2073話 ちょっとしたトラブル
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徹夜明けで眠いはずなのだが、俺の目はバッキバキでヤル気に満ち溢れている。シンラたちは、若干俺のテンションについてこれないような表情をしているが、まずは庁舎に行って領主の仕事をさっさと終わらせてくる。その間は、この島の整備をしててね!
庁舎で書類仕事を始めると、眠気が襲ってくるが……ここで寝てしまうと、妻たちや土木組からの信頼も駄々下がりしてしまう! 気合を入れるために、エナジードリンクに眠気覚ましの栄養剤と天丼をした。
自分でもヤバいテンションになっている自覚はあるが、このまま眠ってしまうよりはましだろう。戻る前に水シャワーでも浴びれば、多少元に戻るはずだ。
いつも以上の速度で書類を確認し、問題ないことを……っておい! こんな忙しい時に、フェイク書類入れておくないよ、ぶっ殺すぞ!
ただでさえ急いでいるのに、グリエルたちが用意したと思われる、フェイク書類が最後の方に隠れていやがったのだ。良く分からないイベントに対して、多額の資金を注ぎ込むという、いつもに比べて雑な書類だった。
分かりやすかったからよかったけど、忙しい今日仕込む必要なんてないよな?
俺の怒りが伝わったのか、護衛で来ていた四聖獣たちが日向でのんびりしていたのに、殺気を感じてか戦闘態勢になって俺の周囲へ駆けつけた。
それなりに広い部屋ではあるが、こいつらが元の姿に戻って周りに来ると……ちょっと暑苦しいのだが! しかも、俺の怒りに呼応するように殺気を放っており、周囲がピリピリしている。
『主殿、どうなされましたか? 敵の気配は感じられませんが、何かありましたか?』
っと、襲撃か何かを心配して俺の元に集まってきたのか。俺が怒った理由を説明すると、ため息をついて警戒態勢を解いて定位置へ戻っていってしまった……それはさすがに寂しいんだけどな。
しばらくすると、部屋の外が慌ただしくなり、扉を蹴り破る勢いで兵士が入ってきた。その後に続いてグリエルとガリアも入って来て、
「「シュウ様、何かありましたか!?」」
と、大きな声で俺に確認をとってきた。
お俺が怒った理由を伝えると、グリエルは混乱したような表情になる。ガリアも同じような感じだな。
2人が悩んでいる間に、突入してきた兵士に俺は小言を言われている。
俺やダマたちが本気で殺気を放ったため、秘書たちが全員気絶してしまった上に、耐性の低い下の階で働いていた職員たちが恐怖に飲まれてしまい、大変なことになっている……と怒られている。
でもさ、クッソ忙しい時にこんなくだらない書類を……はい、すいませんでした。
俺たちの様なレベルの高い人間の殺気や怒気は、常人には耐えられないのだから時と場合を選んでください! と、凄まれて怒られた。
Aランク上位くらいの冒険者の殺気や怒気であれば、常人でも何となく感じることができるかもしれない程度なのだが、生物の中で飛びぬけて強い俺たちの殺気や怒気は、下手したら狂死もあり得るレベルになるのだから、本気で怒られたよ。
生物的に強いモノの殺気や怒気って、そんなに危険な物なんだな……本当に反省しています。今日迷惑かけた人たちには、家族も含めブラウニー食堂で7回食事をタダにするからそれで許してくれ。グレン、食堂の方に連絡頼む。食事券はこっちで発行しておくから……
それで、グリエルとガリアよ、忙しい時にあんなくだらない書類を紛れ込ませるのは、どうかと思うぞ。
20分ほど怒られて反省した俺は、グリエルたちの元へ戻り書類について確認する。
「それなのですが、この書類……私たちが作った物ではないのです。どこにお金が出されるのか良く分からないですが、こんな雑な物は紛れ込ませません。それに、シュウ様が忙しいのはこちらも分かっていますので、そんな時にこんなことをするわけがないじゃないですか……」
そう言われればそうだな。そんな事をして、グリエルたちに得などあるわけがない。むしろ、俺の機嫌を損ねることは分かるから、本当に必要な書類だけになっているはずだ。
冷静になって考えると、今回の件は良く分からないことだらけだな。ゴーストタウンのイベントで使われるお金なのだが、届ける場所は分かっているが、担当部署も担当者も全くの不明である……
なんだこれ?
本当にこの一言に尽きる書類だ。
すぐに調べるにも、分からないことが多すぎるので……グリエルとガリア、残っている暗部とシャドーを使っていいから、この書類について調べてくれ。俺が許可したという体にして、現場を押さえる形で対応してくれ。
念のため、動員した人員で危険がある場合は、報告だけすぐに入れてくれ。上層部の人間であれば、ゴーストタウン内は過去にさかのぼって映像を出せるのを知っているはずだから、それを知らない人材が関わっているということになるはずだしな。
俺たちの知らない何かが関わっている可能性があるかもしれないから、注意して対応してくれ。スプリガンのみんなにも、ゴーストタウンの監視に力を入れるようにお願いしておいて。
ささっと対応を決め、ここですることは無くなったので、向こうへ戻ることにしよう……っとその前に、シャワーを浴びてさっぱりとする。
シャワーをしている最中に思い出したことで、食事券を大量に発行して、グリエルたちに配るように押し付けてから戻っていく。
昼食にはまだ早い時間だが、橋を1本通すには全然時間が足りないな。いや、作るだけなら問題ない時間なのだが、説明もしないといけないし、リンドとの打ち合わせも一応しておかないといけないからな。
拠点となる場所……そういえば島って呼んだっけ? そこの整備は進んでいるようだ。ブラウニーたちも協力して、殺風景だった島には緑が沢山増えていた。
もともと荒れ地のような場所を通行しやすいように、多少整地していただけの場所だったので、緑はほどんどなかったのだ。道になっている場所だけでなく、その両側もほとんど草が生えていないような場所だ。4~5キロメートル先に森はあるが……それはここの緑ではないな。
ただ門があって、兵士たちが門の近くに駐在するだけなら、ここまでする必要はなかったのだが、近くに難民の街を作る必要があるので、それなりの数をここに置いておく必要が出てきたので、環境もしっかりと整えられている。子どもたちのため……という部分も捨てきれないけどね。
ここの門に駐在とは言っているが、魔導列車でここに出勤してきているので、正確には駐在ではないが、世間体のためにそう言っているだけだ。
リンドに時間を作ってもらい、午後から始める橋作りについて簡単な打ち合わせをした。
大まかな部分は俺が説明して、細かい部分はリンドがする形で落ち着いた。まぁ、俺のメモを見て、重要な部分の説明は問題なさそうなので、リンドはイレギュラーな対応について教えるそうだ。
本を読んで、橋ってこんなに作るのが大変だったのか! と驚く部分が多くあったな。橋を支える橋脚って、俺が思っていた以上に深かったりごっつかったりするんだよね。地盤にも左右されるが、見えている部分の倍くらいの質量が埋まってたりするのだ。あれには驚いたね……
この世界の造りでは違ってくるが、原理は同じような物なので、クリエイトゴーレムを使った土木組にあった作り方を教えてもいいかもしれないと思っている。
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