいるとは考えていなかったので、プロテクトもほとんどかけていなかったのだ。その隙をついて、書類を紛れ込ませたか改ざんされたのではないか? というのが、綾乃とバザールの意見らしい。
この世界に無いシステムだけど、使い慣れてくれば色々いじるのは可能だ。しかも、プロテクトがかかっていないのであれば、小学生だって書類くらいならいじることは出来る。
ん~、無制限にアクセスできるわけじゃないけど、何かしらの隙を突かれたのは間違いなさそうだな。
どうすんべ?
「対策として、今回関わった人間を捕らえてから、USBキーの導入すれば当面の問題は解消できると思うと、綾乃さんが言っていました」
なるほど、USBキーね。確かにあれに段階的なアクセス権を設定しておけば、今回のようなことは防げるな。だけど、それ以外にも対策を考えていかないと、似たような問題が起こりそうだよな。
そこらへんは、また今度考えよう。今は、今回の問題を起こした人物の確保をしないといけないから、そっちに注力しよう。
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