193話 恒例の行事
アクセスありがとうございます。
言い逃れのできなくなった元領主と元商会長を引きずって、この二人の息のかかっていない兵士の詰所に連れて行く。そこの牢屋にぶち込んでも静かにしなかったので、サイレントヴェールの魔法に魔力を多めに込めてかけておいた。
前の検証で十二時間以上は、持続したのでしばらくは問題ないだろう。ちなみにこの詰所には竜騎士も詰めている。両手両足に鍵穴をつぶしたアダマンコーティングの手錠を付けてあるので脱出したとしても、俺以外には今のところ外せないだろう。
領主館と商会の膿は出したが、外に囲っている奴らまではマップ先生でも探し切れないので、後々処理しよう。ダリアの準備してくれた文官たちに合わせて、老ドワーフ10人にもグレッグに出て来てもらって、領主館と商会の建物を立て直す予定だ。
どんな仕掛けがあるか分からないので、この街に来てもらう人間のためにも安全安心な建物を作る予定だ。
まずは、領主館と商会の建物を地下通路でつなげ行き来ができるようにして、ディストピア水準の生活環境を整え、脱出経路も準備しないとな。
そういえば、精霊たちが住めるように環境を整えないとな。水精霊は庭に作った噴水に住んでもらい、風精霊は噴水の周りに植えた木に宿ってもらおう。火精霊は商会の方に鍛冶場を作って、その地下に土精霊の住める場所を作れば問題なさそうだな。
人員の配置は、文官とメイド・執事予備軍は領主館で、鬼人と商人志望の孤児は商会で面倒を見てもらおう。ここでもまれればディストピアに帰ってきた際には戦力になってくれるだろう。
そのままこの街の商会を任せて、ディストピアとの橋渡しをしてもらってもいいな。これって捕らぬ狸の皮算用っていうのだろうか?
ある程度概要がかたまると俺の手を離れて走り始める。することがなくなった俺は、護衛の娘、シュリと気付かない間にこっそりと付いてきていた、ツィード君を連れて恒例となった奴隷商へ向かう。
帝国の近くという事もあり戦奴はほとんどいない、いても買われてってしまうようだ。まぁ俺にすれば戦奴を買わなくても、ある程度までのレベルにはすることができるのだから、高い物を買う必要はないんだよな。それより今回は、農家や商人、塩の生産等の人員補充をする予定だ。
イマイチポンコツ感の拭えないツィード君だったが、今回奴隷商にて最高の働きをしてくれた。闇精霊はチャームとかで相手を操るだけあって、感情や深層意識を読み取ることが大得意なのだ。
なので、ツィード君のお目にかなった者からシュリがどんどん選んでいく。最終的には九十七人の十八歳以下の奴隷と、三十四人十五組の親子を購入した。親子はやはり片親で父親が死んだため、生活できなくなり奴隷になった者たちだった。
この世界では領主の指示に従って戦って死んでも、家族に一銭の手当ても出ないのが普通らしい。上のものに言わせれば、給金が他よりいいのだから当たり前との事らしい。冒険者ならまだしも、兵士の家族が奴隷落ちするんだから理不尽な世界だ。
グレッグの街は実質俺のものなので、無理に色々隠す必要はないのだが、街の人に知られないように地下通路をつなげて、購入した奴隷たちはディストピアに行ってもらうことにした。向こうの方が色々学ぶには適してるからな。
十日ほど過ぎた頃、ダリアが俺の部屋を訪ねてきた。
「さきほど連絡が入ったんだが、バリス聖国側の中立都市に大量の獣人奴隷が持ち込まれたらしい。なので、ヴローツマインの商人に端から買わせた。ただ人数が三〇〇人を超えたため移動が困難なんだ。シュウ殿の力で何とかしてもらえないだろうか?」
「その奴隷って俺のためのだよな? ならもちろん手を貸すけど、全員引き取るかは面接してからになるけどそれは問題ないか?」
「不穏分子がいないとも限らないからもちろん問題ない。あふれたものは何かしらの問題があるわけだから、対処の方法も考えやすいな」
「オーケー、商談成立ってとこかな。聖国側の中立都市の近くまでディストピアからの地下通路引いておくわ」
「直通で引いてくれないのか?」
「目の届かない場所にあるのは困るから、基本的には一度ディストピアを経由してもらう形になる。今のところ計画段階の話でヴローツマインは含まれるかわからないが、これからつなげる中立都市とディストピアを繋げる地下通路は、ディストピアの外に作る出入り口専用の城塞を作る計画だ。
二重丸の内円をディストピアの買取所兼他の中立都市の商品販売所にして、外円を各中立都市からの商人が滞在できる場所にする計画があるんだ。個々の取引ももちろん認めるので、勝手にやってもらう予定だったり。
重要なのはそこからディストピアへ行くには、特殊な通行手形を発行するシステムでね、どんなに頑張ってもディストピアの中に出入り口を作ると防ぎきれない侵入があるから、いっそのこと外に作って管理すればという話になったんだ。で地下通路は通行料を片道ごとに取れば俺たちは儲かるし、中立都市同士も交流がしやすくなるだろ?」
「なるほど、これ考えたのってリンドさんですよね?」
「原案だしたのは確かにリンドだったはず。よくわかったな」
「なんだかリンドさんの影を感じたので聞いてみただけですよ。街の中に出入り口を作るのはさすがにリスクが高いですからね、シュウ殿の力をもってすれば城塞の一つや二つは簡単でしょうし。
おそらくですが、外円の部分は中立都市に開放する予定ではないですか? ディストピアの住人に商売をやらせるには人数が足りないですから、土地を売るから自分たちで環境を作ってもらおう、ってことになってると思いますが」
「さすがリンドの弟子だな。資材とかは準備するから商売したかったら、自分で土地買って建物たてろって方針にする予定だな」
「まぁ問題があればその都度改善していけばよさそうですし、出来れば城塞を作るなら少しかませてもらいたいですね。こちらから暇を持て余してる兵士を派遣しますので、ディストピアで作られる予定のあのお酒の販売を優先的にしてもらえればと思いまして……どうですか?」
「本当に酒好きだなドワーフってのは……まぁ大丈夫だと思うけど、次の話し合いの時にでも提案されたことを話しておくよ」
獣人の人数が増えそうだ。適性があるだろうし本人たちのやる気も関係するからあれだが、順調に兵士の枠が埋まっていきそうでよかった。ある程度整備が整ったら、住人をよそから呼び込む予定だしな。荒くれ共の多い冒険者たちはどうするか?
この街の中心は一応ダンジョンだからな、ある程度の線引きして入ってもらえばいいか? 地下通路を通ってくるわけだからある程度の品行はあるだろう、それでも犯罪は起こるだろうからそうしたら捕まえるようにするしかないか?
人が増えると面倒事が増えるな。そりゃ当たり前だけど、早く俺無しでも街が回るようになるといいな。そうすれば娘たちと自由に旅ができるし、家に引きこもってゲーム三昧も悪くない! もふもふに囲まれながらの読書だって、夢が広がるぜ!
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
ブクマや評価をしていただけると幸いです。
これからもよろしくお願いします。