2004話 頑張れバザール!
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マッシュ君たちの意見の調査をするために、俺たちは行動を開始する。俺が直接動いても問題ないと言えば問題ないが、面倒事も起きそうなので暗部の鬼人を中核に、バザールを指揮官として派遣することになった。
今回に関しては、極秘裏に捜査するのであれば、バザールのアンデッド部隊が適任だろう。探し物はバザールのサイレントアサシン、実力行使部隊の暗部という形だな。
先行部隊という訳ではないが、カザマ商会の支店がある街なので、色々な工作を行うにはかなり有利である。商会の支店があることから、理不尽な搾取や横暴な内政をしていないということだ。そんな街でマッシュ君たちが考えたようなことが行われているなら、考え直す必要がありそうだな。
主導している人間が誰かということもあるが……素材となるダンジョンがその街にあるとはいえ、隣街に王都がある。国王が主導しているのであれば、自分の足元で行いそうだけどな。それを考えるとその街の領主か、サプリメントを売っている商会のトップ、もしくはスポンサーということになるな。
レベル400を超えているあいつが、どこの所属なのかは分からないので、誰が主導しているのか判断に困るな。傭兵や冒険者だという可能性もゼロではないしな。いくつか罰賞があるが、些細な物や防衛時にたまたまついてしまったような称号しかない。
少なくとも、犯罪者という訳ではなさそうだ。ただ、ステータスが高いため反撃するときに加減を間違えると、大変なことになってしまうということだ。
傷害罪とあるが備考のような形で、正当防衛で攻撃した相手が吹っ飛びそれに無関係な人間が巻き込まれた、といった内容がかかれている。
巻き込まれ事故の怪我も傷害罪になるのか……俺もかなり派手にやってるから、付いててもおかしくない気がするけど、何度確認してもそんな称号は無いな。そいつには、他にも似たような称号がいくつかあった。
ゼニスから商会の支店に連絡を入れてもらい、倉庫の一角にバザールや暗部の人たちが待機などに使える地下室へ移動できる導線を確保する。
バザールは調査させるために、ゲートですぐに送り込む。頼んだぞ骨っ子!
件の街に到着したバザールは、影から100体ほどのサイレントアサシンを取り出し、街へ解き放つ。勇者のいる工場を中心に情報収集が始まる。
「ゼニス、聞いておきたいんだけど、同じ街にお金になるサプリメントがあったけど、商品としては扱っていないのか?」
「調べて知ったのですが、安く買えるので商品としては魅力的ですが、自分たちで商隊を組めれば儲けは全部自分たちの物ですから、大量販売するのは各街の数ヶ所の雑貨屋だけらしく、商品としては扱っていないですね。サプリメントよりも、ディストピア産の食材の方が儲けが大きいので気にしていませんでした」
「ん~そう考えると、マッシュ君たちの意見が正しく感じてくるな。工場での会話次第だけど、勇者がどういう状況なのか判断できるかな」
暗部の人たちも準備ができたようで、いつでも実力行使に出れる状態だと連絡が入る。思ったのだが、暗部の鬼人たちは現地にいる必要ないんだよな……今回はゲートを使えるので、力が必要になるまで待機してもらうことになる。
地下に作った待機場所ではなく、暗部専用のマイワールドで待機してもらうことになる。何かある時は、バザールから連絡がいくようになっている。
今回の勇者は、害があるのかないのか……どっちなんだろうな?
「シュウ、今回の勇者はどうするの? 保護するの?」
綾乃が俺と同じようなことを考えていたようで、質問してきた。
「ん~、自分の意思でやってたのなら問答無用で殺すけど、無理やりやらされていた場合は事情聴取して、場合によってはゴーストタウンに放り込むかな? ケンジたちみたいに、自由に生活すればいいと思う」
「それもそうね。予想通り薬関係の神授のスキルを持っているなら、ゴーストタウンでもディストピアでもいいから、依頼って言う形で手伝ってもらえばいいか」
連れてきた際の有効利用の事を考えているのか、気が早くねえかね?
話し合いが解散となり、残った俺と綾乃はしばらく執務室でこの後の展開について考えていた。妻たちはさっさと仕事へ戻り、現在進行形で送られてきている報告書などを仕分けしてくれている。
明日分の仕事が今日の内に終わってしまう勢いで処理しているな。綾乃に断りを入れて、話半分に報告書を読んでいる。綾乃もポータブルゲーム機で遊びながらなので、どっちもどっちなのだが……
2つくらいのマルチタスクであれば、人間って思ったより簡単にできるから不思議だよね。でも、いざとなるとできなかったりするのだから、なお不思議な生き物だと思う。
意見が出尽くすと綾乃はゲームを止め、俺の読んでいる書類が気になるようで、見たいと言ってきたので昨日処理した書類の閲覧許可を出す。
俺に上がってくる情報を他人に見せていいのか! と言われれば、本来はダメなんだけど、俺が主にしている重要なことは、決裁なので特に問題なかったりするのだ。そのうち住民が閲覧できるようになる書類なので、遅いか早いかの違いだけである。
後はどうでもいい報告だけど、目を通してほしいと言われている物だな。簡単に言えば、各街の施策の達成度だったり、目標の期間に終わるのかの予想などがかかれている物だな。正直、俺が口を出す前にグリエルたちが修正をしているので、俺はただ読むだけの書類だ。
他にも、細々としたものはあるが、見られて困るような書類は、毎日読む書類の中には含まれていないので見せることが可能なのである。興味があるなら、妻たちの方の書類を見てもいいぞ。
面白くなさそうな顔で書類を斜め読みしている綾乃が、手を止めて真剣に何かを読みだした。ニヤニヤしているところを見ると、何か面白い事でも書いてあったのだろう……ん? そんな書類あったっけ?
とか考えていたら、綾乃が、シュウの子どもたちの日記って面白いね。私たちじゃ気付かなかったり、感じなかったりすることが、子どもの視点で書かれているから読んでで新鮮ね。シュウに毎日どんなことがあったか、一生懸命報告している感じが可愛いわ! と、急に叫び出したので、チョップして座らせる。
娘たちが可愛いのは知ってる。言われなくても、天地が逆さまになっても覆ることの無い真実だからな!
そんなことを考えていたら、頭を叩かれた。振り向くと今日一緒に来ていたリリーだった。親バカはその辺にして、そろそろ帰らないかだってさ。時計を見ると……11時30分。あぁ、昼食の事を考えると、帰らないといけないね。
綾乃もいくぞ。どうせこの時間まで残ってたってことは、うちの飯が目当てなんだろうからな。
帰ることが分かると、窓際でくつろいでいたお供の従魔たちが、俺が声をかける前に扉の前に集まっていた。苦笑するしかないな。
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