2010話 取り調べが……始まらなかった
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サクッと勇者の確保が終わった。確保が終わったからと言って、今回の作戦が全て終わったわけではない。事の始まりは、あれ以降起きていないが、フレデリクで起こった不自然な連続死だ。あれの原因を突き止めるために、可能性の1つとして考えて勇者を確保したのだ。
「よし、勇者の取り調べでもするか!」
いきこんで勇者の確保されている、暗部専用のマイワールドへ移動する。ゲートで移動してすぐに捕まった。さすがに蜘蛛の巣みたいな形状のロープにつかまるのは、気分的に良くないんだが……そもそも、何で俺は捕まってるんだ?
「シュウ様、取り調べはこちらで行っておきますので、トップの人間は簡単に現場に出てこないでください。どうしても対応できない場合だけ、こちらから! お呼びしますので、その時はよろしくお願いします」
どうやら、ほいほいと現場に出てくるな! って事みたいだな。そこまでホイホイ出ているつもりは無いけど、駄目なのかね? 取り調べに関しては、オンラインで見ることが可能ですので、何か気になるようでしたら、その映像を見て現場に指示してください、だってさ。
現場に出てこないのであれば、問題ないってことだろうか? 俺は知らなかったのだが、暗部の取り調べだけではなく、各街で取り調べを行う部屋には、上層部しか知らないカメラを取り付けているのだとか……俺記憶にないんだけど、ハブられてる?
首をひねりながら指令室に戻る。そこでは、綾乃が何やら準備を始めていた。
「何ボケッとしてるのよ。シュウも準備手伝ってよ」
何の準備?
「準備って、ここに残ってるんだから分かるでしょ? もう少ししたら取り調べが始まるからって、バザールから連絡が入ったから、暗部の取調室と待機室の映像を映し出す設定を手伝ってよ」
「俺、そんなの知らないんだけど……」
「はぁ? 暗部からお願いされていたものを、シュウの許可が出たからってバザールが言ってたわよ。グリエルさんとガリアさんも、あんたからの許可が出たって言ってたわよ」
「全く覚えがない……報告書もないから、知らないぞ」
「……内部の監査をするのに、誰でも見れる場所に書類があるわけないでしょ! ってか、本当に知らないの? もしそれが本当だったら、かなり問題じゃない?」
「知らないことは問題かもしれないけど、グリエルたちが許可を出しているなら大丈夫だろう。実質的に俺の管理している街を動かしているのが、あの2人だからな」
そんなことを話していると、指令室に誰かが入ってきた。
「シュウ君、本当に覚えてないの? 許可を出した現場に、私が居合わせてるんだけど……」
なぬ! 俺は知らないうちに許可を出していたのか?
扉を開けて入ってきたのは、ミリー、カエデ、リンドの3人だった。ここに来たのは、綾乃から連絡を貰って、取り調べの様子を一緒に見るためなのだとか。俺が移動して送り返さる間に、連絡を取っていたようだ。
ミリーの話を聞くと、
『シュウ様、内部の監視として、バザールさんと相談して計画を立てたのですが、実行するにあたって許可が欲しいのです。この資料に詳細が書いてあります。どうでしょうか?』
『バザールから? あっ! あの話ね。バザールに権限を与えておくから、自由にやっていいよ』
と、こんな感じで許可を出していたらしい。バザールからの話……あっ! 確かにバザールから、暗部からのお願いで内部を監視するためのシステム構築の話があったな。それで、グリエルたちとも相談するから、こちらで進めて良い? みたいな感じで聞かれて許可を出したな……
「忘れてた……というか、バザールに一任して、グリエルたちが確認で許可を得て、一気に話を進めたってことか。その後の報告は、合ったか分からないけど、間違いなく許可を出してるな。でもさ、見ることのできる人間ってどの範囲なんだ?」
「ちょっと待ってね。えっと、権限があるのは、暗部の皆さん、スプリガンの皆さん、綾乃さん、バザールさん、グリエルさん、ガリアさん、私たちシュウ君の配偶者ですね。綾乃さんとバザールさん以外は、3人以上が同席しないとみれないようになっています」
俺は? 言うまでも無いので、言っていません。だとさ。すべてを閲覧できる権限が俺にはあったな。そもそも、綾乃とバザールに制限がかかっていないのはなんで? と思ったら、バザールも綾乃も、俺の相談役ということで、情報面に関してはかなりの閲覧権限があるらしい。知らなかったわ。
どうやって設置したのかは知らないが、全ての街の取調室にもカメラが設置されている。いや、プライベートな場所以外は、どこにでもカメラが設置されているらしい……監視社会!?
「取り調べまで、まだ時間があるみたいね。どんなところに設置されているか、分かりやすい所と言えば……ここなんてどうかな? 夜中だけど、人が残っている可能性があると言えば、ここしかないわね!」
そうして映し出されたのは、書類作業をしている老ドワーフの姿だった。
「やっぱりね。最近、仕事より鍛冶している時間が長いって、話があったからいるかなって思ったけど、本当にいたわね……」
「残業はしないように言っているのに、あの爺さんは働いてるんだ?」
「シュウ。あのポンコツは、残業してないわよ。昼間に仕事をしなかったから、この時間に仕事をさせているのよ。監視に当たっているのは、領主館の警備夜勤の兵士ね。あ、夜勤の兵士たちには、人気の仕事みたいよ。無理して働かせているわけじゃないからね」
爺さんの監視が、人気の仕事ってどういうことだ?
リンドの話では、追加報酬もある上に、監視の間はお酒以外なら自由に飲食が可能で、それが経費で落とされるのだとか。上限は決まっていて、持ち帰りも可能なので、家族がいる人はお土産として、お菓子とかを持ち帰っているんだってさ。
その話を聞いて思い出したけど、この監視に関しては、俺が許可を出していて、追加報酬と飲食の代金は俺のポケットマネーから出ているはずだ。兵士さんたち、面倒な仕事増やしてすまない! という意味で、監視については優遇しているんだった。
独り身の人間だと、つまみをたくさん持ち帰って、夜勤明けのメンバーが集まり、昼頃まで酒盛りをして寝るらしい。金額を増やせないけど、有効利用してもらえているようでよかったよ。
「あ、そろそろ取り調べ始まるってさ」
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