1932話 合流
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少し進むと、ジャングルみたいに生繁ってきた。低い木やツタ、背の高い草などが、森の中を歩き難くさせている。100メートルほど進んで、状況を確認する。
「ライガ、このまま移動するのと、木の上を移動するのだと、どっちが楽だと思う?」
「……木の上の方が、いろんな意味で対処がしやすいと思います」
俺と同じ意見だな。木の上だと踏ん張りがきかないが、ここまで生繁っていると移動するのにも音を立てるし、もし戦闘になったら足元がよく見えないので、正直怖い。索敵スキルがあるとはいえ、このスキルも万能じゃないからな。
カン頼りで進もうとする先が山の方なので、本当にこのまま進んでいいのか悩んでしまうが、こういう時のカン……運は、3セットがあるので、疑ってはいけない。それに綾乃なら、隠れるところの少ない普通の森の中より、山側のジャングルっぽいところにいそうなんだよな。
神授のスキルは使えるみたいだから、あいつはバザールという例外を抜けば、仲間の中で一番生存率が高いスキルを持っている。
綾乃の神授のスキルは、飲み物も素材になる物であれば何でも召喚できるからな。食べ物も同じである。食材になる素材もあるし、香辛料はほとんどが素材になるから、料理も問題なくできるな。調理技術があれだが、死にはしないだろう。
綾乃の事が心配なのもあるが、綾乃と合流できれば調味料が使い放題になるから、出来るだけ早く遭遇したいのだ。
私情ですまんな。やっぱり、美味しいモノ食べたいじゃん。ライガのスキルも助かるんだけど、やっぱり出来合いの物だと、ブラウニーたちが作ってくれる食事に劣るんだよね。俺が作ったからと言って、ブラウニーたちほど美味しくできるわけじゃないが、ちょこちょこ教わってるからな。
ウルも最近は料理も教わっているようで、技術はまだだが調味料の使い方などは、問題なく調合できたりするので、食事の質を上げることが可能である。
っと、暗い上に木の上を移動しているのに、変なことを考えるのは良くないな。ライガだけじゃなく、俺も出来ることをやらないとな。集中して、気配が何かないか探る。
その反応に気付いたのは偶然だろう。俺のギリギリ感知できる範囲に、良く分からない反応があったのだ。
「ライガ、止まれ。向こう側1キロメートルほど先なんだけど、何か変なにおいはしないか?」
「向こうですか? こちらが風上のせいか、向こう側の匂いは多分感じませんね。ずっと風の方向が変わってないんですかね? 1キロメートルほどなら、匂いが漂っていても不思議ではないと思うんですが……ナニカも動いているんですかね?」
なるほど、集中したのが今さっきだから、相手が動いているか分からなかった。
「すまない、気付いたのが今だから、動いているのかは分からない。でも気になるから、確認しておきたい。そこへ向かうから、付いてきてくれ。何か異変を感じたら教えてくれ」
場所が分かるのは俺なので、先導していく。暗い中を先導するのって、結構大変だな。ついていく時とは違う緊張感もあるし、色々気にしながら進むからか、動きが少し雑になっている気がする。
ライガは、匂いでも色々感知できる強みがあるから、俺とは違うんだろうな。
「ライガ、今まで動いていたかは分からないが、今の所動いている様子はない」
良く分からない反応は、現状動いていないことが分かった。残り100メートルほど……
「シュウ様! 綾乃さんの匂いが微かにします。距離は分かりませんが、薄っすらとにおいがするのだけは分かります」
おや? この正体不明の気配は、綾乃か? あいつって、そんな器用に隠れられたっけ? 行ってみれば分かるだろう。
気配のすぐ近くまで来たが、目視することは出来なかった。それもそのはず、俺の目視できる距離より先に、正体不明の気配があるのだ。何バカなこと言ってんだ? みたいなこと思うかもしれないが、気配が地面の下からしてるんだよ。
多分だけど、俺たちみたいに地下コロニーを作って、その中に隠れているのだと思う。
入り口は……どこか分からんな。
「バザール、近くに空気口がないか確認してくれ。ライガも、匂いの強い所がないか探してみてくれ」
俺は、気配の真上に立っているのだが、距離にすると20メートルほどある。かなり掘り下げたんだな……あいつは魔法は使えないはずだから、ここにいるのは違う奴かね?
ライガが通気口のようなものを発見した。バザールの操るサイレントアサシンに進んでもらい、中を確認してもらう。すぐに反応が返ってきて、中にいるのが綾乃だと分かった。さすが幸運3セット! 1日足らずで全員と合流できる!
バザールに説明をしてもら、出てきてもらった。
「あんたたちも来てたんだね。良く分からない所に飛ばされて、安全を確保するのに地面を掘って部屋を作ったのが台無しになったわ」
皮肉を言っているが、合流出来て嬉しそうな表情だ。匂いが薄かったのは、通気口に消臭系の素材を入れてたからで、ライガがそれで気付けなかったのだろう。気配に関しては、地面の下だからということではなく、察知しにくくなる素材を使ったからだとさ。
気影石とか呼ばれている石で、部屋を覆っていたので良く分からない反応になっていたのだと思うってさ。全体をこの気影石で被っていれば、気付けなかった可能性があるって言われて、ちょっと焦ったけどな。
通気口とか、一部気影石で囲っていなかったため、漏れた気配を俺が察知したが、良く分からない反応として俺が捕らえたのだろう。
「綾乃、腹は減ってないか? お前なら、ライガが神授のスキルを覚えているの、知ってるだろ?」
「……!? そうだった。ライガ、アレだして、アレ! ハーゲ〇ダッツのクリスプチップチョコレート!」
一番初めに頼むのが、アイスってお前……まぁ、綾乃らしいっちゃらしいか。10分ほどで食べ終わったので、ライガにおんぶをしてもらい、俺たちの拠点へ戻ることにした。
バザールの操るサイレントアサシンに先導してもらい、一気に駆け抜ける。時刻はもう、24時を回っているから、ウルとロジーは寝てるかね。
拠点に戻り中へ進んでいくと、カレーの匂いがした。慌ててキッチンに移動すると、ウルが料理をしていたのだ。カレー粉は無かったはずなので、レトルトのカレーを混ぜて、ライガの出した野菜や肉を入れたのだろう。実に良い匂いだ。
綾乃もカレーの匂いにやられて、涎を垂らさないか心配になる表情をしている。
俺たちがいつ帰ってきてもいいように、カレーを作ってくれていたみたいだ。レトルトでもよかったのでは? と思ったが、レトルトだと野菜やお肉の食べ応えがないから、少し手を加えただけ! だってさ。
ちなみにロジーは、リビングで腹を出して寝てたわ。
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