2045話 最後の最後に……
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グリエルたちがいない最終日が始まる。俺は今日も大量の報告書を山積みにして、端から処理していく。
1時間ほど書類と格闘した後、秘書がある資料を追加で持ってきた。
「……へ~、初めてみるけど、俺の街ではこういう風に作ってるのか。で、これが昨日分の抽出された報告書ってことね。っと君、ちょっと待って。この部分なんだけど、抽出する人が報告書を書いた人とは別なのに、なんで主観的に書かれているんだ?」
読み始めて、第三者によるヒヤリハットの抽出で書かれた物だったのだが、何故か主観的に書かれている部分があり、疑問に思ったので秘書を呼び止めて話を聞いてみた。俺が昨日読んだ報告書には、こんな詳しく書かれた物は無かったはずだ。
どうやら、抽出されたヒヤリハットに対して、主観的な意見を聞き取りして作成しているのだとか。主観的なもの、客観的なもの、それに対する対策がかかれている。
俺は会社勤めをしたことが無いので、これが本来の形なのか分からないが、俺的には分かりやすいと感じた。ただ、同じような内容がかかれていることもあり、全部を読む気にはなれないが、どんな部分にヒヤリハットしたかが良く分かるようになっていた。
これって、現場の人も読めるようになっているんだよね? 読んだ人からの意見も聞いたりしてる? 聞いてるんだったら問題は無いね。作っただけで満足している会社もありそうだから、きちんと活用して価値のあるものなんだから、しっかりと共有していこう。
午前中に仕事が終わることなく、午後になっても仕事をしている。地球にいた頃の俺に聞かせれば、何をバカな事を言っているのだと思われただろうが、今までの俺の仕事は午前中のしかも、半分ほどで終わることもあった。
時間がかかったとしても、昼食が多少遅くなるくらいで、それ以上働いている時は、たいていが緊急事態の時だろう。ディストピアを作っている時だって、必死に働いたという気はしていない。
あの時は大変ではあったが、キャスリングで家を移動させておいたし、街の原型になる部分はダンジョンマスターの能力で作り変えていた。毎日が遊び感覚というのは変だが、大変だったが楽しんで作っていたキッがする。
昼食は子どもたちが来るのが当たり前になっているな。別々に食べてもいいのだが、ミーシャたちが一緒に食べたいというため、シンラたちは渋々ついてきている感じだが……娘たちが一緒にいたいと思ってくれているだけ、嬉しい事だな。
昼食を食べれば、3日連続で執務室の探検を始めるかと思いきや、執務室から出て秘書たちが仕事をしている部屋や、階段を下りてその周辺を探検している。
ミーシャたち以外にも母親が付き添っているので、仕事の邪魔になりそうだったら引き返してくるようにお願いしている。あの子たちは興味を持ったら一直線なので、邪魔になるとか考えないで突進するから注意しておかないとね。
ゆっくりと休憩をとり、午後の仕事を始める。シンラたちは一度戻ってきてから、家に帰ると言って今日のお世話担当の妻たちと一緒に帰っていった。
普段読むことの無いタイプの報告書……日報みたいなものは、その街で何が起きているのか分かる内容が多いな。ディストピアでは見られない、衛兵などが対処した事案なども含まれており、治安は大丈夫なのかと思ってしまう。
冒険者ギルドで働いていて、息抜きにやってきたミリーに聞いてみた。
「シュウ君、ディストピアの治安が異常にいいだけで、普通の街では当たり前にあるようなことなんだよ。その量でも、シュウ君の街以外に比べれば4分の1程度しかないのよ。それなのに治安が悪いのかって、心配するのは間違っていると思うわ。
シュウ君の住んでいた国は平和だって聞いているけど、大きな街では衛兵の代わりになるような人たちが、いつも慌ただしく働いていたんじゃないの? 毎日忙しいわけではないだろうけど、そういうことよ」
言われてみれば、日本は安全だと言われているが、危ないところもあるし、報告書にあるように酒を飲んで暴れる奴もいたな。実力主義の冒険者みたいなのもいるから、少しのトラブルが大事件になりやすい傾向にある。
この報告書の加害者なんか、ある程度の地位にあった人間だったようで、周りから認めらていたと思っていたのだろう。自分のいた街ではこれくらい当たり前と思い、酒場で働いているお姉ちゃんたちに、抱いてやると言ったそうだ。
うちの街では、酒場で売りはやっていないので、その発言自体アウトだと街にはいる前に言っているのだが、酒を飲んで忘れたんだろうな。いつもの調子で言って、衛兵を呼ばれて……ボコボコにされたようだな。
どこかの街の視察団の1人として同行した騎士だったらしく、捕まった後にピーチクパーチク言っていたようだが、視察団のトップに見捨てられたようだな。親の威光で好き放題していたらしく、周りから認められていたと思ったのは、勘違いだった……みたいな話なんだよね。
一般の人を相手に暴力沙汰になる前に対処出来て良かった事例だな。衛兵の話では、技量は騎士と呼ぶのに疑問の残るものだったが、パワーレベリングをしたのかレベルだけはそれなりにあったので、一般の人相手だったら簡単に死人が出ていただろうだとさ。
身近に人を簡単に撲殺できるような人間がゴロゴロいる世界で、街の人は良く脅えずに生活できるもんだな。治安のいい俺の街でも心配になる量なのに、この4倍の量はトラブルがあって、傷害事件も多くあるらしいのに、神経が図太いのかね?
書類の量を見る限り、おやつの時間の前に終わりそうだな。
ぺったんぺったん
残り数枚になった所で、秘書がまた新たに書類を1組持ってきた。急を要するものではないが、早めに知らせておきたい内容だったようで、明日に回さずすぐに読んでほしいとのことだ。
帝国の貴族が暴走して、仕方がなく侵攻軍を排除し街を制圧して、手に入れたラディッツという街からの報告で、戦争の兆しがあるようなので、注意が必要だがどうすればいいかというものだった。
支配領域を分かりやすくするために、俺の領地は高い壁でおおわれている。このおかげで盗賊はほとんどおらず街道の治安は良い。
帝国は関係ないようだが、帝国寄りの小国群での戦争なので帝国も軍を派遣して、周辺の街に危険が無いように対処するようだ。
俺の街は壁があるから大丈夫かとも思ったが、逃げた兵士が関所を数に物を言わせて突破したら面倒なことになるな。レイリーに連絡を入れ、鉱石ダンジョンの街から引き上げられるか確認をしないとな。
面倒なことにならないといいけど……
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