1925話 おまえか
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3人目と言っていいのか、そろそろ視認できる距離に……いや、若干上に気配がある気がする。20メートル先の木の上に、索敵スキルに何かが引っかかっている。
近くの木に登り、その正体を確認しよう。
幹に指を食いこませ登っていく。そろそろ同じ高さになるのだが、ほぼ木の天辺だ。こんなところにいるなんて、どんな奴だよ……肉体活性も問題なく使えるので、視力を強化して正体を探る。
うん、知ってる奴だった。
「おい、ロジー! 起きてたらこっちこい」
俺が、そこで寝ていたハイピクシーのロジーに声をかけると、涎をすする音と同時に起きたようだ。
「ほえ? おー、シュウじゃない! ちょっと聞いてもいい? ここって何なの、寝て目が覚めたらここにいたんだけど! 魔法は使えるのに、ダンジョンマスターのスキルは使えなくて、困ってるのよ!」
「ん? お前は、魔法が使えるのか? 俺は使えなかったんだけど……」
「あんたは使えるでしょ! それよりここは何なのさ! 甘いお菓子を食べたいのに、全然手に入らないんだもん! 何匹か動物は見たけど、あいつらじゃ私の腹は膨れないのよ!」
うがー、と言わんばかりに、俺に噛み付いてギャーギャー騒ぎだす。とりあえず、俺の持っている情報をこいつに教えて共有する。共有するが、こいつは当然のごとく、
「だから何なのさ」
分かってくれない。
「とりあえず、しばらく休んでていいから……ポーチの上で良ければ、座っておくか? どうせ、自分で飛ぶのはだるいとか言い出すんだろ?」
「ん~座ってもいいけど、落とされそうで嫌なのよね。可愛い妖精なのに雑に扱いそうだし」
「つってもな、俺とお前が来てるってことは、他にも同じ世界からきてる可能性があるわけで、バザールと綾乃、ウルがいる可能性があるんだよ」
「なんで、ウルちゃんが来てるのさ? どっちも持ってないでしょ?」
おっと、こいつさっきの話理解しているみたいだな。
「つい最近、ウルはダンジョンマスターのスキルを手に入れてるんだよ。だから、もしこっちに来ているとしたら、絶対に見つけ出さないといけないんだ」
「おう、その目で私を見るのを止めてくれないかな……ガチすぎて怖い」
ヤバい目をして、ロジーを見ていたようだ。
「すまんすまん。ってか、ロジーは魔法も使えて飛べるんだよな? ならさ、風魔法で人を探したりできないか?」
「ん~できても、500メートルくらいなんだけど、それでもいい?」
「えー、俺の気配察知より低いじゃん。じゃぁ、ちょっと高く飛んで、人がいそうなところとか探せないか?」
「ちょっと行ってくるね~」
気の抜けた声で飛んでいった。俺が高い木から見たからといって、遠くまで見渡せるわけではない。森が途切れていても、丘などが見えなければ何があるかもわからないのだ。ただ、山は見えているので分かるが、そこも森みたいになっているので、ほとんど情報は得られない。
「見てきたよ~、向こうの方に一応丘みたいなのがあったわ。それと、反対側になるけど森の中に細い空間みたいなのがあったわね。後は、森もりモリ! 鳥は確認できたわね」
俺が移動してきた方向から見て、右側に丘、左側に謎の細い空間か……そこが川か? この世界の生物が地球や元の世界と同じなら、水源から遠く離れて生活することは無いはず。でも、山があるなら湧水も沸いているところがあるか?
おそらく、丘の見える方が生物が少ないと思うが、丘の方に水源がなければ困ったことになる……食料調達も考えると、森の中がいいのか? いや、その前に可能な限り知り合いを探すべきだな。
「ロジー、この世界にウル、綾乃、バザールが来ている可能性が高い。全力で探したいから、協力してもらっていいか?」
「もちろんいいわよ! これって、あれでしょ! サバイバルゲーム!」
「お前さんの想像しているサバイバルゲームは、エアガンとかで打ち合う奴だろ。だから違うけど、本当の意味でサバイバルなゲームという意味なら間違いではないな」
とりあえず、ヤル気はあるみたいだから問題ないか?
「移動するけど、懐に入っておくか?」
「飛んで追いかけるより楽だもんね。頼んだわよ」
「っとその前に、お前魔法使えるんだよな? 水は出せるのか? それは助かるな。水の問題は確保できたから……奪った食料で、俺たちはしばらく何とかなるな。行くから、懐に入ってくれ」
ロジーは、問題なく魔法が使える……俺は使えない、何故だ! こいつと早めに合流出来て助かったな。
問題は、どのくらいの範囲に飛ばされたかだよな……狭い範囲に全員飛ばされているならいいんだけど、例えば……四国くらいの広さで飛ばされていたら、探すのがかなり大変になる。
神たちが何でこんなことをしているのか? そして終了条件はあるのか? どうせあいつらのことだから、中継を見て騒いでいるんだろうな。本当に死人が出るのか? 分からないことだらけだな。
細い空間は、やはり川だった。となると、川沿いに移動していけば、人の反応があるかな?
「ロジー、進むなら、川上と川下どっちがいい?」
「ん~、ちょっと待ってて」
そう言うと、また飛んで上空まで確認に行った。
「どっちも変わらない気はするけど、川上が気になるわね」
「気になるってどういうことだ?」
「女のカンよ!」
……こいつが女のカンね。まぁ2択なんだし、どっちが当たりかも分からないんだから、こいつのカンにかけてみるか。
川から少し離れた位置で木の上に登ってから、枝を伝って川上を目指す。俺は気配を察知しながら、ロジーにもお願いして魔法で気配を探ってもらっている。
5キロメートルほど移動して、やっと反応があった。
「2人いるよな?」
「そうね、気配は2つあるわね」
さて困った、こいつらは組んでいるのか、どちらかが従わされているのか……確認するべきかね。
ピョンピョンと近付いていき、視認できる範囲で止まる。
「ん~、どうやら、鑑定できないやつが鑑定できる方を扱き使っている感じかな」
ロジーは鑑定は出来ないが、扱き使われているように見えているようだ。鑑定できない方は、おそらく地球からの人間だと思うけど、鑑定できる方は勇者の称号を持っていたが、レベルが低い……100ほどしかない。最近召喚されたのかね?
両方とも男か……鑑定できない方の話を聞いてみたいところだな。
「ロジー、お前は飛んで木の上に隠れてろ。もし何かあったら、魔法で援護してくれ」
ロジーを懐から出して、俺は2人に接近する。
マジか! 気配を消して移動していたのに、鑑定できない方に見つかった。落下中に攻撃されたら不利になるから、降りてから接近するかな。
木の上から降りて、着地すると同時に3個ほど石を回収する。投擲武器としては、使い勝手がいいからな。
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