2003話 希望が少し見えた!
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日課を終わらせた頃に、昨日のメンバーである骨と引きこもりが俺の執務室に到着する。
「やっほー、昨日あれから少し調べてみたよ。基本的に体に必須な物でも、過剰摂取すれば死ぬみたいだね。でも、今回のように死ぬことを考えると、血管に直接打ち込んでも厳しい気がするわ。接種を考えるなら、毒じゃないけど摂取すれば、死に至る好物類とかかもね」
「ヒ素や水銀はもともと毒として認識されているでござるが、鉱物の中には毒とは認識されていないでござるが、過剰摂取すれば死に至る鉱物はいくらでもあるでござる」
「そんな話聞いたことあるな……そうすると、幅が広くなってどうにもならんな。これ以上死者が出ないなら放置するんだけど、相手も分からないし方法も分からない。また起こらないと言えないから、何とかしないといけないんだよな」
結局のところ、時間が経過しすぎてどうにもならない時以外は、偶然なのか原因が存在しているのか、何かが分かるまで止まることは出来ないタイプの問題なのだ。
2日間何も起きていない。それが普通なのだが、その普通が薄っぺらく感じてしまう現状は、あまりよろしくない。
「なんでフレデリクでだけなのかしらね。前の散布型の毒というかウイルスは、原因が分かりやすかったし、対処方法も何とかなったからいいけど、今回は何も分からないもんね。リーファスでも同じようなことが起こっていれば、類似部分を発見しやすかったのにね」
あくまで自分たちが調べた範囲なのだが、自然死や病死をするような人じゃない働き盛りの男性が、複数人死んだ事例は無かったのだ。暗部の鬼人たちが周囲の街にも出向き調べてくれていた結果を見て、ため息をつく。
他の街では、複数人働き盛りの人間が死ぬことはあるが、きちんと原因があるのだ。くだらない内容から、特権階級の人間が気に入らないと、殺してしまうような事例だがな。それ以外だと健康的な男性が、こうやって死ぬこと自体が少ない。
「そういえば、原因かは分からないけど、いくつかの候補が上がってきたんじゃないっけ?」
「全員が同じではないでござるけど、全員じゃないけど同じ薬というかサプリメントみたいなものを、飲んでたみたいでござるよ。全員の共通点ではないでござるが、6人はいずれかを飲んでいたみたいでござるね」
そう言えば、話が上がってきてたな。組み合わせはバラバラだが、カプセル錠を飲んでいたらしいんだよね。これ自体は、毒にも薬にもならないけど、栄養剤の一種として結論付けられたサプリメントみたいな物だ。
実際に検証結果では、不足成分を補っているのか、体の調子が良くなる人がほとんどだった。反対に体調が悪くなる人はおらず、1年前ほどから普及している物だ。
「その中に、実は毒が仕込まれてて、運悪くフレデリクの人間が犠牲になったとか?」
「その前に、毒は誰からも検出されてないんだって。鑑定スキルの結果だから、覆らないと思うぞ」
「ふと思ったでござるが、そのサプリメントは何処で製造されているのでござるか?」
「ちょっと待ってくれ。製造先は……王都の隣街みたいだな。ナントカ侯爵が治める街みたいだぞ。そこにはダンジョンがあって、そこでドロップする今まで見向きもされなかった素材が、安く健康を維持できる内服薬として出回ってるな」
「念のために聞くでござるが、勇者が関係してたりしないでござるか?」
「確か勇者が加工方法を見つけたらしく、瞬く間に広がったんだっけな? サプリメント自体は3年前くらいから製造されているみたいだけど、フレデリクに入ってきたのは1年前くらいだな。一応検査も行ったけど、問題なかったから街の雑貨屋で売られているな」
「シュウ、私嫌な予感がしてきた。その勇者が、付与とか薬学に関係する神授のスキルを持っていたら、私たちには分からない何かで、フレデリクを混乱に陥れる可能性はあるわよね?」
「また勇者か? これだけ調べても分からないってことは、未知の技術……神授のスキルの影響を受けているなら、俺たちに調べるすべは確かにないな。それでもフレデリクだけを限定的に狙ってくるか? 俺はあっちにいないし、送ってくるならゴーストタウンの方がいいんじゃないか?」
「シュウ殿、今残っている勇者だからと言って、こっちに手を出してこない理由にはならないでござる。それに、ゴーストタウンには、そんなが流行ることは無いでござるよ。安価でブラウニー考案の複数のスムージーが飲めるでござるから、サプリメントに頼らずともみんな元気でござる」
少し悩んで、主要メンバーを至急集めることにした。
30分もすれば、全員集まり先ほどの話を伝える。
「……確かに盲点でしたね。フレデリクに届く前から実績があり、不審死がなかったから、勇者が関係していても大丈夫だと思っていました。それが計画の前段階で、死人が出始めたら悪評を流して、移住をさせるみたいなことをしてもおかしくありませんね」
グリエル、可能性としては無くは無いけど、移住なんて難しいんじゃないか?
「……みたいな顔をしていますが、ジェノサイドキャラバンみたいな商隊を作れば、可能だと思いますよ。フレデリクやリーファスには、近隣の街から結構な数の人が移住してきていますので、それを疎ましく思った国や侯爵が、勇者の手を借りてもおかしくは無いですね」
ガリアが、俺の心情をズバリと当てて、さらに追い打ちをかけてきた。
「真偽はこの際どちらでもいいと思います。今までは可能性すらつかめていなかったので、糸口になるのであれば、全部試してみるべきだと思います」
ゼニスの言い分に、思わず頷いてしまう。ここで議論していても、結果は変わらないのなら、調べに行くしかないだろう。
「軍で行くとなるとさすがに無理がありますので、少数精鋭を送り込むか、暗部の皆さんに活躍してもらう形になりますかね? 件の勇者の守りはどうなっているか分かりますか?」
マップ先生のデータをスクリーンに映し出す。
「勇者は……ここにいるな。レベル別に分けて光点を表示しよう」
「ん~、質も数もそこそこでござるな。この街の領主の周りと同じくらいに見えるでござる」
「ちょっと待って、こいつ明らかにおかしくない?」
綾乃が1つの光点を指して、詳細を詳しく出すように言ってきた。
「シュウが戦ったって言う奴隷兵と比べると、強さはどうなのかな?」
光点の情報を出しても、あまりにも不自然だった。レベルが400を超えており、スキルも軒並み高水準。なのに騎士でも冒険者でも傭兵でもないので、不自然極まりない。
「1人ずつで見れば、こいつの方が強いけど、あの時は20~30人いたから、奴隷兵たちの方が厄介だったと思う」
「だよね。国王が関わってるならあんたのことは知っているし、奴隷兵が返り討ちにあった事も知ってるわよね。そう考えると、守りが薄すぎるわね。この程度なら、障害にもならないわよね?」
「鬼人たちが3人もいれば、完勝できると思う」
「少し気になったんですが、良いでしょうか?」
そうすると、マッシュ君がルック君と何かを話しており、疑問に思ったのか質問をしてきた。
「攻められることは想定していなくて、勇者に逃げられることを想定しての人員配置だったりしませんか? 確か、綾乃さんも同じような感じで、帝国に閉じ込められていましたよね?」
それを聞いて、みんながあり得る! と声をあげてしまった。いつも俺たちが責めることを前提に考えていたけど、勇者は作る気がなかったのに作らされている可能性は、確かにある!
俺たちの気付けなかった盲点に、2人が気付いてくれた。ちょっとしたご褒美として、プレゼントを送っておこう。生まれてきた赤ちゃん用に、お世話用の一式を大量にプレゼントしておこう。
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