2062話 行動開始
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あ……兵士たちの食事について考えていたけど、難民たちが集まるなら炊き出しとかも考えないといけないのか。食料に関しては、ゼニスが過不足なく集めてくれるので問題ないが、数万人単位の炊き出しってそれだけで兵士の数がとられるな。
列が長くなれば暴れる奴も出てくるだろうし、絶対に悪さをする奴も出てくる。そうなるとさらに人手がとられてしまう……これって拙いんじゃないか? レイリーは、何か対策を考えているのだろうか?
食事が終わりくつろいでいると、何故か俺の足に衝撃を感じる。その正体は、シンラであり追従するプラムとシオンでもある。
この子たちが何をしているのかと言えば、食後の運動ということになるのだろうか? 疑問形なのは、俺の足を的にしており、素手で叩くと痛いから手を守るグローブをつけたり、子ども用の短い木刀で俺の脛を攻撃しているのだ。
これを運動というなら運動なのだろうが、疑問形になっても仕方がないと思うのは俺がけじゃない。
地球だったらいくらこの子らの歳でも、武器を持って攻撃すれば大人だって痛いのだが……あいにく、俺の体はチビ神に作り変えてもらったから、破格の性能なのだよ。お前たちの攻撃では、痛くもないわ!
なんて悪者ぶってたら、魔王退治! みたいなことをシンラに言われて、俺が本当の悪者にされていた。
それを聞いた妻たちは、みんな爆笑している。
チビ神から言わせれば、魔王とはイレギュラーな存在で、負の感情が爆発するとなるような厄介な奴だが、この世界の認識で言えば、ダンジョンマスターの俺も似たような物で、魔物を統べる王だから魔王みたいな感じなんだよね。
そのことが分かっていて、妻たちは爆笑しているのだ。
こらシオン! 脛はまだいいけど、木刀を突き立てて足の小指を攻撃しようとするな! さすがにそれは痛いんだよ、気分的に!
プラム、疲れたからって助っ人を呼ぶんじゃありません。しかもメグちゃんは反則だぞ。ガチで戦ったらマジで勝てない相手は、連れてきちゃいけません。
シンラよ、分かっていると思うが、空振りしたふりして爪先を執拗に攻撃するなよ。そんな事をするなら、俺にだって考えがあるんだからな!
言っても止めなかったシンラに対して秘密兵器を投入する。言ってしまえば安全靴だ。爪先や足の甲、踵からアキレス腱を守るように、アダマンタイト製の板を入れている変態仕様だ。
これなら、この靴の上からであれば、リンドのハンマー攻撃を受けても耐えきる耐久力があるぞ!
ったく、シンラは、こっちが嫌がることばかりを的確に考えやがるから、面倒でたまらねえ。
おっと、ミーシャたちが迎えに来たから……そろそろ昼寝の時間か? 俺も仕事を始めないといけないな。
魔法が得意ではない妻たちは、シンラたちの面倒を看る方へ行き、魔法が得意な妻たちは土木組と合流して、水堀を作ることになった。メグちゃんが子どもたちの方へ行ったので、シリウス君は強制的にこちらへ連行している。
リバイアサンのどちらかがいないと、水の結界について話が聞けないからな。
子どもたちから離れたくないと、イヤイヤしていたが……メグちゃんに首根っこを噛まれて、ポイッとこちらに放り投げられている。それを捕まえて強制連行した形だ。
俺たちが生活するスペースは、範囲が決まっているのですぐに作業へ取り掛かれる。土木組の子たちが、水堀の内側の計画をしっかりと建てているので、俺たちは邪魔にならないように水堀の方へまわることになった。
それでも土木組にしてもらわないといけないことがあるので、先に内側に線を引いてもらった。
「おぉ、こうやって見ると、かなり広く感じるな」
「広く感じますが、100人ほどが常駐し訓練する場所と考えれば、決して広くは無いでしょうね。ここに常駐する兵士たちは、街へ帰れませんからね。娯楽施設がないのは辛いかもしれないですね」
片道30分もかからない魔導列車が通っているのに、何で街へ帰れないかと思ったら、ここに常駐する兵士たちは文字通り『常駐』、常に駐在すると言うことなので、休息時間はあっても遠く離れられないのだそうだ。
ブラックすぎねえか! とか思ったが、ここへ駐在する兵士たちはそれを了承し、街で働いている兵士たちの倍以上の給料が支払われるそうだ。休息時間も待機時間としてカウントされるため、給料がかなり高めに設定されているらしい。
娯楽施設が無くて辛いのでは? と言っていたライムだが、同行している兵士たちから話が上がり、ここに来る兵士は、お金に困っているというか、お金を多く準備したい人が多いのだとか。
借金とかそう言う話ではなく、結婚するためにまとまったお金が欲しいとか、見受けをするためのお金が欲しいとか、まぁ未来の生活に直結する切実な理由があるのだそうだ。だから常駐している兵士たちは、働き盛りくらいの若者が多いのね。
若者兵士たちの登竜門的な場所かと思ったけど、まったくそんなことは無く、夢をかなえるために時間を売っているようなイメージだった。
本当であれば、好きな人の側を離れたくないという人もいるだろう。だけど、ここも俺の管理下なのだ。多少融通が利くというものだ。
兵士たちは離れられないが、兵士の相手たちがここまで来れないわけじゃない。何かあれば出動してしまうが、魔導列車のホームに設けられた一角で、待機休息の時間に会うことが可能なのだ。そのおかげで、ここにいる兵士たちの士気は高い。
っと、そんな話は置いておいて……まずはこの線の外側を掘っていきますかね。深さは……5メートルくらいでいいかな? 内側はしっかりと側面を固めてくれ、そうしないと水が浸透して土台が脆くなる可能性があるからな。難しいようなら、俺がやるから言ってくれ。
シリウス君やい、ここの地面は固めた方がいいか? 大きな水源がない所に、大量の水を浸透させると拙くないか?
質問してみると、シリウス君に感じられる地下水の流れ的に問題はなさそうだが、何が起こるか分からないので、あまり浸透させない方がいいかもしれない……ということになった。
結局、前面を固めることになったので、固めるイメージを妻たちに教えることにした。日本の文化に侵食されたというべきか、いくつかの例を持ち出せば、何となくイメージできるようになり、数回の練習でほぼ完ぺきに……
深さ5メートル、幅20メートルほどの堀を夕食までに何とか完成させる。明日は、ここにダンジョンを作り、水の湧くダンジョンと吸収するダンジョンを作り、水の流れをしっかりと作るように設計しなおさないとな。
どこかでよどんでしまって、煮沸しても飲料水として使えなくなると困るからな。あ~、汚水対策にスライム層を作る必要があったんだった。水場の近くとは言ったけど、どうすっかな……
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