2070話 新しい仮説
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目を覚ましたシンラ・プラム・シオンの3人は、眠気眼を擦って目をパチパチさせている。目が覚めてきたのか、近くで先に起きていた姉たちに抱き着き、寝起きの挨拶みたいなことをしている。
近くの椅子でくつろいでいた俺を発見して、ジーッと見てきた。その後に、妻と土木組が働いている場所を見て、更にもう1度こちらを見る。もう1度妻と土木組の方を見て、俺の方を見ずにいなかったかのようにふるまうことにしたようだ。
っと、さすがにそれは俺も泣きそうになるんだけど……止めてくれないかな? 俺はお前たちを看ていてほしいと言われて、近くで様子を看ていたんだぞ!
おい! 3人してため息つくとか、ここ最近やることの芸が細かくなってきている気がするんだが、気の所為じゃないよな? 俺だって本当は手伝いたいのに、妻たちが邪魔って言うから……そんな俺の神教だって分かってほしいんだけどな!
そんなことを考えていたら、ニコに頭の上に乗られ、膝の上にダマが来て、右足にシエルの前足が、左足にレオンが絡みつき、グレンが右肩で優しく鳴いている。励まそうとしてくれるのは嬉しいけど、みじめになるから止めてくれないかね……
ここの所、俺の心をえぐるような行動をとる奴が増えてきたよな。シンラたちに毒されているんじゃないかと疑うのだが……さすがにシンラはそこまであくどくはないからな。
しょうがない。ここで少しは威厳を取り戻すために、昼食で何か作るかな。
準備をしているシルキーたちの所へ行くと、邪魔だからと言われて追い出された。デジャヴ……
もうね、やることなすこと悪い方向に転がっていって、困る。ミーシャたちは、分かってくれているので問題はないのだが、シンラたちの視線が物理的な力を持っているかの如く、俺に突き刺さってくるから居心地が悪い……
そう言えば、この子たちの前でまともに仕事している姿って、見せたこと無かった気がするな。そのせいで俺が舐められていたりしないか?
そんなことを考えていると、いつの間にか近くに来ていたカエデに頭をハリセンで叩かれた。シンラたちは大うけしているけど、これもシンラたちに舐められる一因になっているんじゃないだろうか? しょっちゅう頭をハリセンで叩かれてるもんな……妻たちの方が上に見えるか?
「また変なこと考えて……どっちが上か下かなんてどっちでもいいじゃない。シンちゃんたちが何を思おうが、私たちはシュウの事が好きだし、一生ついていくと決めてるんだから、巣立っていく子どもたちには、それなりにすごいといずれ分かってもらえればいいじゃない」
いずれ巣立っていく……シンラは、男だからどこか行っても構わないが、ミーシャたちは……他所にはやらん! 一生俺が面倒を看るから近くにいなさい。プラムたちは……いたいと言うならずっといてもいいぞ! でも冷たい目で見るのだけは止めてくれ。
そこまで考えると、強制的に思考を止められた。
いつもは頭の上からハリセンが降ってくるのだが、今回は顔面に向かってハリセンがとんできて、叩かれた勢いで椅子がひっくり返り、後頭部を地面に打ち付けて思考が停止した。
「カエデさんやい、さすがにこれはやりすぎだと思うのだけど、そこらへんどうなのかな?」
「シュウが変な事考えているからでしょ! スミレたちは、シュウの仕事を引き継ぐつもりは無いみたいだから、シンちゃんには残ってもらわないと困るんですけど。それに、一生養うとか考えていると、キモいとか言われるわよ。あなたの国の漫画か小説に、そんなくだりがあったわよ」
それを聞いて、俺は体を硬直させた。キモいとかミーシャたちに言われたら、立ち直れなくなるぞ……プラムたちならギリギリ立て直せるかもしれないが、立ち直るのにどれだけ時間がかかるか……
プラムとシオンには冷たくされているが、やっぱり娘ということもあり可愛いのだ。だけど、近寄ると噛みつかれるので、遠くから眺めているのがベターなのだろう。適度な距離……猫みたいに構いすぎないのが吉だと思う!
「シュウ君、それくらいで嫌いになることは無いけど、さすがにその考え方はキモいと思うわよ……」
ちょっと控えめな声で、辛辣なことを言ってくるミリー……妻たちにもキモいとか言われたら、おれどうすればいいんだ? もうすべてを誰かに託して、ダンジョンに引きこもった方がいいんじゃないか……
「ちょっとちょっと、言い過ぎたから謝るって。ごめんなさい。でも、あまり子どもたちに干渉しすぎると、嫌われるかもしれないわよ。親が子どもをかまうのは良く見る光景だけど、日本人の男親の娘の可愛がり方が、嫌われる要因になってるんじゃないかって、最近思うようになってきたわ」
カエデに、分析された結果を突き付けられ、唖然とするしかなかった。
地域によって考え方の差で、男親と娘の関係に問題が出ると思っていたのだが、ここにきて新たな考え方が……男親の接し方で、娘が嫌いな要素が多くみられる、日本人の男親に問題があるというものが……
地域差(国)による考え方の差もあるだろうし、生活環境の問題も大きな要因の1つだと思うが、男親に問題があるなんて考えたことも無かった……盲点だ。可能性の問題だが、ありえない話ではない気がする……
「そういえばさ、父親嫌いの娘ってパーセント的にはそこまで多くないらしいわよ。日本の情報雑誌にそんなことが書いてあったわね。ピックアップされるから多く感じるだけで、2~3割くらいだって話よ」
いつの間にそんなものを読んでいたのかと思ったが、嫌われている父親って俺が思っているより少ないのか! ということは……
「でも、接し方は考えないと、嫌われる要素になると思うから、考えた方がいいと思うわよ。前は父親嫌いになる子どもなんてほとんどいないと思ってたけど、シュウを見ていて少しずつ考えが変わってきたかな。私たちはそんなシュウも、愛おしく見えるけど子どもたちはどうかな?」
カエデとミリーが、俺を持ち上げたり落としたりするのだが……これは精神的な攻撃なのだろうか? 子どもたちよりも、私たちをもっと見てという暗示か? スキンシップも欠かさないし、夜は搾り取られているけど関係性は悪くないと思うんだが……
また叩かれた。
「子どもたちの前で、何考えているのよ。そんなにしたいなら、シュウをベッドに縛り付けてみんなを集めて代わる代わる相手をしてもらってもいいのよ?」
すいませんでした。することは嫌じゃないけど、それだけというのは勘弁して下せえ。
昼食になるみたいだから、子どもたちを連れていこうか。
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