196話 ドワーフって……
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ワイバーンの卵をゲットした俺たちは、ワイバーンに再会を約束してディストピアに帰ることにする。朝七時に出発してディストピアに帰ってきたのは十四時少し前だ。直線距離三十キロメートル、標高一万メートルを超える山の頂上まで行って、ワイバーンの卵をとって帰って七時間かからずに戻ってきた。
げに恐ろしきは魔物の機動力だろう。
瞬間的なスピードならウォーホースやウルフたちより早く動ける俺たちでも、持久走になれば絶対に勝ち目はない。そのうえ機動力も高いとは反則的だろう。ウォーホースに至っては、食事をとらず休憩もとらず二十四時間以上走ることができるのだ。それも時速一〇〇キロメートルを維持しながらだ。
お昼を食べていないから、みんなの腹の虫が悲鳴を上げているようだ。特にシュリは途中で栄養バーを食べていたがそれでもステータスに空腹のバットステータスが付いている。一仕事が終わって(俺はなにもしてないが)帰ってきたのだ、盛大に打ち上げでもしよう。
もちろんミリーの大好きな肉料理のフルコースだ。
色々な種類が食べれるように、調理法も工夫された肉料理も大量に出してもらった。うむ、ミリーがいい笑顔で食事を食べてくれている。それ以上にシュリの笑顔が眩しい。そんなに腹が減っていたのか、いつもより三割増しで食べているように見える。いっぱい食べてくれ。
「食事中の人もいるけど聞いてくれ、とりあえず食事が終わったら年長組はまたグレッグに行くぞ。他の娘たちは今回も留守をまかせるからよろしく」
「えぇ! シェリルあちも行きたい!」
「シェリル、ご主人様に迷惑かけないの」
「シェリル、スライムたちを置いていくから君たち三人でしっかり面倒見てほしい。戦闘訓練もさせる予定だからよければ一緒に訓練してやってほしいな」
「!! シェリルたちみんなで面倒見るの! しっかりした子に育てる!」
うむ、微笑ましい。一応ニコから生まれたから俺の従魔になっているが、今回の事でこの娘たちの従魔になったりしないよな?スライムたちが望んで三幼女が自分で面倒見るっていえば、従魔にしてあげてもいいけど、クロやギン、ニコやハクは勘弁してくれよな。
食事が終わったスライムたちが三幼女にもそもそと近付いていき、足元に到着すると体をこすりつけるようなしぐさをして、かまってもらおうとしているようだ。
ニコは俺の頭の上におさまっている、お前はそんなに俺の頭の上が好きなのか? お願いだからプルプル震えるのだけはやめてくれ、気持ち悪くなるから……
「ニコ、俺の頭におさまってるけど、お前も今回は居残りだぞ! イデデ! 痛いから髪の毛引っ張るな! お前の兄弟なんだから、お前が訓練の中心にならないでどうするんだよ! しっかりしないと俺の頭の上とられちまうかもしれないぞ?」
俺の発言を聞いたニコは、慌てたように俺の頭からどいて自分から分裂したスライムたちを集めてプルプル震えて何かを訴えているようだ。七色のスライムたちはニコを前にしてプルプル震えている。
スライムはこれで意思疎通が取れているような感じがする。ふるえている時に音でも出てるのか? それともテレパシーでも? まぁこの様子を見てる分には問題ないかな? 三幼女もいつの間にかニコ側に立って、他のスライムたちにお姉さん面をしている気がする。
食事も終わってグレック派遣組は準備を終えて出発する。ミリーから今回のヴローツマインへの報酬であるワイバーンの卵を十個受け取っている。残りの七個は今のところは羽化させないように、熟成や腐敗が進まないダンジョンの部屋に安置している。
ワイバーンの卵は今のところ食材という世界の認識下にあるため、今の段階で熟成や腐敗をしない部屋に設置すると、羽化することがないのだ。これは鶏の卵で検証したから間違いない。城壁が完成して親ワイバーンが住み着いたら孵して育ててもらうか?
可能ならディストピアの兵士に竜騎士になってもらおう。航空戦力は戦闘において圧倒的に優位に立てるからな、貴重な戦力になってくれるだろう。個人的には魔法兵をワイバーンに乗せて爆撃とか岩落とし等をさせるのが効率的だと思っている。
グレッグに到着したのは十九時頃だった。陽もおちて暗くなっている。閉門の時間を過ぎていたが、ピーチが機転をきかせて領主権限で強引に開けて中に入った。そういえば忘れてたけど、俺って領主の座を奪ったことになっていたんだった。特別扱いか! 悪い気はしないぜ!
もう一個ついでに奪った商会の屋敷に戻ると、俺が帰ってきた事をどこからか聞きつけたダリアが領主館とつながる地下通路を通って面会に来た!
「シュウ殿、早いお戻りだったな。何か問題でもあったのか?」
「ん? 何の問題もないよ。ワイバーンの卵が確保できたから戻ってきただけだよ」
「はぁ? もう十個も確保できたんですか? 昨日の今日で?」
「まぁな、俺も従魔たちがここまで性能が良かったとは思わなかったよ。あの山の頂上まで三時間しかかからなかったよ。さすがにビビったね。まぁ一つの巣に十個以上あったから助かったよ。で、これが約束の報酬のワイバーンの卵十個な。事後処理まだ時間かかるかもしれないけどよろしくな!」
「本当に十個も……報酬を渡されたからというわけではありませんが、最後まで責任もって処理しますよ。中立都市同盟の中で起きた不祥事ですから、同じ同盟の一員として厳しく取り締まりますよ。
この事件をきっかけに監視官も派遣できるようにしましたし、聖国側の中立都市にも監視官を送り込めますね。苦労は多いですがそれなりに得るものも多いので相殺ですね」
ダリアには苦労を掛けるがヴローツマインというか中立都市同盟として益があるようで頑張ってくれるようだ。
「それで俺が残ってないとまずい事って何かある?」
「この街に残らないのであれば、代官を決めてもらえれば問題ないかと」
「そっか、代官か。考えてなかったな。誰かいい人材いたっけな? ダリア~うちの子たちが育つまでよさそうな人材貸してくんないか? ある程度のお酒とブラウニーの飯付きで代官の仕事する人いない?」
「その条件ならおそらく複数手が上がるだろうな。後発組で来た兄弟弟子から三人程選んどくよ。代官一と補佐二って感じでいいかな? それにリンドさんの指導を受けた護衛のメンバーもその内来るから、おかしな方向にはいかないはず。それにシュウ殿から預かる子供たちにも色々教えないといけないですからね」
「お~助かるわ。どのくらいになるかはわからないけど、問題があったら連絡もらえれば何とか頑張るよ」
「まぁ私たちはドワーフだから、十年や二十年は大したことありませんからね。それにあんたたちと同等の飯が食えて酒が飲めるなら、来たい人は増えるでしょうな。私だって今の地位になければ立候補したいくらいですよ」
「さすがに寿命が長いとスケールが違うな。二十年って、ヒューマンなら赤子から成人になって親になってもおかしくない年月だからな。まぁ飯が食いたいっていうならヴローツマインのフードコートに食いに来ればいい、あそこの飯もシルキーの指導を受けたブラウニーたちが作ってるぞ」
「そうだった! 私としたことが、あそこはお酒を飲む場所だとばかり思ってた。もともとは食事処の予定だったのを忘れていたよ」
グレッグで事後処理してくれている間は十分に飯を食ってくれ。後で酒もDPで召喚しておくか、今回はもうお酒がないからな。ドワーフたちよ飲み過ぎだ! 少しは自重しろ!
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