1924話 最悪の事態?
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女の方には、男の服で作った猿轡ようなものを嚙ませている。なんとなく、この女の方がヤバいと感じたからだ。
「お前、どこから来た?」
「…………」
「答えたくないと。じゃぁいいわ、喋らないなら生かしておく価値なんてないからな。せいぜい苦しんで死ぬように、ナイフを刺しといてやるよ」
そう言って、先ほど抜いたナイフを取り出して、体に突き刺そうとすると、
「ま、待て! 捕虜に対する扱い方がおかしい! 人道的に扱うことを希望する」
「捕虜? 誰が? 俺たちは戦争をしているわけじゃないぞ? 野盗2人が殺し合ってたから、漁夫の利を得るために介入しただけだしな。奴隷になればとか、馬車馬のようにとか言ってたんだから、ただの喧嘩ではなく生存をかけた野盗同士の殺し合いだったんだろうな。だから、第三者が介入しても問題ない」
「野盗だと!? 国軍である私の、どこが野盗なんだ!」
「国軍ね~、アジア系の顔で国軍か……日本と中国で無いのは確かだな。そして、女性を奴隷と扱うような軍人は……あの国かね? そもそも、あの国の人間は国軍って言うのか? 分からん。でもさ、嘘は良くないと思うよ。お前、今は軍人じゃないだろ?」
俺には、こいつが軍人で無い事には確信があった。おそらくだが、女性を性奴隷として扱おうとしたのだろう。こいつのステータスを見れば、一目瞭然だからな。国のせいなのか、こいつのいた世界のせいなのかは知らないけどな。
俺の鑑定で、こいつのステータスが見れるのだ。レベルは予想通り200ちょい、スキルは色々がLv10だった。あの動きでLv10はおかしい。スキルだけ覚えて、強引にLvをあげた典型的なタイプだと思う。
そして、こいつには普通に罰賞がついている。強姦魔に殺人鬼、両方とも上位の罰賞である。
これらを踏まえて、こいつはダンジョンマスターだろうと言うことだ。
正直、こいつからはこれだけで十分なんだけどな。問題は、女性の方なのだ。こっちはいくら鑑定しても、文字化けして情報が読み取れないのだ。なんとなくだが、俺のいた世界のシステムと別のシステムから来たんじゃないかという考えだ。
木が文字化けしているということは、俺やこの男がこの世界にとってイレギュラーな可能性も高い。でも、夢で何でこんな風になるのかは、本当に意味が分からない。俺の夢なら、全部調べられるようにしておけよ!
「ふざけるな! 話を逸らして、自分のしていることを誤魔化すな!」
「別にふざけているつもりも、話を逸らしているつもりもないよ。お前、ダンジョンマスターだろ? うん、その反応で良く分かった。お前はもういいや」
俺と同じ状況だと思われるこいつは、大した情報を持っていないのでリスクを下げる意味でも、サクッと殺しておきましょう。頸椎をへし折った。
『ピロリン 初めての殺人』
ん? 罰賞が付いたのか? 自分のステータスを鑑定してみるが、罰賞が付いた様子はない。どういうことだ? わからん! 女の方を尋問しよう。
「お前はどこの人間だ?」
猿轡を外して質問すると、いきなり舌を出して嚙み切ろうとした。慌てて指を指し込み、自殺は何とか防いだ。もしスパイみたいな人だったら、奥歯に毒物を隠したりするんかね?
女は、俺の指を噛み切ろうとするが、やはりステータスは有効なようで、この女の噛みつきでは、皮膚に痕を少しつけるのがやっとのようだ。
顔面を左手で地面に押し付ける。噛まれている右手の中指で強引に口を開く。奥歯を見てみるが、普通の歯に見える。更に強引に開いて、親指と人差し指中に突っ込み慎重に揺すってみる。そうすると、下の右奥歯が抜けた。左は頑張っても抜けそうになかった。
ふむ、これが毒だったとして、舌を噛んで自殺する前に、こっちの毒を使わなかったのだろう? 分からんことは気にしても無駄か。魔法が使えれば聞き出すのは簡単だったのだが、魔法は使えないからな……
「もう一度聞く。お前はどこの人間だ?」
「…………」
答える気はないようだ。しょうがない。ここで拷問をしたところで、吐かせられるとも限らんし、油断すればすぐに舌を噛み切ろうとするから、時間がもったいない……じゃぁ、こいつが死んでも問題ないよな?
魔法は使えないけど、スキルは有効なのだ。じゃぁ、威圧に殺気を乗せて、心を殺せたりしないかね? 実験してみよう。
そうすると、白目をむいて失禁して気絶してしまった。叩いたりして、何とか気を取り戻させたが、ショックが強かったのか話が通じなくなってしまった。困った……20分ほど頑張って、やっと聞き出せたのが、北欧のエージェントで、神に導かれてこの地に来た、という内容だった。
その予想はしてなかった。現実なのかそうでないのかは分からないが、神が関わっている遊戯盤の上ということだ。そして、その遊戯盤の上に、地球からも参戦している人間がいるってことだな。
一番の問題が、ダンジョンマスターが2人はこの世界に呼ばれているということは、それ以上呼ばれている可能性もあると言うことだ。スキルとして、しっかり持っている俺やバザールはまだいい、何かしらの理由で手に入れた、ウルとロジーも来ている可能性があると言うことが問題だ。
バザールは、問題ない。あいつは、ポンコツのようだけど、強いからな。スキルだけでも十分に強い。ロジーは、飛んで逃げて木の上で休んでれば問題ない。でも、ウルだけはそうじゃない。とにかく急いで探さねば……今度ダンジョンマスターを見かけたら、国の名前だけ聞いておくか。
女に止めを刺してから、全力で移動を開始する。ウルがいなければいないでかまわないのだ。でも、探さないままいることは出来ない。意識を深く沈めて、集中する。周りの音が聞こえなくなる。俺の感覚に3人の気配が引っかかる。一番遠いのが、1キロメートルいかない位か?
森を駆け抜け、1人目を視界に入れる。こいつは文字化け、なら手加減無しで殺す。すれ違いざまに、女が使っていたナイフで首を一閃。次の気配へ。
女の装備は便利だったので、回収しておいたのだ。
2人目は、ダンジョンマスターなのか、ステータスが読み取れる……クソ! こいつ、ダンジョンマスターじゃねえ。勇者の称号を持ってやがる! そうなると、綾乃も来ている可能性があるのか?
正面から襲うが、すぐ手前で特殊なステップで後ろに回り込み、ナイフを喉に突き付けて組み伏せる。
「お前が知っている大きな国の名前は?」
地球の名前を出してきたが、勇者の称号を持っているのは分かっていると言うと、諦めたように俺の知っている三大国の名前を言った。少なくとも、同じ世界からも何人か来ているのは確定。俺たちの世界だけなのか、他の世界も混ざっているのか……
止めを刺してから、3人目へ移動する。でも、こいつ気配が小さいんだよな……人間なのか? この世界の生物か?
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