191話 迷惑な奴らの結末
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窓から飛び出た俺は、先に出ていた従魔たちに周りを守られ、俺の後に出てきた娘たちにさらにその周りを守られた。
俺は集団戦になると必ず守られる立場になる事を学んだので、魔法で支援する方法をみんなにならっている。娘たちに任せっきりになるのはさすがに気分的によくないので、少しでも娘たちの危険が減るようにできればと思う。
俺は守られている状況を利用して、マップ先生を確認する。五十m内に敵戦力が約四十人、七十メートル付近に約二十人、合わせて六十人程か。七十メートル付近にいるやつらは、きっと索敵にかからない範囲に待機しているのだろう。俺にとってそんなもの関係ないんだけどな。
敵の兵士が集まってくる前に一応索敵の範囲外に敵がいる事を伝え、遠距離攻撃に注意するように言う。窓から俺たちと同じように飛び出てきた兵士たちに向けて、
「さて領主と商会長の兵士諸君、いくら上司の命令とはいえ犯罪行為であることは理解しているよな? 今ならまだ引き返せる……と言いたいところだが、今回が初めてという事はあるまい。俺たちを襲ったことを後悔して、犯罪者として裁かれるがいい」
「何を言うかと思えば、笑わせてくれるぜ。領主から娘たちをとらえれば壊れない程度に好きにしていいとの事だ。お前に仕えていたことを後悔させる程めちゃくちゃに犯してやるぜ。お前の前でな!
まてよ? それじゃむしろご褒美になるか? まぁどっちでもいい、久々の上玉だお前ら多少のケガなら治せるから無力化するぞ!」
隊長風の兵士が宣言すると周りの兵士が「おぉ~~!!」と叫び声をあげている。こいつら兵士というより盗賊の類だな。しかも娘たちを犯すとか言ってやがるぜ。殺してやろうかな? どう料理してやろう。
ん? 周りから怒気が感じられる気がする。よく見ると、従魔も娘たちも青筋を立てているようだった。いや娘たちなら犯してやるってところに青筋立てるのはわからんでもないが、従魔よお前らは何に怒ってるんだ? 娘たちへの暴言か? 俺の事より娘達の事で怒る従魔か、まぁ仲が悪いよりはいいか。
「じゃぁ、俺から戦いの狼煙をあげよう。【スタンボルト】」
スタンガンの対象を指定してその一帯に発生させる魔法だ。もともと近距離用の魔法なので、遠距離で広範囲に発動させようとすれば威力も落ちるし、消費魔力も激増する……が、目の前の雑魚どもの動きを少し止めるくらいは問題なくできる。
動きの止まった兵士たちを見て娘たちがその隙を逃すことはなかった。前衛陣四人とピーチが一気に距離を詰め、拳をにぎり兵士たちの身に着けている鎧を思いっきり殴り飛ばす。胸の部分が陥没し少しもがいてから気絶した。
ライムは俺の作った隙の間に魔力を多めに込めた、ウォーターショットガンを家の入口に残っていた兵士たちが向かってくる通路に打ち込んでいた。入口にいた十四人のうち前側にいた兵士七人が、全員体に受けた衝撃で昏倒した。
最後にメアリーは、弓を取り出しており屋根上にいた四人に、目にもとまらぬ早業で屋根の上から撃ち落とした。
護衛としてついてきた兵士の残りは七人、外から向かってきた残りは十二人。その内後ろ側に回り込んで奇襲を狙っている奴が八人、外側にいた二十人も一気に距離を縮めてきたな。とりあえず先に屋根の上に登ってきた四人と護衛の兵士七人を無力化するか。
「シュリ、兵士七人は任せた。ライム、メアリーは屋根の上の四人を、残りのメンバーはフォローするように! コウとソウは家の中に入って、領主と商会長が逃げないように確保してこい」
俺の指示で娘たちは敵に襲い掛かる。七人の兵士はシュリのスキルによってつけられた鎖で強引に目の前まで引きずり出され、フォローに回った娘たちによって意識を刈り取られる。家の上にいた敵は突風にあおられ俺たちの目の前に落とされ、ニコによって締め上げられ気絶した。
ニコのスペックが相変わらず謎だが、かなり便利なのは間違いない。
残り二十四人……どうやら不意打ちを仕掛けるようで全員がタイミングを合わせているような気がする。すでに半数以上が無力化されたためか、焦っているようだ。索敵スキルの存在を忘れているようだ。まとめて出て来てもらった方が、あの魔法を効果的に使えると思うから油断を誘わせて一気に来てもらおう。
「みんな、お疲れさま。ちょっと集まってもらっていいかな?(ライム、もうすぐ残りの敵がくると思う。あの魔法の実験に付き合ってもらおうと思うから、敵が見えたらサイレントヴェールを発動させてくれ)」
サイレントヴェールは、音を防ぐ魔法だ。本来は呪歌と呼ばれる歌や声に魔力を乗せた闇魔法などを防ぐ魔法だ。今回は別の目的で使わせてもらう予定だ。
戦闘が終わったふりをしていると、娘たちもしっかりとそれに乗ってきてくれる。今から俺が発動する魔法がしっかりと理解できているようで助かる。
しばらくすると……残りの二十四人がチャンスと判断して、全員が塀や屋根上から一気に突っ込んできた。半数以上を無力化され焦っているとはいえ、本当に全員でかかってくるとは思わなかったよ。
右手を上げ組み上げていた三種類の複合魔法を発動する。火魔法で爆発音、風魔法で爆発音の増幅、光魔法で閃光、【スタングレネード】を発動する。フェンリル戦で使用したあれを、魔法的に発動させてみたものだ。
この魔法にあてられた二十四人の敵は、何が起こったかわからず受け身もとれないまま頭から地面に突っ込んでいた。中にはエグイ角度で落ちている敵もいたが、この際関係ないだろう。自業自得だ。
複合魔法といったのは、正式な魔法名が付いていないためそう表現しただけなのだ。わかりやすいところで言えば、ファイアストームは火魔法だが風魔法の要素を取り込んで威力をあげているので、両属性をもっていれば威力が跳ね上がるのだ。
ファイアストームは風魔法が無くても発動できるが、火魔法が使えないと発動できないので火魔法として存在している。それとは違い今使用したスタングレネードは、全魔法適正が無いと発動できないため今のところ複合魔法と便宜上付けている。
おそらく俺かライム以外発動できないのでオリジナルスペルと呼ばれるようになるだろう。なぜ魔法ではなくスペルというのかはよくわかっていない、昔からそういう風に言われているとの事だ。
全員の動きを封じておこう。手足にミスリル合金で作られた手錠を付ける。魔法を使える敵にはツィード君とシルクちゃんの力作、封魔の首輪を装着させる。さて、この街の警察機構といえばいいのだろうか? それはあてにならないので、中立都市でも力のあるヴローツマインに介入を頼むか。
リンドに無線で連絡し、ダリアに緊急でヴローツマインから今回の件に対応できる人材の派遣と兵士の派遣をお願いする。
今回の見返りにワイバーンの番いと卵五個を約束する。ワイバーンは近くの山にいるので捕まえて調教する予定だ。卵は近くの巣にあることをマップ先生で確認しているのでかっぱらってくる予定だ。
ダリアからは即答で竜騎士十六人とダリア自身が向かう事を決定したようだ。後始末は丸投げしてしまおう。
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