1912話 予定変更
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「ふぃ~、何とか倒せたな。思ったより手こずったわ」
「主殿、お疲れでござる。手も足も出なかった綾乃殿よりは、マシでござろう」
顎の骨をカタカタと鳴らしながら笑っている。
「ウルちゃんより条件が悪かったと言っても、ウルちゃんより苦戦したわね。そこんところどうなの? 娘より手こずった、最強のダンジョンマスターさん」
「煽っているように聞こえるけど、まったく煽られていない気がするんだが……ウルが、娘が優秀だっただけだろ? 可愛いうえに、親より対応能力が高いんだぞ。誇るところじゃないか?」
「親バカの主殿は、娘と比べたところで負けていたとしても、悔しいとは思わんでござろう。綾乃殿、煽るなら違う方面からにするでござるよ」
「悔しいとは思うが、状況に対応して自分の最善を選択できた、ウルはやっぱりすごいと思うぞ。俺もウルのように、再生を阻害して一気に削り切るくらいしか、娘たちが戦っている時は思いつかなかったしな。ハンデ無しで、ポンポン飛ばされてた綾乃は、もう少し訓練するべきじゃね?」
「時間の無駄でござろう。何しても無駄なことがあるでござるよ。綾乃殿の運動音痴というでござるが、生身で戦うセンスが皆無なのは、スキルをもってしても改善できない呪いのようなものでござる。今回改めてそう感じたでござるよ」
少し煽るつもりでいただけなのに、綾乃は反対にボコボコに言われてへこんでるな。
「ってかさ、俺たちが苦戦しているのに、トロールと同レベル帯でこいつを倒せる奴いんのか?」
「そう言われると、不思議でござるな。某たちが始めて遭遇した魔物でござるから、生息数が少ないのでござらんか? 遭遇したら、逃げの一手とかそんな感じでござるかね?」
首をひねりながら、娘たちが元気よく暴れまわっているであろう部屋に向かって、俺たちは戻っていく。
部屋について驚いたことに、四隅に分断して嫁たちが戦ってたのだ。自分たちとトロールが、二対一になるように別れて何やら実験を行っていた。娘たちは部屋の中心で、従魔たちに守られながらお母さんたちの戦闘を見学している。
みんなもトロールの強さが気になって、戦闘しているってところかな? 部屋の中心で見学していた娘たちと合流して、どんな状況なのかを確認すると、やはり俺と同じように戦ってみたかったようで、ステータスを制限して戦っているみたいだ。
ミリーは戦闘に参加していなかったので、向こうの戦闘の事について話をしてみた。
「やっぱり制限していると、シュウ君でも苦戦したんだね。制限しても、レベルにして200位あれば簡単に倒せるんだけど、150以下になるとかなり苦戦するわね。周りのオークとかがジェネラルや強化種で、Lvが150以上あることを考えると、トロールはただLvが低いんじゃなくて、再生能力にコストを取られてたりしないかな?」
む? この階の魔物って、トロール以外Lv高いじゃん! 20階の中ボスを倒した後、Lv確認したのが自分の戦ったトロールだけだったことに今気付いた。もしかして、トロールってかなり優秀なモンスターなのか?
それに、ミリーの話している内容にも一理ある気がするな。Lv100位のトロールと、Lv150位のオークジェネラルが同程度の強さなのかもな。Lv50分が再生能力で補われている? みたいな感じかね。
シェリルとネルが何度も浸透勁を打ち込んでいるが、あまり効いた様子がないんだよな。この結果はなんとなく予想していたので、俺は驚きはしなかったが、浸透勁が効かない理由が良く分かっていないので、不思議な現象に見えるんだよな。
防御力無視で相手の内部から破壊する攻撃……の印象の強い浸透勁だが、何故か効かない魔物も何匹かいるんだよな。その代表格がスライム、ニコたちもそうだけど、アメーバ状のグロテスクな方も、効かないんだよね。後は、中が空洞のリビングアーマー見いたいな魔物にも、ほとんど効果がなかったな。
いくら太っているとはいえ、分厚い脂肪で浸透勁が防げるとは思わないし、体が大きくてトロールほどではないが、太っているオークキングにだって浸透勁は効くのだ。それを考えると、トロールに効果がないのは良く分からん。
妻たちも色々検証しているが、良く分からないのが現状だと言っていた。
しばらくしてトロールは倒されるが、戦っていた妻たちは、何かしっくり来ていない様子だな。その気持ちは分かるけど、そろそろ進まないかね?
「4人とも集まって、ちょっとお話があるの。この階から出てきたトロールは、少し特殊だから4人の修業は、今回はここまでにするね。ステータスを落とした状態での戦闘は終わりにして、武器の制限もなくそう。制限したばかりなのに、ごめんね」
ミリーが、ウルたちに謝っている。思っている以上に、トロールたちを危険だと判断しての決断みたいだな。無理に低いステータスで戦う必要も、今は無いからな。
戦えなくなると勘違いしたのか、ミーシャ・スミレ・ブルムがぶーぶー言い始めたがそれは勘違いで、制限する腕輪を取った状態で戦っていいと言われると、途端に喜び出した。そして、なんか良く分からない謎の踊りを始めた……なんだそれ?
制限を解除して装備を整えたら、全力での攻略が始まる。マップ先生も解禁され、ウルが指揮をとりながら俺たちは進んでいく。レベルが600を超えていて、本来の装備に変えたウルたちは、トロールに苦戦するような様子もなく、手足を切り落として首を簡単にはねていた。
うん、つよいね。同じレベル帯の綾乃が嘘のように弱いのは、本当に不思議で仕方がないわ。
途中に休憩をはさんだが、攻略済みのマップ先生を使っての最短ルートで移動したので、夕食前には最下層の30階へ到着してしまう。
夕食は、ゲートで戻って下の子たちと一緒に食べることになっているので、ウルたちも気合が入っているな。マップ先生で分かってはいるけど、ボス部屋にいたのは、キングトロールとトロールの強化種だった。
トロールには、ジェネラルがいないのかね? それに強化種って言うけど、ヒーラーはいる意味あんのか? ナイトって言って盾持ってるけど使えんのか? 魔法使いと言って、持っている武器が杖じゃなくて、トロールと同じ棍棒なんだけど!
いろんなところに突っ込み要素がある。そして一番の疑問点は、キングだ。ゴブリンやオークは後ろにキングが付くのに、お前は何で前にキングが付くんだ?
「シュウ、それって今、どうでもよくない?」
綾乃に突っ込まれた。確かにどうでもいいけど、気になるじゃんか!
こんなことをしている間にも、ウルが指揮をとってミーシャたち3人と、従魔たちを使って各個撃破をしている。14匹いたトロールたちは、20分後にはドロップに変わっていた。
最後のウルの一撃は、良かったな。十分に圧縮した魔力を使って、ロックランスに回転を加え急所を貫いてキングトロールを倒したのだ。かっこよかったぜ!
コアルームへ移動して掌握した。色々調べるのは明日にして、ゲートを設置してから家に帰ることにした。悟った顔をしていたシンラでも、かまってやるかな。
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