1936話 充実していく拠点
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バザールも寸法さえわかれば、木材の加工を問題なくできるので、外枠になる部分を担当してもらうことにした。布の大きさに合わせて、機織り機の大きさを決めたので、大体大きさはあっていると思う。誤差が出ればそこは調整力でなんとかしよう。
作り始めようとした頃、綾乃がウルと一緒に工房へ来た。俺たちがいなかったから、何をしているのか確認しに来たのだろう。
動力をアンデッドの骨たちに任せるから、早めに機織り機を作っておきたいことを話すと、綾乃は納得してくれた。ウルは、そこまで急ぐ必要があるのか首を傾げていたが、そう言うものだと思ってくれ。
綾乃には、スパイダーシルクを紡いだ物、少し太めの糸状にしたものを生み出してもらった。スパイダーシルクは、1本が細いため紡いで少し太くするのだが、それより太くしてもらっている。
理由は、機織り機の緯糸(縦に並んでいる糸)の幅調整のためだ。本来のスパイダーシルクの糸の細さでやると、糸の本数がとんでもないことになってしまうので、糸を太くしてもらっている。
あ~ウルも手伝いたいか……ちょっと待ってくれ、綾乃が出す糸は糸巻きに巻かれていないから、巻いてもらう機械を作る。地球で作れば時間がかかる物でも、手軽にできてしまうのがこの世界! スキルの力を存分に発揮する。
作りはいたって簡単、糸巻きを刺す棒、それを支えるコの字型の器具を2つ固定する。それだけだと、細長いロの文字に見えなくもないな。ロの上の棒が糸巻きの棒で、糸巻きを固定するための突起をつける。
糸巻きの棒は、左右に飛び出しているので、右手側に棒に乗っかるように小さな自転車の車輪のようなものを固定する。車輪の更に右側に回すための取っ手をつけた。車輪のゴムの部分は、綾乃の召喚してくれた謎物質で摩擦係数が高いものを使っている。糸巻きの棒を回すためだからな。
本当なら、歯車にしたかったのだが、歯の部分が加工に時間がかかるので、歯車の部分をはぶくために滑りにくい素材を使っている。
簡易的に作った物だけど、糸巻きとして十分に使えているな。糸の状態で、かなり伸び縮みするから、引っ張りすぎないように注意してもらいながら、糸巻きに巻いてもらっている。
その程度の作業なので、ながら作業も問題ない。気になることを話したり、料理について話したり、ウルが気ままに話せるように綾乃が配慮してくれていた。俺も作業をしながらだが、話に参加している。でも、意識が作業の方に向いていたので、内容はあまり覚えていない。
できた布を巻く布巻き具、緯糸を交互に上下に移動させる綜絖、横糸を通すシャトル、横糸を通した後にトントンして布目を整える筬を作り終える。バザールに担当してもらったのは、布巻き具と糸巻きを固定するものだ。
本来とは違う形だが、糸巻きをたくさん並べて緯糸として使えるようにしている。何十個と糸巻きを並べるので、直線ではなく『//////』このような感じで、糸巻きがさせるように配置されている。
綜絖、筬、シャトルは、スケルトンたちが担当するので、動力の部分は問題ない。他にも布巻き具の部分や、緯糸の張り具合などもスケルトンたちが調整してくれる。バザールは、この動きだけを完璧にできるようにイメージを刻み付けてくれた。
糸巻きが必要数できたので、糸をセットしていく……これがまた面倒なんだよな。うっし、これで大丈夫だろ。試運転を行う。5個ほど糸巻き機を量産して、ウルたちとくつろぎながら布の完成を待つ。
「おぉ~思ったよりキレイにできてるな。間に合わせとはいえ、このクオリティーなら問題ないな。綾乃、他に良さそうな糸を出しておいてもらっていいか?」
「了解。スパイダーシルクは肌着とかそっち系に使うんだよね? 違うの!? 魔力消費の関係で、下着だけにしてほしい。上に着るTシャツとかなら、多少大きく作ればいいでしょ……」
「それもそうだな。綾乃、無茶言ってすまん。あまり伸び縮みしなくても、ボタンとかにすれば問題ないもんな」
「それに、上着に関しては、今着ているやつで十分でしょ。リッチたちが洗濯乾燥までしてくれるんだからさ。余裕ができてから、予備を考えましょう」
それでも、下着類は新しくできるのならしたいのが人の心。目の前で、下着に使える布が作られているので、否は無い。
ウルの眠気がピークに達したようで、今日は寝ることになった。エアーベッドの空気は抜けておらず、寝心地も悪くない。昨日と同じ体勢でウルは寝るみたいだ。養子にした時もこんな感じだったっけ? 俺じゃないけどミリーにくっ付いてたんじゃなかったっけ?
ウルが寝たのを確認して、チビ神に向かって怒気を放つ。
何か聞こえた気はするが、リアクションは無いな。おそらく、何かしらの制限がかかっているか、そもそも会話ができないようなシステムなのだろう。だけど、こちらからの怒気は届いているみたいなので、10分ほど送り続けておいた。
目が覚めると、ウルはすでに起きていたが、俺の胸に顔を擦り付けていた。ミーシャたちが小さい頃に、俺によくやってきたっけな? 俺の近くで安心していられるのであれば、嬉しい限りだ。
朝食も食べ終わり、ライガは昨日と同じように偵察へ出てもらう。俺は、自分の武器を作ることにした。ライガにも作ってやりたいのだが、あいつの武器はクリエイトゴーレムが無いと作ってやれないんだよな……力がありすぎるので、アダマンタイト以外では耐えれないのだ。
アダマンタイトを手甲に加工できるわけもない。ライガも壊れる武器なら、素手の方がましだと言うことで武器は遠慮している。
そうなると、武器を使うのは俺だけだな。いや、弓ならライガも使えるか? 自分用の武器を作ったら、バザールに聞いてもらうか。
ウルには、服のデザインを任せている。そのサポートに綾乃をつけ、綾乃はサポートの傍らで服用の糸を作り出してもらっている。
使い慣れた道具ではないが、鍛冶をする分には問題はない。後は、叩いている内にできる限り調整するだけだな。
ミスリルとオリハルコンを炉に突っ込み合金を作っていく。作った合金から、必要量を取り分け、2つ塊を準備する。
片方は熱した後に叩いて余分なものをはじき出してから形を整える。もう片方は、熱して叩いて折り込んで、更に熱し叩き折り込むその作業を何度も繰り返す。大丈夫だと判断したところで、初めに叩いた合金を何度も折り返した合金で挟む。
今度はそれを刀の形へ近付けるように、熱しては叩き、叩いては熱し、形を整えていく。刃になる方を薄くしていき、刃物として使えるように叩いていく。
鋼ではないが、焼き入れを行う。こうすることによって、ミスリル合金は硬くできる。そう言う意味では、鋼に近い性質なのかもしれないな。違うと言えば、この焼き入れを何度も行う必要があるのだ。理由は分からないが、ミスリル合金の場合は5回は焼き入れを行わないと、必要な硬度に達しないのだ。
焼き戻しは必要ないので、性質は似ていても鋼とはやはり違うのだろう。後は研いで刃を成形する必要がある。あ~、研石がねえ……綾乃に硬い素材の粉を出してもらい、荒砥石、中砥石、仕上砥石を作るしかないな。
素材毎に接合剤を混ぜて、大きなわっか状に成型し固めていく。今回は圧力をかけた状態で、乾かすことによって砥石にできる不思議な接合剤を使っているので、簡単に作成ができた。綾乃は、何でこんな素材を知っていたのか分からないが、いい仕事だ。
スケルトン君たちに輪っか状に成型した砥石を、専用の道具を準備したので回してもらう。刃が熱を持ちすぎないように、リッチが水を出してくれている。30分ほどかけ3つの砥石を使い、刀の刃を整えた。
うむ、これで大丈夫だろう。エントの素材で柄を作り、滑りにくく手になじむ革を巻きつけ完成! 鍔は無いが、これでいいだろう。後は鞘を作って完成だな。
切れ味と持ち運びの良さを考えて、俺は刀を作った。ライガはいらないと言っていたが、持っていれば便利なこともあるので、同じ素材で剣鉈を作っておいた。
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