1911話 ナントカ……
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「んじゃ、本格的に戦闘を開始しますかね!」
初見の魔物であれば、攻撃パターンを観察しながら倒すのだが、今回はウルたちが戦っている様子を見ているので、大体の攻撃パターンが頭の中に入っている。それに太りすぎているため、攻撃のヴァリエーションが少ない。一応、出来そうなことも頭に入れてはいる。
初めに試してみたいことがあるので、剣と盾のオーソドックスな壁前衛スタイルで戦闘にはいる。
トロールの持っている武器は、石でできた棍棒ってところだろうか。握りの部分は細く、打撃に使う部分は太くなっている。細いと言っても、余裕で俺の太ももより太い握りの部分……あいつの手ってでかいな。対峙して初めて気付いたわ。
横から薙ぐように棍棒を使い、攻撃してくるトロール。棍棒の下から上に盾で弾くように、シールドバッシュを行う。普通に弾くのではなくスキルを使ったのかと言えば、ステータスが同じとはいえ向こうの武器は重量級なのだ。スキル無しでは弾けるとは思っていない。
重い武器を自在に操っているわけではなく、ただ単に振り回しているだd毛なので、何とか弾くことができた。でも、完璧に弾けたわけではなく、多少ダメージを負ってしまったのだ。スキル無しで受けたら、やばかったかもしれないな。
受け流され体勢を崩したトロールに向かって踏み込み、膝を上段から斬りつける。
剣術スキルが10でも、武器が相手のタフさに負けていると、大して深く斬りつけられないんだな。体勢を崩していたトロールは、いつの間にか上段から振り下ろすように、棍棒を振りかぶっていた。
サイドステップで外側に回り込み攻撃範囲から逃れ、先ほど攻撃した膝の裏にもう一度突き入れる。
斬りつけた時より深く攻撃できたが、それでも俺が想定したより傷が浅かった。距離を取り、トロールと向き合う。
「おぉ、マジですげえ再生力だな。普通なら歩けなくなるのに、全然問題なさそうじゃん! ウルも良く倒し方を考えたもんだな」
「シュウ、早く倒しなよ」
「何もできなかった綾乃殿には、言われたくないセリフだと思うでござる」
バザールが発言した後に、バシッと音が聞こえたので綾乃に殴られたのだろう。
武器を持ち換えて、今度は刀でござる……なんちって。
武器を収めたままトロールの攻撃を回避する。薙ぎ払い、振り下ろし、腕を振り回したり、掴みかかったり、そのくらいしか攻撃方法が無いので、攻撃範囲から逃れるように動いている。それでも、薙ぎ払いは正直避けるのが面倒だ。
攻撃範囲が広いのでバックステップで避けようにも、今のステータスでは範囲から出れないので、屈んで避けるか、跳んで避けるか、懐に入るか、それくらいしか避ける方法がない。懐に入ると今度は、こっちが攻撃できないと言う情けない状況だ。
反撃されるのが分かっているのか、振り下ろし攻撃がなく薙ぎ払いか素手による攻撃が中心だ。
石の棍棒とまともに打ち合えば確実に刀が折れる。それくらいに武器の丈夫さに差があるので、狙うなら素手による攻撃時だな。
しばらく回避に専念していると、絶好のチャンスが来た。素手による振り回し攻撃だ!
攻撃は、交わる一瞬。右から迫ってくる拳に、下から抜刀術による刀の加速を用いた手首への攻撃だ。
完璧に手首を捕らえた! 次の瞬間、根元から刀が折れた。MA・JI・DE?
理由は分からないが、武器が壊れ攻撃が今なお迫ってきている。踏み込んで抜刀術を使ったので、今更バックステップで攻撃の威力を半減させることも出来ない……せめてできることと言えば、腕をクロスにして威力をできるだけ軽減させることだ。
全身に走る衝撃と浮遊感、壁まではまだ距離があったはず。とっさにエコーを使い、周囲の状況を確認する。
壁に到達する前に地面に落ちたので、受け身を取り立ち上がる。
「痛え。拳がデカくて助かったわ……」
「ウルちゃんより情けない姿を見せるな~」
綾乃が俺の事を煽っているのか、そんなことを言っている。圧倒的有利な状況で手も足も出なかった、あいつにだけは言われたくないんだけどな。でも確かに、ウルはほとんどダメージをくらわずに倒したのに、俺の今の姿は情けないな……
正直舐めてたな。いくらダメージをくらっても、死ぬことは無いからと油断していた。子どもたちは、攻撃をくらわないように立ち回っていた。はぁ、情けないな。
真面目にやっていたつもりではあるが、油断をしていたのも間違いない。本気で倒すことに集中しよう。
ウルのやった倒し方で倒すのは、どう考えても違うよな。違う方法で倒すのが、ここではセオリーだと思う。だけど、これ以上の油断はしない……再生力が高いから、一撃必殺のつもりでやる必要があるか。
俺のメインウェポンである薙刀を取り出す。中心を持ちクルクルと回すように振り回し、柄を腰後ろに回し大薙刀の重心より刃に近い部分を右手で持つ。半身になって左手が前に突き出すような体勢を取る。
ミスった。この体勢だと、こいつに対して有効な攻撃方法が思い付かない。もう一度クルクルと大薙刀を回し、刃は地面すれすれまで前に出し、左手は重心付近へ添え、右手は顔の横付近で柄を握っている。左足は前に出し、右足は少し屈伸気味。体の重心は右足側へ……
狙うのは、武器による薙ぎ払いを上に弾き、トロールが体勢を崩している間に、渾身の突きで心臓を一刺しだ。さすがに再生力が高くても、Lvが低いので致命傷になるはず。
距離を図りながら、薙ぎ払いを待つとすぐにチャンスが来た。薙ぎ払われる棍棒の下部に大薙刀を添え、梃子の原理を利用して跳ね上げる。バッシュで弾いたときより、体勢を崩した。
付与魔法で体に力をあげる火を、武器にも切れ味をあげる火を……一撃で貫く!
無防備になっているトロールの右わき腹から、心臓付近へ全体重も載せて渾身の一突きをはなつ。
50センチメートルほどある刃は全部体に埋まり、2メートルほどある柄も3分の1ほど埋まっている。それでもトロールを貫通しなかったが、心臓は貫けたようですぐにドロップに変わった。
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