1929話 一息
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調味料などは無理でも、味付けした食材をうっ乱せたりできるのは助かるな。味付けというか、下味だったり、冷凍食品で調味液が入っている物だと生み出せるようで、料理する方向でも問題なさそうだ。
「食事は問題ないな。水はロジーとバザールが魔法で何とでもできる。拠点は、バザールが今作っている……あれ? 俺って戦闘以外価値なくね?」
事実に気付いてしまい、両手両膝をついてがっくりと項垂れてしまう。
ウルは、何もできなくて問題ない。あの子は守られることが仕事だ。そして守るのは俺の仕事。こうなると、ただ身体能力が高いだけの人間になってしまう。
「シュウ様、何もできないわけではないです! リーダーとして、しっかりと指揮をとっているじゃないですか! 能力が高い人間が集まっても、指揮する人がいなければ烏合の衆にだってなるんですよ!」
ライガにカツを入れられてしまった。
何もできないからって、卑屈になっていても仕方がない。自分にできることを、するしかないよな。
「主殿、簡易的にでござるが、リビングと個人の部屋とお風呂場にトイレ、キッチン、食料庫を作ったでござる。案内するから、来てほしいでござるよ」
そう言って連れていかれた。
初めて見た感想は……なんだこれ? だった。
豆腐建築だけど、しっかりと壁や床、天井が固められている。それは良いんだよ、でもさこの状況はちょっとおかしくない? 誰も魔法を使っていないのに、部屋が明るい訳さ。
石英か何かを使ったガラスモドキが、いろんなところに埋め込まれている。その中で炎がユラユラ揺らいでいるのだ。どうやっているのか、マジで意味が分からん。各部屋も同じような感じだ。
キッチンには、造りは荒いが魔法で固めたような鉄板が置いてあり、石で作られたお皿なども置いてある。箸は金属製みたいだな……どうやって作ったんだ? 土魔法で成形したのか? 試したことないから分からないけど、出来そうだな。
キッチンでは気付かなかったのだが、お風呂場で発見した。蛇口のようなものがあるのだ……どういうことか、訳が分からなくなってきた。
ただ、説明を聞いたら納得できた。
バザールは、ノーライフキングとしてのスキルを使えるようで、影のような所に収納していたリッチたちを、見えないように各所に配置して、光や水道、コンロなどの代わりにしたそうだ。声で指示が出せる便利者だ。
ちなみに水道は、水とお湯(45度ほど)の2つが出せるようになっている。繋がっている先で、リッチたちが水を出したり温度調節をしているんだってさ。食料庫は巨大冷蔵庫の様な形だった。待機していることが苦にならない、アンデッドを酷使した拠点である。
空調もリッチたちが、風魔法を使い管理している。外に繋げる管を遠くまで配置するのが、少し大変だったとか言ってたな。どうしても匂いが出てしまうので、拠点の近くではなく少し離れた位置に匂いを捨てるんだとさ。
空気の出ていく管は、折りたたんだりして距離を長くしているようだ。簡易的に作った炭や、大き目の砂利などを何層にも詰め、出来る限り消臭するシステムを作ったらしい。
よくこんな短時間で……と思ったが、細かい部分はバザールがやったが、大まかなところはリッチに直接指示して、作ったようだ。バザールがいつになく頼れる存在だ!
「とりあえず、飯にするか。ライガ、今から言うものを生み出してくれ」
そう言って指示していく。とりあえず、ガッツリ食べたいので、レトルトごはんを出してもらう。ライガがいるから、多少多くても問題ないだろう。
次に、下味をつけた焼き肉に使う肉を出してもらい、いろんな野菜も一緒だ。インスタントの汁ものを準備しようかと思ったら、インスタント系はダメだったようだ。でもレトルトは問題なかったみたいで、いくつか種類を出してくれた。
メインが焼き肉なので、スープは卵スープかね。中華風のレトルトスープに、卵を溶き入れれば完成だな。
鉄板では野菜たっぷりの焼き肉、隣の鍋では中華風卵スープ、その隣でレトルトごはんを湯煎している。湯煎に関しては、バザールに新しく作ってもらっている。鍋だと湯煎がしにくかったからな!
簡単に作った食事は、そこそこ美味かったと思う。20人前以上は作ったけど、全てライガが食べてくれた。食料を生み出せるとはいっても、売られている状態で生み出すので、お弁当は冷めている物しか生み出せないんだとさ。
初めのうちはそれでも食べてたけど、最近はレトルトで温めるだけの物や、缶詰が中心なんだとか。お米はおにぎりを生み出してるんだとさ。コンビニやスーパーの中で、気に入ったいくつかのおにぎりと一緒に食べるみたいだ。
おにぎりを包んでいるフィルムで、半分に裂き三角のおにぎりの底辺を引っ張るタイプは、あまり好きではないようだ。余計な手間がかかるから、開けて食べれるタイプが好きなようだ。炊き込み系や具が沢山入っているのも好きみたいだ。手軽というポイントが重要なんだろうな。
ライガには悪いが、少し食料を出してくれ。ロジー用にお菓子と、ウル用に食材を頼む。あ、おにぎりもいくつか出して、倉庫の中に置いといて。
「バザール、お前がリンクできるアンデッドで、俺に付けれる魔物はいるか?」
「戦闘は主殿が出してくれるでござるなら、サイレントアサシンを4000までならつけれるでござる」
こいつらは特にすることが無いので、バザールが大半を回収していたらしい。暗部にはシャドウがいるので、影の中で眠らせているのだとか。放置しても変わらないので、入れたままだったんだとさ。今回はそれに助けられたな。
「これから夜になるから、バザールは守りでここに残って俺との連絡役な。俺に100ほどつけておいてくれ、残りは近くに解き放って夜の警戒に当たらせてくれ」
よし、これで問題ないだろう。
「あ、主殿。残りのサイレントアサシンは、適当に散らばらせて他の人間の影に潜らせておいてはどうでござるか? 某なら、大体の距離と方向を把握できるでござるよ」
ふむ、影の中を高速で移動するサイレントアサシンなら、夜に敵を探すのには向いているな。アンデッドだから、近くに生者がいれば分かるみたいだしな。アンデッドっぽくないけど、アンデッドみたいだし問題ないだろう。
バザールの意見を採用するけど、守りの方は大丈夫か? あ~、S級スケルトンもいるのね。木の上にでも配置しておいてくれ。じゃぁ、連絡役を頼んだぞ。
よし、ライガ。綾乃を探すから、お前の鼻に期待するぞ。
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