1940話 帰れるのだろうか?
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3人目はそのまま放置でいいだろう。麻痺毒をくらっているが強化されているから、すぐに死ぬような重症でもないはずだ。
まだ隠れている奴がいるのか、3人だけだったのかは分からんが、目の前の敵の無効化を考える。
麻痺毒のついたナイフで切りつけた方が、早いのではないだろうか? 一応、刀も持って来ているが、切りどころが悪ければ殺してしまうからな、今回の攻撃には向いていない。ナイフで深く斬りつけても、致命傷になる場所でなければ、即死は無いから回復ポーションでなんとかなる。
ならば、多少強引にでも敵を無効化するべきだな。
左手に持っていたナイフをホルスターへ戻し、同じナイフを取り出す。木を登ったときに麻痺毒が剥げている可能性を考え、ホルスターの中に残っている麻痺毒を再びナイフへつけたのだ。同時にナイフを投げてしまった右手にも、ホルスターからナイフを取り出し再度かまえる。
接近戦を感じ取ったのか、距離を置く形で俺を挟もうとしているのが分かった。速度で言えば俺の方が早い。全力で逃げに徹しない限り、追いつける自信がある。
1人目に近付くように移動する。後ろの2人目から、クナイが何度も投げられるが、分かりやすい攻撃だったので回避が簡単だった。4本目が投げられると同時に反転して、2人目に急接近する。
2人とも驚いたのか対応が遅れ、接近を許してしまった。
裏の仕事をできる人材だったとしたら、驚きすぎだろ。不測の事態なんていくらでもありえるのに、緩急をつけただけで対応が遅れるのであれば、実戦経験がほとんどないのかもしれないな。
そんなどうでもいいことを考えながら、2人目を右手で持ったナイフで切りつける。狙いは、低い体勢からの太ももだ。
低い体勢からの攻撃なのは、敵の攻撃方法を限定させるためだ。立っている状態より低い体勢の方が、攻撃の的になる部分が少ない。攻撃方法を限定減らすことで、こちらが対応をしやすくする。低い位置への攻撃は、単純に躱しにくい。
他にも理由はあるが、大きく言えばこんな感じだ。
1人目の方から支援でクナイが飛んできているが、2人目に当たることを恐れて狙いが甘い。避けるのも容易く、挟まれているのに二対一を生かしきれていない。
俺の攻撃を必死に避けている2人目は、対応が後手後手になり反撃が出来ないでいた。何とか距離を取ろうとしたバックステップに合わせて俺は、密着するほど体を寄せ、その状態で回転をして2人目の背後を取る。
俺の方が早い状態で密着して体を回転させたため、相手を軸に俺の体が回転し2人目の背後に立つ形になった。
隙だらけの背後から、太ももの裏にナイフを刺して、毒を体内に侵入させる。
ナイフを刺した2人目をブラインドに使う。麻痺が効き始めた2人目を、1人目に投げつけ目をそらさせてから、一気に距離を詰める。
2人目の背後に回られた段階で、距離を取るのが正解だったのだが、実戦経験の少ないであろうこいつには、その判断が出来ず2人目が投げられるまで行動できなかった。
気付いて逃げたのだがスタートの差が歴然で、すぐに追いついた。
追いつく前に投げたナイフを躱すのに精いっぱいで、手の届く距離になったときには体勢を崩していた。新しく取り出したナイフで、2人目同様に太ももへ刺して捕獲完了。
「3人はさすがに運べないな……バザール、俺に何体ついてたっけ?」
『全部で3体でござる』
「じゃぁ、いったん戻るから、1体は案内、2体は1人ずつ運んでくれ。俺が1人運ぶからよろしく」
俺の影から1体のサイレントアサシンが出てきたが、残りの2体は……1人目と2人目の影から現れた。そう言えば、無効化できなかったら足を切るように言っていたな。
マジマジ見るのは初めてか? 見た目は、真っ黒な足が全部隠れる位ながいポンチョのような物を着ている。その生地は、驚くほど薄い。顔は、仮面をつけている。スク〇ームに出てくる仮面のような物をつけている。
こんなだったっけ? リッチよりリッチっぽく見えるのは気のせいかね? 拠点の裏方をしているリッチなのだが、見た目はバザールがローブを着て杖持ってるだけだからな……
サイレントアサシンって、アンデッドだから骨かと思っていたけど、キレイなゾンビ? みたいな感じだった。何て言うか、肌色の悪い人間って感じだな。
だけど、こいつらが何で影に潜れるのかは、良く分からん。物質的な体があるのに、なんでなん?
案内されている間、時間があったためどうでもいいことを考えていた。
拠点に戻ってくると入り口に、5人の人間が簀巻きで転がされていた。
「シュウ様! お帰りなさい。生きたまま連れてきましたが、どういうことでしょうか?」
「ちょっと考えがあってな。もし、殺した人間がトリガーになって、元の世界に帰れるとしたら、ライガが一番初めに帰る可能性が出てくるだろ? ライガには悪いんだけど、食料を生み出せるお前は貴重だからな。それに、ウル・ロジー・綾乃に森を彷徨わせるわけにはいかないからな」
「そう言うことでしたか。自分は最後で問題ないので、シュウ様たちに先に帰ってほしいですね」
「可能性の1つだから、綾乃に実験してもらおうかと思ってな。さすがにウルやロジーに、確定していないのに人殺しさせるのはな……」
「なるほど。綾乃さんは良いんですか?」
「一応、綾乃に確認してからだな。もしダメだったら、適当にダンジョンマスターを捕まえてからだな。問題は、勇者とダンジョンマスターの帰れる条件が違った際だけど、その時はロジーにお願いするかな」
ライガは、フンフンと頷いていた。
ウルとロジーは、何やら遊びながらしているので、綾乃を呼び出して説明すると、
「いいわよ。ウルちゃんやロジーにさせるくらいなら、私がヤルわよ。シュウと合流してから、大分昔の感覚に戻ったけど、もともといた場所が場所だから気にしないわよ」
男前だな。
俺が連れてきた3人とライガの連れてきた5人から、情報を抜き取ってから綾乃が心臓にナイフを突き立てて殺した。
得られた情報は、勇者とダンジョンマスターは合わせて3人、こいつらは俺らと同じ日にこっちへ来ている。問題だったのが、俺が捕まえた3人も俺たちと同じ日だったが、残りの2人は俺たちから3日前と9日前に来ていたようだ。
この中で一番殺していたのは、勇者の14人だった。
少なくともこの人数では、帰還は出来ないようだ。そもそも、殺した数が帰れる条件とは限らないんだけどな。
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