1968話 後悔しないように行動しよう
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バザールが老人に化けた理由はすぐに分かった。魔法をかける前に、俺たちに離れて隠れているように指示してきたからだ。見た目が若い男がいれば、記憶封印の魔法を施してから起こしても、すぐに鍵が外れてしまう可能性があるからだ。
俺とライガは、離れた位置でバザールが作業をしているのを見守る。全員を倒した時点で、洞窟の封鎖した箇所はすべて解放したので、俺たちが今いる場所は、広いを出て入り口からコッソリと覗き込む形だ。
「そう言えば、記憶封印や記憶消去じゃなくて、記憶を記録に変換する方法じゃダメだったのか?」
離れた位置で作業をしているバザールだが、俺たちにつけているサイレントアサシンを操り答えてくれた。並行していろいろできるバザールって、すごいよな。マルチタスクを苦労せずにできているんだよな。
普通の人間だと、口は1つしかないから声を使う会話は1つしかできない。同時に話を成立させるだけなら、声とチャットの様にタイピングやスマホなどを使って会話をするなら……3~4つくらいなら、同時に会話は可能かもしれない。
自分以外の口を使って会話をできるバザールだから会話方法だろう。だとしても、2つの会話を同時に行えるのは凄い事だ。
「記憶を変換する魔法は、簡単に思えるかもしれないでござるが、記憶操作の魔法の中では一番難しい魔法でござる。記憶封印・記憶消去・記憶変換、記憶操作の魔法の代表的なものはこの3つでござるが、難易度は今言った順番の通りでござる。
魔法を行使する際に本人にかかる負担に影響するようでござる。記憶封印から順に負担が軽くなるようで、本人の負担が大きいければ魔法使用の負担が減るらしいでござる。
記憶封印は、封印でござるから何れ解けるでござる。強引に解けた場合は、本人に恐ろしいほど負担がかかると言っていたでござるな。
記憶消去は、範囲指定が難しいでござるから、余計なものまで消してしまう可能性があるでござる。例えるなら、部分的に脳を殺すようなものでござる。実際には、情報を消して真っ新にするようでござるが……詳しいことは分からないでござる。
記憶変換は、記録に置き換えることで、本人への負担をなくす魔法でござるから、その分魔法を行使する側に負担が大きくなると、ツィード君が話していたでござるな」
記憶操作魔法には、記憶操作魔法のルールがあるみたいだな。俺には使えない魔法なので、良く分からない部分だな。
俺たちと会話しながら、女性たち3人に施す魔法を使っているようだ。成功率の問題で、記憶封印を施してから話を聞くようだ。
不意に思い出さないように、ここ1ヶ月分くらいの記憶を封印して、話を聞くようだ。そこでどこから来たのかを聞いて、地球からなら複製体なので後でコッソリ殺す予定だが、神の遊戯盤からきていた場合は送り返す予定。
送り返すにしても記憶を封印したままでは、戻った後に封印が解けてしまうと危険なので、消去か変換を重ね掛けするのがいいでござるか? とバザールは言っていた。
どうやら魔法自体は成功したみたいで、虚ろだった表情が多少生気を取り戻していた。
そこで話を聞いたところ、2人は地球から来たようだ。某国の兵士だったようだが衛生兵だったため、戦闘に向いておらず、同じように地球から来た戦闘の得意な兵士と勇者のタッグに捕まり、性欲の捌け口として使われていたそうだ。
残りの1人は、地球から来た外人かと思っていたら違うようで、偶然ダンジョンマスターを殺してしまった一般人だった。襲われた時に、たまたま持っていたナイフが心臓に刺さって、ダンジョンマスターの能力を得たようだ。俺たちの関係者以外に初めての現地人だ。
偶然に偶然が重なって、ダンジョンマスターになってしまったようだ。俺たちの考えが間違っていたが、ランダムで選択された1人かもしれないな。俺たちのように送り込まれたのもいれば、ランダムで選ばれた人間がいてもおかしくない。
情報を引き出したところで、3人を眠らせたようだ。
2人はその段階で殺す判断をして、現地人には記憶消去を施して、送り返すとバザールが決めた。ここまでして、何もせずに見殺しにしたと妻たちに知られたら、顰蹙を買うだろうな。帰った後の事も考えている自分に、内心笑ってしまった。
バザールが送り返すと決めたのだから、俺たちはそれを手伝うだけだ。3人となれば話は違うが1人だけなら、一番数を稼いでいるバザールに集めれば、あと30ほどでいけるので……全力で探すことになった。
バザールはこの洞窟に残って、殺した死体を再利用するために、闇魔法に属するアンデッドを作り出す魔法を使うようだ。この魔法は、ノーライフキングになってから使えるようになった特殊な魔法のようで、ツィード君は使えない魔法らしい。
手ごまを増やす意図もあるが、死んでから時間が短いほど、命令を細かく指示しやすいのだとか。殺した女性2人を、現地人を眠らせている間の世話係に使うようだ。
実験で殺した人間をアンデットにして、それを再び殺したら数にカウントされるのかを調べるようだ。今までやってきてなかったのは、単純にアンデッドを作り出す魔法=クリエイトアンデッドの認識だったため、先ほどまで忘れていたんだとさ。
行動方針が決まったので、俺とライガは敵を探しに外へ出ることにした。バザールは、アンデッドにしてから余計な奴らをもう一度殺して、拠点へ女性を連れ帰るようだ。
ライガと別れて探すこと10分、敵の気配を感知する。戦闘をしているようなので2人以上いるみたいだな。数を減らされると困るので、急いで駆けつける。
3人で三つ巴の様な形で戦っている。男2女1の3人が、お互いを牽制しあっているため、膠着状態に陥っているようだ。
見た感じ、女が頭1つ抜けて強そうな感じだ。この女は鑑定できないので地球からの1人だろうが、男2人は鑑定でき、勇者とダンジョンマスターが1人ずつみたいだな。
勇者が有利かと思ったが、勇者は戦闘が得意ではないのか、ダンジョンマスターに有効打を与えられていないようだ。それよりも、地球からの女性が、予想以上に強い。下手したらSランクに近い実力があるかもしれない。
複製体で強化されているとはいえ、ギリースーツに次ぐ強さの持ち主かもな。
相手があの程度だから優位に戦えているが、俺には関係ない。女性の後方から奇襲をかけ、麻痺のナイフで切りつけ、男2人は当身で気絶させた。
サイレントアサシンが影から出てきて、3人を運んでくれるようだ。
さて、次を探しますか。
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