1923話 第一・第二人型生物発見
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最低でも、目が覚めるまでは死ぬわけにはいかないだろう。この世界の死が、リアルの死に直結していたら困る。転移させられる前は、ファンタジーで済まされていた異世界転移だが、自分の身で体験してしまったのだ。これが、VRのデスゲームと同じだった場合、死ぬわけにはいかない。
本当に状況が分からん……何かしらの生物を発見するまでは、慎重に動くべきだろう。その生物によっては、動き方を変えることができるはずだ。大胆に行けるのか、それともさらに慎重に行くべきか……
発見されにくい木の上を伝って、移動するのがいいかな。壊れ性能の身体能力を存分に生かした移動方法がいい気がする。俺が乗っても大丈夫な枝は、パッと見た感じ最大でも10メートルは離れていないと思う。
これなら、余裕で飛び移れる。それに頑丈で手にフィットしている手袋をつけているのだ、何も問題はないだろう。
地面を歩いている時よりは警戒が甘くなるけど、発見されにくいことを考えれば、どっこいどっこいだと思う。よし、決めた。行こう!
慎重に木の枝を伝って移動していく。助走をつけなくても10メートルくらいなら簡単に跳べるため、予想より良いペースで進めていると思う。たまに高い木を見つけては、上まで登って辺りを確認する……ということを繰り返した。
移動を始めて、30分くらいだろうか? 俺の感覚が何かを捕らえた。おそらく生物だと思う。距離にすると……まだ300メートルは離れているかな? 慎重に近付いていこう。
50メートルほどになると、やっとその姿を確認できた。索敵スキルも効いているみたいなので、間違いないだろう。発見したのは、人間だ。しかも、俺と同じ地球の人間の可能性が高い。
見た目は、中国や韓国系の顔だろう。外人から見れば、日本も中国も韓国も大して変わらないと言う意見があるらしいが、当事国から見れば大分違うと思う。それでも、っぽいだけであって、正解ではないことも多いんだけどね。ハーフだって、クオーターだって増えているんだから、系統として別けている感じかな。
動きは……素人ではないな。イメージ的に軍人っぽい感じがする。しっかり回りを警戒しながら、死角をできるだけ減らして動いている気がする。あの動きが全力とは言わないが、良くてうちの小隊長クラスの動きかな。レベルで言うと、200は超えていないだろう。
そんな風に感じる動きだ。あれが欺瞞工作だとすれば、かなり厄介だが……相手が分かっていないのに、欺瞞工作をする必要もないだろう。もう少し様子を見るか。
進行方向が同じだったため、ちょっと追いつくのに時間はかかったが、誤差の範囲だろう。索敵スキルを持っていたら困るので、100メートルほど離れた位置から追跡する。
おや? 20分ほど追跡していると、もう1つ反応が現れた。同じような反応なので、こっちも人間かな? 一応もう少し近付いておくか。
次に現れたのは、北欧系の女性かね? はっきりとは見えないが、金髪で腰くらいまである。でもさ、身に着けている物が、スパイ映画の女性が付けているような、バトルコスチュームみたいなんだよね。
さて困った。2人はお互いの主張をぶつけている。それだけならいいのだが、男は奴隷になるなら殺さないでやる、ならないならしばらく使ってから殺すだってさ。それに対して女性は、馬車馬のように働くなら生かしてやるだってさ。
このやり取りは、何なんだろうな? 多分だけど、女性の方が圧倒的に強いと思う。ステータスとか関係なく、体の動かし方がなんかヤバい。接近戦に強いタイプのエージェントみたいな感じがしなくもない。
みんなナイフは持っているようだな。女性の方は、投げナイフも持っている気がする。かまえる間もなく、両者が距離を詰めた。
両者、ナイフの攻撃をナイフで受け止め、空いた手で殴ったりしている。蹴りも合わさり、映画のワンシーンみたいだな。ステータスは男の方が高いが、女性の方が圧倒的に技量が上だな。女性の攻撃に押されて男性がひいてしまう。
大きくバックステップをしたのを見逃さず、投げナイフを投擲する。同時に3本も投げやがった! 両太ももと右肩に1本ずつ刺さっている。太もものナイフは、筋肉繊維を切断するように刃が入っていた。
男は命乞いをしているが、更に4本の投げナイフを投げられ、両腕に刺さった。こりゃ決まったな。
できれば、両方から情報を収集しておきたいんだが……このまま女を取り押さえれば、問題ないかな?
気配を消したまま、両者の上まで来ていた俺は、自然落下で女性の上に落ちる。気配ではなく、音で違和感に気付いたのだろう、慌てて上を見上げると同時にナイフを投げてきた。
確かに速く鋭い投擲だが、俺には残念ながら見えている。投げられた2本のナイフを右手でキャッチすると、女性が驚いた表情をして動きが止まった。命を懸けている時に、イレギュラーが発生しても動きを止めちゃダメだろう。
俺と女性の距離がゼロになる前に我に返ったようで、左手に持ったままのナイフを俺に向かって突きだしてきた。
「残念だけど、その対応は20点かな」
そんなことを口走りながら、突き出された左手首を俺の左手でつかみ、捻りをくわえ相手の体勢を崩し、右足で女性の頭を前につんのめるように蹴飛ばす。そのまま女性を地面にたたきつけるように着地する。
体の上に着地をしたら殺してしまう可能性があったので、強引に地面にたたきつけるような形になった。左腕は伸びきったままの状態で、顔面から地面に叩きつけられた体勢なので、肩の関節が外れてしまっている。
普通ならこれでもかなり痛いはずなのに、悲鳴の一つもないんだな……っと、動かれたら困るので、右腕の方の関節も外しておく。俺の目的は、2人から情報を搾り取るつもりなのだが、死なれたら困るので、男の方の止血をしたいのだ。
あの状態でも動きそうな女性を見ながら、男の方の止血をしていく。一息ついたところで、男が急に動き出して女性に向かってナイフを突き立てようとしたので、止血したばかりの太ももを蹴飛ばした。
「邪魔するな! こいつ、殺してやる!」
「邪魔するなとか言うが、お前もこいつも俺の戦利品だからな。勝手はさせねえよ。とりあえずお前は、身に着けている危険物は全部没収だな。手はベルトで縛っておくか。おい、女。お前も動くなよ」
男は後ろ手にベルトで縛り、女はボディースーツみたいなのの下は裸だったので、ベストやポーチ、レッグポーチを外しておく。
さて、面白くも無いけど、周囲に注意しながら尋問を始めますかね。
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