2034話 思っている以上に大変?
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「確かに言われてみたらおかしいですが、これが何なんですか?」
「「「「…………」」」」
俺たちは黙ってしまった。
「シュウは何で、私たちを呼んだの?」
「ん……なんか違和感を感じたから呼んだんだけど、深い理由は無かった」
「「「「…………」」」」
ただ違和感を感じただけで、何故みんなを呼んだのだろうか? 変なことがあれば、とりあえず相談してみるって感じで、呼んだような気はするが、特に深い訳があったのではない。
「シュウ様が違和感を感じて、何か心配だったから私たちを呼んでくださったということにしておきましょう。急ぎの仕事があるわけでもないので、30分ほど時間をとって考えてみませんか? もし分からなければ、報告書を出した人に聞いてみるのもいいのではないですか?」
「そうですね、シュウ様の息抜きにこの文章のズレについて、みんなで思い思いに考えても面白いかもしれないですね。まったく無関係だけど、適当に意味を持たせるのも楽しいかもしれないですね」
グリエルとガリアが、遊びでこのズレについて考えてみようと提案してきた。違和感の正体に気付けたので、俺はすっきりしている。遊びとなれば、俺とバザール、綾乃は全力になる。この文章で大喜利が始まりそうな予感。
ん~、何度読んでも、普通の報告書なんだよな。文章のズレが所々にあるだけで、文章に多少変なところがあるが、この程度は大した問題にはならない範囲だな。
謎解きと考えれば、ズレた部分を中心に考えるのが普通だよな……となると、簡単なところから行けば、ズレている言葉をつなぎ合わせるってところか?
ズレている文字だけを抽出して順番に並べてみるが、文章にすらなっていない。そりゃそうか、そもそも謎があるわけじゃないのに、無理やりに謎にして回答しているわけで、むしろ文章になっていた方が怖いな。
この報告書ってどこから来た奴だ?
都市の名前を確認すると、鉱石ダンジョン街となっていた……どこだこれ? 分からなかったので、グリエルに聞いてみると、ミリーの家族が住んでいた街サラディルに、深紅の騎士団を運んだ際の報酬で、戦争の原因となっている鉱石ダンジョンをもらい受けたのだとか。
あそこって、年中戦争をしているところじゃなかったっけ? 勇者が偵察に来ていて、何か面倒があったところだよな。何でそんなところを貰ったのか分からないし、戦争の原因となっているってことは、今もその街は戦争しているのか?
「シュウ様、鉱石ダンジョンの街は、新兵の訓練所として使っています。各地で採用された兵士たちは、各街で訓練を受け許可が出ると、鉱石ダンジョンの街に送り出され、経験値を稼がせレベルを上げるそうです。一定以上になると、隣国から攻めてくる兵士相手に、戦闘訓練をしているそうですよ」
うん、途中までは兵士の訓練課程として意味は分かるのだが、最後の隣国から攻めてくる兵士相手に、戦闘訓練をしている……という部分については、まったくもって意味が分からない。合同演習みたいなことをしているのか?
「違います。まとまった数の兵士が攻めてくるので、殺さないよう刃を潰した武器で毎回撃退しているそうですね。集団戦を経験させるには、ちょうどいいということで、軍部の人たちが練習相手として戦っているそうです」
えっと、生かして返してまた攻めさせているということだろうか? グリエルの話には続きがあって、何度も顔を見合わせているので、戦闘前に挨拶をしている姿も見られるそうです、と笑いながら言っていた。
この戦闘訓練のせいか、隣国の兵士の技量が高くなっているそうだ。そのおかげで王国と聖国の間にある小国群にある程度秩序が生まれているらしい。その隣国が強くなったおかげで、いくつかの国が吸収され同盟の中心になり、トラブルを解決しているんだとさ。
ここで強くなった敵兵が、ダンジョンのある街から西側を安定させているのか。無駄に血が流れるよりはいいか。
で、何でこんな街から報告書が上がってきているんだ? 変なところが気になったので、その街から出ている報告書のデータを呼び出してみる。大体3人から報告書が上がってきているな。同じ名前で出ている報告書は……これか。
巨大なスクリーンに6枚ほど報告書を並べて確認してみるが、他の5枚はキレイに書かれているのに、今回の報告書だけ何故かズレている。やっぱり、何か理由があるのかね?
俺が映し出している報告書が気になったのか、他のメンバーもスクリーンを見ている。
「今までの報告書がキレイなのに、今回だけ文字がズレているのは違和感が半端ないね」
綾乃が見比べて、頷いている。手書きの報告書自体が珍しいのに、今までズレが無かったのに今回だけあるって言うのも、不思議だな。
「ちょっと待つでござる。この人物、1ヶ月前はパソコンで文章を作っているでござるが、3週間前ほどから手書きで書いているでござるよ」
「ほんとですね。手書きがいいという人がいるので、書式さえ間違っていなければ手書きでも問題ない事になっているので、気付きませんでしたね。何でパソコンから手書きに変えたのでしょうか?」
もしかしたら、何か起こっているのでは? という得体のしれない不安感が俺たちを襲う。
「シュウ様、この報告書が何かの暗号だとして、解くのを続けてもいいと思いますが、その前に暗部に連絡して内情を探らせてみてはいかがですか?」
ライラの指摘を受け、俺は暗部に連絡を入れる。
『おや? シュウ様ですね。どうかなさいましたか?』
暗部に連絡をしたのに、そこにはレイリーがいた。どうやら、暗部の人間とこの街の兵士で合同訓練をする予定があり、その調整としてレイリーが暗部に足を運んでいたらしい。俺からの連絡が気になったので、声をかけたそうだ。
「えっと、何かあるかは分からないが、鉱石ダンジョンの街って言って分かるかな? そこからあげられた報告書に違和感があったから、暗部の人に何かないか調べてきてもらおうと思って連絡したんだ」
『兵士の訓練所ですね。ちょうど視察もしてみたいですし、私も行ってみて良いですか? どうせなら、兵士たちの訓練として、市街戦を想定してもいいですかね。私たちが訓練をしている間に、暗部の皆さんで内情を調べてもらってはどうですか?』
「ん~、早い方がいいけど、それってすぐにできる物なのか?」
『そうですね……今から簡単な訓練計画書を作って、向こうに送り抜き打ちでの戦闘訓練と言えば、昼食過ぎには始められますね。ゲートを使わせてもらえればですが』
お昼過ぎって、後2時間ちょっとなんですけど……それで準備が間に合うのか?
どうやら訓練の中には、非常時の対応訓練も含まれているようで、ギリギリまで訓練内容を伏せていて、いきなり始めることもあるそうだ。
それなら、許可を出しておこう。秘書の人たちに、物資の融通と食事の準備のためにブラウニーの派遣を要請してもらう。お酒もある程度確保するように伝え、ゼニスにも連絡を入れ秘書たちに協力するように伝言した。
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