1909話 再生ってすげえ
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ウルたち4人に対して、トロールは2体……数の面では勝っていても、力と耐久力は向こうが圧倒的に上だな。ステータスの平均で見れば、トロールの方が上回っていると思う。ウルは一対一で戦っており、ミーシャ・スミレ・ブルムの3人でもう1体と戦っている。
この状態になったのは、トロールと戦闘に入る前に、
「ミーちゃんたちは3人で、トロールを1体倒して! 終わったら援護に来てね」
この言葉で戦闘が開始されたのだ。耐久力の高い魔物を相手にするなら、二対一を2つより、一対一と三対一を1つずつの方が、戦術的には正しいと思う。
耐久力が高いと言っても、再生能力が高いため継続戦闘能力が高いと言う意味であって、ゴーレムみたいに防御力が高いわけではないんだよね。その違いがウルたちには分かっているか心配だけど、どんな風に倒すんだろうか?
俺が戦った中で再生力の高い魔物って何かいたっけ? 何かいた気がするけど、思い出せんな。倒すためには、再生能力を上回らないとトロールは殺せない。
それを考えてみても、ミーシャたちの攻撃は……微妙に再生能力を上回れていない感じだな。ミーシャたちが弱いわけではなく、トロールの再生能力が異常なのだろう。動きが遅いので一方的に攻撃をしているが、一撃でも攻撃を受ければ、ここに来れる冒険者でも瀕死になるだろうな。
防御力に関するステータスは、下げていないので攻撃をくらっても、クリティカルをくらって骨にヒビが入るくらいだろう。それでも、ミリーからダウンの判定を受ければ、戦線離脱しなければいけないことになっている。いつの間にか、追加されていたルールだ。
ミーシャたちは、武器を使って攻撃しているが、体格に合わせた武器なので思ったより効果が出ていないな。今日から武器の制限もされているので、戦い辛そうだ。制限とは、武器の品質だな。ゲーム的に言えば、攻撃力が高いものを禁止されている状態だ。
ここに来れるであろう冒険者たちの、平均値くらいの武器をチョイスしているので、昨日までとは違い決定力不足な感じがする。武器のバランスが崩れると困るので、普段使っている武器と同じ形、同じ重さ、同じ重心でクリエイトゴーレムを使い変形させている。
娘たちは、色々な武器を使えるように訓練しているので、初めて使う武器でもそれなりに使えるけど、それだとハンデが多すぎると、今日の朝に頼まれて、綾乃とバザールと一緒に武器の調整をしたんだよね。
それに対してウルは、素手で戦っている。何か考えながら戦っている気がするんだけど、狙いは何だろうか?
「ウルは何を狙ってると思う? あの体に拳は効かないと思うけど、何か試しているのかな?」
「ウルちゃんは、打撃の角度や場所を変えて殴っているのは分かるけど、何を狙っているかまでは分からないわね。何かを試しているんだと思うけど、何をしているんだろうね?」
「そうでござるな。生身の拳で一番ダメージの大きいところでも、探しているんじゃないでござるか?」
「それはなんとなく分かってるってわ、ハゲ」
「ハゲてはござらんよ! 頭皮がないだけでござる!」
骨形態のバザールは、久々にボーンジョークをかましてきたな。って、そう言うことじゃねえよ、ボケが!
「っと、ジョークはそのくらいにして……戦い方を見るに、大きな一撃を狙っている気がするでござるね。もう片方のトロールの再生力を、チラチラ確認しているでござるから、攻撃する場所を決めて大きいのを連続で叩き込むとか考えてるのではござらんかね?」
確かに言われてみれば、ミーシャたちの方のトロールを確認しているし、攻撃する箇所は肉の壁の薄そうなところに見えるな。
再生能力が高ければ、それを上回る勢いでダメージを与えないといけないからな……それを見抜いて、色々試しているってことかな?
それにしても、トロールってすげえな。ミーシャたちに指を切り落とされたのに、既に生えてきてんだけど……傷口がふさがるって言うレベルじゃねえ。3人は攻めあぐねているな。腹のブヨブヨを切ってもすぐ直るし、膝のダメージも回復するし、いつものセオリー通りいかなくてちょっとイライラしている。
「3人とも! 落ち着いて、焦らない! 戦闘中に一番しちゃいけないことだよ。今しなきゃいけないのは、トロールの観察だよ。どういう攻撃が効いて、どういう攻撃が効かないか、しっかりと見極めながら戦うんだよ!」
おぉ、ウルがミーシャたちに忠告している。戦闘では焦りは禁物。特に戦闘が始まったばかりなのに、これは良くない傾向だね。子どもだから仕方がないと言えば仕方がないのだが、修行といってきているので、スパルタになるのもしょうがないのかな。
ミーシャたちは忠告を聞いて、多少冷静になったのか声を掛け合いながら、武器を変えて攻撃を続けている。ウルは……おや? オーガたちに使ったナックルダスターではなく、俺がたまに使う砂鉄入りのグローブをいつの間にか装備している。
あっ、拳が赤く光った。っておい! 魔拳が使えるようになってるんかい! 魔法剣の拳バージョンだな。何だっけ、神のダンジョンだかにいた魔物が使ってきた技を、パクったんだったな。それを使えるようになっていたとは……
殴る場所から火が噴き出し、トロールの体を焼いていく。
「指が生えてくるんじゃ、火傷は意味ないか……小説で再生力の高いヒドラは、首を切った後に焼いて再生できなくさせてたんだけどな。なら、凍らせる!」
ウルの拳が青くなり、殴る場所がえぐれた後に凍っている。
ウルの呟きを聞いて、ふと思った。切った首が生えてくるヒドラの傷口を焼くと、何で再生しなくなるんだろうな。火傷を治すより、首を生やす方が難易度は上だよな? それなのに、焼くことによって治らなくなるって……おかしくね?
綾乃とバザールに聞いてみたら、小説の中の話だから気にしたら負けじゃない? ファンタジーの世界だしね! とか言われてしまったぜ。その通り過ぎて何も言えん。
おっと、氷は有効そうだけど……凍った部分を自分で剥がして、再生してるし……と思ったら、手の届かない所を殴り始めた。太りすぎていて、手が届かない場所が多すぎるようで、次第に体温を奪われていき動きが遅くなり、剣で首を斬られて終わった。
結局1人でトロールを倒したウルが、ミーシャたちに指示をして、凍らせながら動きを止め首を落とした。
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