1934話 スキルは偉大
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一番広い空間のリビングを占領して、綾乃にベッドに使う木材を生み出してもらう。敵から奪ったナイフなどを加工して、木材を加工する道具をつくる。後で作り直すだろうが、枠組みをサクッと作っていく。大きめに作った枠組みに、すのこ状に板を並べて釘っぽい形で生み出してもらった金属で打ち付ける。
後は、敷布団と掛布団か……
「シュウ、スプリングはまだ難しいから、エアーベッドみたいなのにするのはどうかしら?」
「空気が漏れないようにするのが、難しくないか?」
「ちょっと手間はかかるけど、接着剤の様な薬液を作れるわよ。縫い目に塗り込んでおけば、空気漏れはないわ。ある程度の大きさの筒状の空気袋を複数ベッドに仕込めれば、寝心地も悪くないだろうしね。試すだけ試してみない?」
綾乃の案を採用して、直径20センチメートルほどの布筒を綾乃が生み出し、俺はその布を加工していく。空気漏れがしないように内側に伸び縮みする接着剤を塗っていき、あまり上下の面が膨らまないように、中心に紐を通しておく。
これによって、空気がたくさん入っても、上下が膨らみ寝る面の凹凸が減るように調整する。一つひとつの筒は、他の筒に空気を送るために繋げている。この筒たちも最終的には、寝心地の良い皮に包んでベッドに置くので、一つひとつ丁寧に処理していく。
おそらくスキルの効果なんだと思うが、尋常じゃないペースで加工がおこなわれている。ウルにも手伝ってもらい、繋げた後の筒同士の空気漏れがないかなどを、ロジーと一緒に調べてもらった。
30分もしないうちに、1つ目のエアーベッドが完成する。しっかりと空気を入れ栓を閉め、交代しながら寝転がってみる。
「向こうで使っているのに比べれば、寝心地は良くないけど、十分に使えるレベルのエアーベッドね。これを人数分でいいわね」
「あ、綾乃さん。私はお父さんと寝るから、私の分はいらないです」
綾乃は少し考えたが、ウルがそれなら問題ないと判断したのか、了承してくれた。
「じゃぁ、これは私が使うわ。ライガは体が大きいし、シュウもウルと寝るなら少し大きめに作りましょう。ロジーは、こんなのよりクッションの方が良いでしょ? 作る物も決まったし、さっさと作りましょう」
綾乃に素材を出してもらわないと、何も作れないので綾乃の指示に従って物作りが進んでいく。
エアーベッドの3つ目が完成した頃、バザールがふらりとリビングに現れ、工房が完成したと報告に来た。みんなで向かってみると、めっちゃ広かった。バスケットコートが4面はとれるのではないかと思うほど、広かったのだ。
倉庫に素材を置くよりは、目に見える位置に置ける方が良いかと考えて、とにかく広く作ったらしい。棚もいくつか魔法で作っており、追加が欲しければ声をかけてくれだとさ。
最後に、ライガからの報告で、2人に遭遇したがどちらも地球の人間ではなかったようだ。ダンジョンマスターと勇者には、今回の事情は何も知らされていないので、サクッと息の根を止めたらしい。
捕虜にする理由もないし、これがいつまで続くかも分からないので、無駄な人間を抱え込むわけにはいかない。情報がないなら、生かしておく理由もないと言うことだ。
ライガは自分で食事を生み出せるので、暗くなるまで情報を集めてくれるようだ。
食事には早いので、短い時間で作れる回復ポーションを作成してみる。綾乃に薬草とその他の素材、水を生み出してもらい、間に合わせの道具ですり潰し煮出して、魔力を込めて魔法薬を作ってみた。
「ん~切り傷を治せるから、魔法薬は問題なく作れるみたいだな。素材とか、この世界にあったりするんかね?」
「あると助かるけど、効力が同じとは限らないわよね? 午後は、どうするの?」
「簡単にソファーとかを作る。綾乃は、お願いする素材を生み出してくれればいいから、休憩してていいぞ。ウルたちと一緒に何かしててもいいし、魔力の回復に努めてほしいかな」
「特殊な素材は私じゃないと、今の所生み出せないもんね。あ~、木はどうするの? これからも生み出した方が良い?」
「それなんだけど、収納系のアイテムがないから、運び込むのが大変なんだよな……外に放置しておくわけにもいかないし、この周辺が拓けてたら怪しまれるし、素材は基本生み出してもらう形かな」
「そう言われればそうね。シュウには加工を任せる形になるけど、よろしくね。昼食になる前に、午後必要になる素材を生み出しておこう。何が必要になるか教えて」
綾乃に、午後必要になりそうな素材を伝え、いくつも召喚してもらう。
昼食を食べ終わり、俺は工房へ向かう。何から作るか……生活環境を整えるところからだよな。少なくとも、くつろげるスペースでゆったりと座れる椅子は必須だろう。
人数分だと少ないので、10脚分用意しよう。枠組みを作り多少補強していく。ウレタンは召喚できないので、魔物素材でそれっぽいものがあり、それを生み出してもらっていたのでソファーに張り付けていき、肌触りの良い革で被って完成。
うん、思ったより上手くできてるな。深く座れるように、腰の位置がソファーの前面に比べて、多少低く作っている。ちょっと立つのが面倒だけど、問題ない。
設計図を書かずに思い付きで作っていたため、何度か修正することとなったが、2脚目以降はコツをつかんだのでサクサクと作っていく。
「お父さん、何か手伝えることないかな?」
やはり暇になってしまったか……することがないから、どうしても時間が余っちゃうんだよな。ウルには厳しい環境かもしれない。さて、どうしたものやら。
「シュウ、さすがに私も魔力回復するためだけに寝れないから、ウルちゃんと一緒に魔法薬作りでもしてるよ。この子にもできそうなことがあったら、呼んであげて」
ウルは少し戸惑っていたが、綾乃についていき魔法薬を作るようだ。子どもたちには、一通り生産スキルを覚えさせているので、無駄にはならないだろう。綾乃、頼むぞ。
っと、しまった! 服を作るための布を作ってなかった。えっと、機織り機か……加工が難しいから、ちゃんとした道具を作ってからじゃないと、作るのは無理だな……
先に鍛冶仕事をするべきだった! ソファーの木材加工はかなり力技だったしな。
綾乃はインゴットでも生み出せるようになっていたので、今回はインゴットで金属を準備してもらっている。鉄のインゴットを熱して、必要な量だけ切り別けていく。
インゴットを切り別ける時に使った金床は、綾乃が生み出したオリハルコンをそのまま床に使っている。言ってしまえば金床やハンマーを、ランクの低い順に加工していく手間を省くためだな。ハンマーも間に合わせだが、オリハルコンでハンマーの形を作ってもらい、柄をつけている。
間に合わせで作った道具とは、クオリティーの違う加工道具を作っていく。
ふ~、地球とは勝手が違うとはいえ、ここまで簡単に鍛冶が行えるのはビックリだよな。相変わらずでたらめな速度で作れる……スキルって、本当にすげえな。
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