1972話 あんたか? 何の用だ?
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視界が暗転してからは、浮遊感に包まれており、どういう状況なのかまったく分からない。
暗転してしばらくすると、声が聞こえてくる……
『久し振りじゃのう。元気にしておったかの?』
この声は、創造神のじっちゃんか。ここには俺だけしかいないようだけど、何か問題でも起きたのか? またトラブルに巻き込まれたとか、そんなところか?
『創造神であってるぞい。お主がここにおるのは、問題が起きたわけでも、トラブルに巻き込まれたわけでもないのう。どちらかと言えば、お主にとっては褒美に近いかもしれんの』
褒美ね……この状況で言われても、何もできない状態だから判断に困るのだが、一応その褒美かもしれない内容を聞いてもいいか?
『相変わらず状況を飲み込むのが早いやつよのう』
飲み込むのが早いんじゃなくて、神共が関わると問答無用だからな。色々文句を言ったところで、現状を覆すことは出来ないって学んだんだよ。文句は終わってから、仲間内で悪意を込めて言うから気にしなくてもいいさ。それに、その神たちの頂点のあんたが干渉しているなら、なおさらどうにもならん。
『ほっほっほ、分かっておるのう。迷惑をかけられたのなら、そいつらに対していくら文句を言っても構わん。神全体を貶めることさえしなければな。でだ、褒美というのは、今回お主を嵌めた神共に報復できるとしたらどうする?』
報復できる内容にもよるかな。こちらが無謀な条件で戦わされたり、飲めないような要求をされたりしても困る。報復って言う意味では、直接的なことは出来ないが、チビ神を通じて仕返しのようなことは出来るからな。やっぱり、内容次第だな。
『ふむ……さすがに慎重だのう。神との対話の仕方を心得ておるな。一方的に不利になる状況というのは、あのアホどもの事を考えれば、いくらでもありえる話だからのう。今回も、一方的に不利だったはずなのに、一部が暴走してチビ神の陣営に隙を与えていたからのう』
さらっとアホどもとか言っているし、創造神のじっちゃんから見ても問題があったってことか?
『問題があったかと聞かれれば、何もないのだが……奴らのやっていることは、ゲームを楽しむための一手ではなく、ただの妨害だからのう。せっかくの新しく作ったゲーム盤に私情を持ち込むのは、正直鬱陶しいのじゃ。ほとんど存在値も残っていない奴らを、お主に差し出すことも考えておるのじゃ』
ふむ……特に何もなければ、遠くないうちに消滅するってことか。1つ聞いていいか? 神というのは種族の一種だと俺は思っている。バザールが人間からダンジョンマスターを経てアンデッドになったように、その神の種族を創造神のじっちゃんが変えることは出来るのか?
『はて、変えることは可能だが、アホ共を魔物にでもして討伐でもするのかのう?』
あ~それも悪くないけど、貰えるって言うなら調整してもらって、タフな人間にしてもらって俺の街で扱き使えないかなって思ったんだよ。
『なるほど……ちょっと待っておれ』
そう言って創造神のじっちゃんの声が聞こえなくなった。それから何分……いや何時間? それとも何秒? 時間の感覚があやふやな空間で待つことになる。
『待たせたのう。今確認してきたのだが、今回の件を画策したアホ共が13柱、その内8柱は人間にはできるが、存在値が枯渇しかけているから、頑丈な体に作り替えることは難しいのう』
存在値って言うのは、神から神に移譲できる物なのか? もしできるなら、チビ神から分けてもらって頑丈にすることは可能なのか?
『チビ神の許可があれば、移譲は可能じゃ。その存在値を使えば、頑丈な上に強化も可能じゃぞい』
強くし過ぎて反乱とかされても困るから、体が頑丈なら多少扱き使ってもすぐに死ぬことは無いよな?
『ダンジョンバトルとかに使うわけではないのかのう?』
いや、人間はバトルに使うには、いくつか越えなきゃいけない条件があるだろ? 毎回参加させられるか分からないのに、無駄に強くしても管理に困るだけだっての。
『ふむ、隷属魔法は人種には効かないからのう、面倒じゃな。よし、それならお主の所におる半人半魔の鬼人たちみたいに、作り替えれば問題ないぞい。半分は魔物だから、隷属魔法が有効なのじゃ』
おう、ここにきて新しい情報をゲットしてしまった。鬼人達には隷属魔法が有効らしい。知ったところで使うことは無いけどな。今でも俺のために働いてくれているし、気にすることは何もない。気になるのは、隷属魔法に抜け道みたいなのがないかってことだな。
『というと?』
隷属魔法の下位と言っていいのか分からないが奴隷の首輪は、本気で相手の事を考えていれば発動しない抜け道があるだろ? それと同じような抜け道がないとも限らないだろ?
『奴隷の腕輪……禁則事項として定められているのは、命令対象者を害してはならない、自殺をしてはならない、が基本的事項だのう。それなのに相手の事を考えていると、禁則事項に触れないのかのう?』
奴隷の腕輪は禁止事項を設けて、破ったら罰を与える対処型のアイテムだぞ。だから、禁止事項を真っ向から破って、俺を殺そうと思えば殺せるのが、奴隷の腕輪だぞ。
『そうじゃったのか。じゃが、そこらへんは問題ないじゃろう。隷属魔法の禁則事項は、行動そのものをとれなくする強制力があるのじゃ。伊達に、ユニークスキルを名乗っておらんのじゃよ。例えば、攻撃禁止の命令を出せば、どんなにピンチに陥っても反撃すらできぬ代物じゃよ』
隷属魔法やるじゃん! 使えないかと思ってたけど、思っている以上に使い道がありそうだな。例えば、ディストピアやゴーストタウンの住人や関係者を害してはならないっていう命令をして、街の法律に触れていた場合のみ反撃が可能……みたいなことは可能か?
『隷属魔法を使った人間の思考なりを対象に書き込むようになっておるから、対象が法律を知らなくても問題は無いぞい。もっと細かく設定もできるのじゃよ。簡単に言えばじゃな、お主やディストピアの上層部、暗部、お主の妻たち等の命令を聞くように、と個別に命令権も設定できるぞい』
そりゃヤバいな。対象が人間にできないことを考えれば、このくらいできてもおかしくはないか。元々使うことを想定しているのは魔物だし、あいつらは基本的に人間の言葉なんて理解できないからな。ダンジョンマスターの能力でだした場合は別だけどな。
『よく理解しておるの。それでじゃ、13柱だった奴らは全員隷属させるということでいいのじゃな?』
問題ない。チビ神から存在値を貰ってくれ、チビ神には後でデザートでも送っておくから、問題ないだろうしな。あ、隷属させた相手を殺したら何か問題はあるか? イラっとして、ついつい殺してしまうこともあるかもしれないから、聞いておきたいんだけど……
『そんなものは無い。隷属させられたモノ=使い捨てて構わない駒だと思うとよかろう。お主たちがよくやっている、死なないように拷問して治すというのも、問題なくやってよいぞ。それをやる時は、わしに連絡を入れてほしいがの』
ルールを破った神の末路みたいな感じで、神たちに見せるのか?
『ほっほっほ。何千年も経つと、存在値が高いモノたち以外は変わるからのう。たまには、ルールを破ったモノたちがどうなるか、理解させないといけないのじゃよ。ちょうどその時期だということじゃ』
ルールは楽しく遊ぶためで、ルールを破っても面白くなるのであれば、無罪放免なんだろ? 本当に自分勝手だよな。
『それが、この世界を管理している神というものじゃよ。あきらめい。少し作業するから待っておれ』
そう言って、また声がしなくなった。
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