2048話 多角的な意見
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昨日はあの後、シンラたち3人の頂戴光線を華麗に無視しながら、娘たちの作ってくれたホットケーキを食べた。自分の分を食べ終わっていないのに、人の物を欲しがるとかどうなのよ。プラムとシオンは、俺に強請る前にシンラから強奪しようとしてたけどな。
シンラは俺に強請りながらも、自分のをしっかりと食べていたあたり、姉妹たちに奪われないようにしていたように見えなくもなかったかな。
いつもの時間に庁舎につくと、既にグリエルとガリアは仕事を始めていた。いなかった間の情報を見ているみたいだ。1枚が数秒でめくられていくスピードを見て、少し戦慄している。
後で聞いてみたら、数秒でめくっていたのは、大体同じ内容の書類で確認が済んでるものだから、時間をかけるのがもったいないとのことだ。読んでもらいたい書類には、付箋なりマークなりが付いているので、それだけはしっかり読んだんだとさ。
いつもは自分たちで読んでいる書類も、他の人が確認しているなら、自分で読む必要もないということか。既にダブル・トリプルチェック済みの書類に、時間をかけるのはナンセンスということだな。
俺の今日分の仕事が終わるころに、グリエルたちが執務室へやってきた。今日分の仕事を終わらせたのかと思ったら、部下たちに任せてきたとのことだ。最近では、部下たちが育ってきたので、任せられる仕事が増え余裕ができているみたいだな。
緊急の仕事が無ければ自分で行うが、今日は戦争の事について話さないといけないので、任せてきたんだと。早めに対応しておきたい事柄ではあるからな。助かるというものだ。
うし、ゼニスも来たから、始めますか。
昨日決まった内容を、グリエルたちへ説明していく。対応としてすでに動き出している物の説明と、これから対策する事柄を分けて説明した。
「やはり問題は、難民対策でしょうな。どういった内容で戦争になるのか分かっておりませんが、難民に紛れて工作員が入り込むのは、確かに面倒になりますからね。街に入れろと騒ぎ出したら、手に負えなくなることもありますからな」
「ですが、街の中へ入れろというのは、身の安全が保障されていない場所だからで、管理下にある街は壁に囲まれていて、盗賊も魔物もしっかりと殲滅させているので、そのいい訳は通じない場所ですが騒ぎになりますかね?」
グリエルとガリアのやり取りだ。
「快適とは言えないですが、衣食住を準備しているので、それ以上の文句を言われても困りますが、扇動されれば街に住んでいた人間たちは、不満を爆発させて騒ぎになる可能性はありますね」
「最悪の想定をしておくべきですかね。シュウ様、この際に門に付属する形で街を作ってしまいませんか? 街に入れることは、治安の関係上良くありません。人数にもよりますが住む場所の問題もあります。それならいっそのこと壁だけ作って、街を自分たちで作らせるというのはどうでしょう?」
なるほど、難民としてそこにただ留まるだけよりは、労働力として働かせて、自分たちで街を作らせてしまう場いいってことか。だけど……
「それだと、その街がシュウ様の管理下ではなく、自分たちで街を作ったのだから、自分たちの中から代表者を選ぶ……みたいな話になりそうですな。国とはいきませんが、独立自治区として認めろという話になり、門の通行税を勝手に取りそうです」
自分たちで作った、その部分を主張して独立されるのは面倒だ。それなら、壁の外に勝手に作ってくれ。門を塞ぐ形になるなら、排除するしかなくなるけどな。
「壁の中に入れるには、条件を付けてから入れる方がよさそうですね。新しく街を作る準備はこちらでするから、傘下に入ることが条件だ……みたいな形ですかね」
「それを嫌がって、壁の外で門の前に集まられても困りますが、どうしますか?」
「レイリーさんに頼んで、門の外にも兵士を待機させてもらいましょうか。門の近くまで難民で埋め尽くされると対応に困りますが、軍が間に入るだけでも大分違ってくると思います。しっかりと柵を作り、許可なく中に入れば犯罪者として捕らえる、とでもしておけばいいでしょう」
軍を防波堤として使い、こちらの条件を飲んでくれる難民だけを門の中へ招き入れる形だな。
軍や兵士の人たちには面倒をかけるが、全員をいきなり中に入れるのはかなり無謀だな。
その線で計画を立て直そう。土木組はすぐ動けるかな? 誰か連絡を取ってくれ。
「思ったんだけど、門を囲うように街を作る必要ってないよな。例えば、門から少し離れた場所に街を作って、門の管理に関わらせないようにすることも出来るよな?」
「……そうですね。一般的に門は街の出入り口という認識でしたが、そもそもあの門は国の出入りの際に使うものですから、街を作る必要はありませんね。毎日通うことも出来るように、地下を魔導列車が走ってますし、近くに作った街に移り住んでも良くなりますね」
「管理下に入ってもらえるのであれば、街を作っても問題ないですが、リスクを減らすためにあえて、離れた位置に街を作るということですね」
グリエルは、感心したように俺に言ってくるが、俺の考えは違うんだよ。
「そうじゃなくて、あの門を通過する商隊って、基本的にはラディッツを目指してきているわけだろ? それなのに街を作ってしまえば、街にはいるんだから街中を走って、すぐに街を出ないといけなくなるだろ? 馬車の事故が増えるかもしれないから、街中を走らせたくないって考えなんだが……」
「言われてみると、商隊にとっては面倒なだけで、街の人間からすると危ないだけですね。時間的にラディッツへつけないのであれば、泊まるかもしれませんが、それなら門の近くに街を作っても同じですね」
交通の便について話していると、今まで黙っていたゼニスが発言をした。
「安全面を考えるとその計画は間違っていないと思いますが、新しく街を作ることを考えると、その方法はよろしくないかと思います。門の近くに街があったとしても、寄る者が少なければ発展しません。もし街を作るのでしたら、門に付属する形がいいと思います」
なるほど、街の発展を考えた場合、確実に人が寄るようにしておいた方が、得策ということか。
「安全を考えるのでしたら、門から門までを大通りでつないで、街の人間は危険が無いように、地下通路を通れるようにするのはどうでしょう。大通りにはある程度の長さの塀を建て、歩行者が入り込みづらくしておき、その街で商売したい商人たちは、塀の隙間から街にはいれるようにしておくのがいいかと思います」
確かに悪くないかな? 街が離反したときのことが怖いけど、どう考えてる?
「離反に関しては、正直考えすぎかと思います。独立自治区として認めさせたとしても、門をこちらで押さえておけば、独立しても何もできないでしょう。通行税をとろうとするなら、門から地下に入る場所を作り、街にはいらないように抜ける道を作ってしまえばいいのですから」
街の中心に大通りを作るのは、ある意味難民たちの作る街に配慮しての事か。こちらが準備した場所に作っておいて、独立を望むならその恩恵は無くなるってことだな。
「街を維持するためには、お金が必要ですからね。街をただ作っただけでは、名産も特産もなければ、通行税を高くする必要があります。高くし過ぎれば、商人は来なくなり廃れていくだけ。商人目線で言えば、そんな街に興味はありませんからね」
よし、もし問題になるようだったら、その時考えよう。
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