1910話 ポンコツ綾乃
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「こういった、再生力の高い魔物って、戦ったことないから評価がしにくいけど、ウルはよく観察を続けて上手く倒したな」
戦闘が終わって、ぽつりと感想をこぼす。その言葉に反応した年少組の妻たちが、苦笑いをしている。なんか変なこと言ったかおれ? 海賊船のラスト覚えてないの? とか、レイス系の魔物は人造ゴーレムでも、時間かかってたよね? と言われて、ハッとする。
そう言われれば、人型だったり獣型だったりする相手では、いなかったと思うが海賊船のラストなんか、船がまんま1隻魔物になってたもんな……あいつは斧で傷付けても、すぐに回復してたの忘れてたわ。切り離して最大HPを減らしてから倒したんだよな。
ミリーたちは、ウルたちと話しをしているな。トロールの様な初めて見る敵と戦う時は、ウルみたいにしっかり観察しながら戦うことも大切だよ、とミーシャたちに説明している。ウルは照れて、ミーシャたちは自分の姉を尊敬の眼差しで見ている。
子どもたちが希望してトレーニングをしているので、俺の妻たちが本当に手加減なく鍛えているんだよな。地球ならまだ保育園に通っている頃なのに、既に平均的な冒険者たちを通り越してるもんな……どこまで鍛えるんだろうか?
またウルたちが先頭を進みながら、ダンジョンを侵攻していく。
俺がトロールと戦うなら、ウルのように小細工をしないで、回復を上回る勢いで切り刻んで終わりだろうけど、ウルたちと同じ条件だったら、どう倒すかね?
「何を考えているでござるか?」
「あ~、もし俺が同じ条件で戦ったらどう倒したかなってな」
「某たちなら、レベル上昇による圧倒的な力で、どうとでもできるでござる。同条件と考えると、武器の制限も一緒でござろう? どう倒すか悩むでござるな」
「一撃必殺でしょ!」
「お前、生身で戦っても弱いじゃん……圧倒的にお前の方が強かったのに、雑魚ゴブリンにこいつ変異種? 私って超強いんじゃね? みたいなこと言ってなかったっけ。いくらレベルが600超えたからって、お前にトロールは倒せんだろ」
「むっかー、それならやってやろうじゃん! シェリルちゃんたち、少し四聖獣と猫たち借りてくわね。ほら、骨もいくわよ!」
綾乃に引きずられながら、ウルたちの進行方向とは別のトロールの元へ向かう。俺がマップ先生で案内したんだけどね。
ダマたちにトロール1匹だけ残して、後は退治してもらう。
「よっしゃー、準備完了よ! 私だって強くなったってところ、見せてやろうじゃない!」
そう言って着替えて現れたのは、スカルズと同タイプのパワードスーツを身にまとっていた。無制限でどれだけ戦えるかを試す予定だったけど、さすがにそれはインチキが過ぎるんじゃないかな? ツッコんでも綾乃は、勝てばいいのよ! だってさ。
さすがにこれで負けたら、相当ヤバいと思う。レベル差がトリプル越えて8倍近い上に、最強の防具にさらに力を上乗せする装備……負ける要素がない。
綾乃がトロールへ突っ込んでいき……吹っ飛ばされた。はぁ? 何で吹っ飛ばされるんだよ。制限している娘たちが攻撃をかわせるのに、制限なしでドーピングまでしてるお前が、何故攻撃に当たる? そして、当たったとしても、何故耐えれない?
綾乃のバカさ加減に俺は、混乱していた。
「クッ、こいつ、強すぎじゃない! ウルちゃんたちの戦ったトロールより、強いでしょ!」
「バカ言うな。Lvで言えば、ウルが単独で倒したトロールより、5つ下だぞ。それにお前、勇者の称号を持ってるんだから、魔物に対して更にアドバンテージがあるんだぞ!」
綾乃は、勇者の称号を持っているので、戦闘のできる人間ならばレベル差100位は簡単に覆せるのに、500以上下のトロールに苦戦するとか、普通に考えてありえないんだよな。戦闘に関しては本当に、ポンコツだな。
何度も突撃しては吹っ飛ばされている。同じ攻撃に何度も吹き飛ばされるなよ……しっかり踏ん張れば、絶対に耐えられるはずなのに、何で吹っ飛ばされるのか?
「バザール、どういうことだと思う?」
「普通なら、あのレベル差であの装備なら吹っ飛ばされることは、ないはずでござるが……どうしてあんなにポンポンと、吹き飛ばされているでござるか謎でござる。綾乃殿には、何か呪いでもついているでござるかね?」
「あ~、そうでも考えないと、これは説明がつかないな……でもさ、勇者って神の駒だろ? 呪いなんてわざわざつける神なんて、いなくねえか?」
「……コントローラーで操れば、ありえない位強いでござるのに、不思議でござるな」
混乱している頭を働かせて、バザールと会話をしている。
「あんたたち! 何呑気に会話してんのよ! 助けようとは思わないわけ?」
「お前が戦いたいって言ったんじゃん。装備とレベルと称号のおかげでほぼ無傷だけど、トロールにダメージを与えられてないぞ、お前」
「ムッキー、良いから助けなさいよ!」
「しょうがねえな、レオン、ちょっとトロールを押さえつけてもらっていていいか?」
俺がレオンに頼むと、体を大きくしてトロールに巻き付いた。綾乃がギャーギャー騒いでいるが、バザールがスケルトンを使って後ろに下がらせている。
まさか、いきなり俺に順番が回ってくるとはな! 慌てて装備を整える。
「多少重心が違っても何とかなるべ。ステータス制限は……あいつと同じレベルくらいでいいか。スキルは制限ないから、倒せんだろ」
自分の使う武器を適当にDPで召喚して、収納の腕輪にしまっていく。少し試したかったことがあったので、特別に1本だけその武器も忍ばせておく。スキルを制限していないとはいえ、ステータスに関わるスキルは、制限していけどね。
「やったるぜ! レオン、拘束を解いてくれ。デブ、こっちこいや!」
挑発を使いトロールの注意を引く。改めて近くで見ると、大きいな……
「まずは、特注スティレットの効果があるか、試させてもらうぜ」
スティレットとは、短剣の一種で刺突武器だ。鎧の隙間やチェインメイルに対抗するように作られたんだったかな。綾乃が蚊の人造ゴーレムを作ったときに、血を吸い出す機能を作ったように、同じ視点で作られた武器だ。
このスティレットは、カバーを被せてあり敵に刺し込んだ後にひねると、カバーが外れ敵の体内に残る仕組みだ。カバーは金属でできており、沢山の穴が開いており、血がそこから流れ出ると言う武器だ。
カバーはいくつも用意しており、3本ほど刺し込んで様子を見る……
「おぉ、すげえな。再生するのもすげえけど、取り込まずに体の外に押し出すのか……トロールの体の神秘が垣間見えたな」
トロールの体から、ニョキニョキと生えてくるカバーが、若干キモかった。
「んじゃ、本格的に戦闘を開始しますかね!」
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