2071話 いつもの光景と呼び出し
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寝起き20分くらいなのに、よくご飯を食べる子だな。シンラもプラムもシオンも、モリモリと食べているな。プラムとシオンは、いつものようにシンラのご飯も狙っているあたり、本当に仲がいいんだな。出されている物は同じなのに、何でシンラのを狙うんだろうね。
狙われるのが普通になっているせいか、シンラの対応も慣れたものだな。隣から迫ってくるフォークを華麗に捌きながら、自分の食事を続けている姿は、どこか貫禄すら漂っている。
このヘンテコな状況を見ても、いつも通りだな……と思ってしまう俺たち家族は、どこかズレ始めているのではないだろうか? そう思ったのは、一緒に食事をしている土木組から、シンラたちの事を質問されたからだ。
子どもたちが好物を取り合う姿は分からなくもないが、それを平然とした顔で捌いているシンラに、土木組は戦慄していた。自分たちでも、プラムやシオン相手なら出来る動きではあるが、10以上も年下のシンラが当たり前のようにしていることに驚いていた。
家の食事風景の1つになりつつある、3人の攻防は見慣れたものなので、特に気にする物でもなかったんだよね。それに度が過ぎれば、シルキーたちに注意されることは分かっているので、そのギリギリのラインでプラムとシオンの2人はシンラを攻略しようとしているだけなのだ。
だけ、というのもおかしいか? この攻防が始まった時は、シンラが負ける様子が度々あったが、いつの間にか身に着けた技術で捌き始めていたから、気にしなくなったんだっけ?
そんなことも思い出せない位に当たり前の光景になっているのだ。
でも未だに、プラムとシオンがシンラの食事を狙う明確な理由は分からないんだよね。2人に聞いても良く分からない答えが返ってくるし、シンラに至っては悟りを開いているような状態だしな。
普段なら、食事が終われば休憩の時間になり眠るのだが、今日は昼食前に寝ていたので、今は眠くないようだ。食事の後に暴れるとシルキーたちの小言が怖いので大人しいのだが、することが無くスライムたちに囲まれた範囲をウロウロしている。
この範囲から出れば怒られることが分かっているので、中で大人しくしているだけなのが少し頭の痛い話だ……行動の結果で怒られるという条件付けがあり、その範囲内で動くというのは教育的に良くない気はするが、今回はディストピアじゃないからな、我慢は必要だぞ!
その行動範囲も、馬車と天幕に囲まれた範囲なので、動き回るだけならシンラたちにはかなり広い空間となる。スライムに乗ることもこの時間は禁止されているので、自分たちの足でとなると……歩き回るのも大変な広さだな。
シンラは早々に疲れたのかスライムを呼びよせて、貫禄のあるスコ座り……おっさん座りの体勢になり黄昏始めた。
ん~、仕事に疲れた中年男性の様な目をしているけど……シンラって転生者じゃないよな? いくらステータスを確認しても、それらしい痕跡は無いので違うのだが、こういう表情を見るとどうしてもそう考えてしまう。
プラムとシオンも疲れたのかスライムを呼びよせて、た〇パンダの如くスライムの上でヘニョリとだらけている。
俺たちは食事休みも終わり、午後の作業へ移ることになったのだが、やはり俺の居場所はなくすることが無い状況だ……こんな様子を子どもたちにみられたら、また針の筵みたいな視線を浴びることになる……
そんな事を考えていると、救いの手が!
魔導無線でグリエルから、今日は庁舎に顔を出さないのか連絡が入った。
そう言えば、領主の仕事をするために、ゲートで毎日帰るって話だったのを忘れていた。妻たちにも声をかけて移動をしようと思ったのだが、妻たちはいつの間にか自分たちの仕事を終わらせており、俺がだけ仕事をしていないような状況だったのだ。
これはいかんと思い、ゲートを準備しておいた馬車へ乗り込み庁舎へ移動する。
執務室に入ると、先にグリエルとガリアが待機しており、計画が変わった部分の説明をする。現場の人間が使いやすくなるのであれば、特に問題はないということになった。事後報告でいいので、どのように変わったかの報告だけお願いされた。
昨日分の説明が終わったところで、ゼニスが執務室へやってきた。
物資の運搬計画について、概要だけ説明に来た形だな。さすがに細かい値段まではまだ算出されていないが、周辺地域の相場から買い集めによる値上がりを想定した金額は準備されていた。
5000人規模の兵士と、保護をする難民たちへの物資として、およそ3万人分ほどを想定して購入計画を立てているそうだ。他にも、それとは別でキャラバンが、余剰物資のある地域からの輸送も計画しているようだ。
難民の数がどのくらいになるのか想定できていないので、5万人ほどを目安に物資を集めるとグリエルたちと相談して決めたそうだ。想定より少なくなるのであれば、収納の箱に入れておけば劣化は起きないので大丈夫だろうとのことだ。
問題となるのは、想定している数より難民の数が多かった場合だろう。短期的に見れば、ディストピアから物資を運び入れればいいのだが、食材の価値で考えると割高になってしまうので、難民に提供する物としては良くないと判断しているようだ。
少し矛盾しているが、ディストピアの食材を売って、そのお金で余っている食材を買い集める形を検討しているのだとか。高級な肉とかの販売で、安価な食材を購入するというのなら分かるが、野菜を売って穀物や野菜を買うって……どうなんだ?
それだけディストピアの野菜に価値があるのは喜ばしい事なのだが、他の街でも頑張れば同じような品質で野菜は収穫できるだろうに……そんなことを考えていたのがバレたのか、ゼニスに怒られてしまった。
同じ野菜と言っても、こちらからはその地域での旬ではない野菜を中心に運び販売し、旬の過剰気味の野菜を購入しているのだとか。旬の野菜を持って行っても売れはするが、その地域の農家に恨みを買うような真似はしません! と、真顔で凄まれた。
それもそうか。ディストピアでは季節関係なく収穫が可能なので、普通ならあるはずの農閑期が存在せずに、一年中農作業をしているんだったな。
特に嗜好品の果物が人気なんだっけ? 他にも加工品も人気があるって言ってたな。
そこから今後の予定を簡単に話し合い、今日は解散となる。
俺はそのまま領主の仕事をするために、執務室に積み上げられた報告書を処理していく。紙媒体で置かれている物は、サインや判子が必要な物で、読むだけでいいタイプの物はタブレットPCにデータが送られてきている。
最近やっとデータだけでもいい書類は出力されずに済むようになって、助かっている。
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