190話 迷惑な奴ら参上
アクセスありがとうございます。
商品を売りさばいてから二日後、あれから娘たちの集める情報に変化はなかった。どこかで戦争をするかもしれないという内容の声が大きくなってきているという報告は上がったが、それ以外は特に変化はないように感じた。
商人から聞こえてくる声は、やはり食料や武器防具の売り買いの声が大きくなっている印象だ。素材に関しては値下がりが起きていて、製造品に関しては値上がりが起きている。その事実を考えると戦争までの秒読み段階に入っているんだろう。だけど、何処で誰が戦争を起こしているのだろうか?
戦争が起こるといっても結局のところこの都市には関係なく、市民には特に興味をひく話題ではないようで商人の中だけの話の様だ。むしろ戦争自体に興味はないが、戦争が起こることによっての食料の値上がりが起こっているため不興を買っている面が見える。
いくら帝国に近い中立都市に住んでいるとはいえ、戦闘狂ではないのだ。荒事が嫌で中立都市に来ているものだって多い。まぁ魔物の多い世界であるため戦闘は絶えないが。人と人が争う無駄な行為を見ないで済むという事では、中立都市は限りなく少なくなるようだ。
特に国境沿いの辺境伯の土地では、他国からの侵攻とその地位がほしい屑貴族共が攻めて来ていて大変の様だ。
「集められる情報が減ってきたな。これ以上集めるとなると違う方法が必要になってくると思うけど、何かいい案はあるかい?」
「そうですね。確かにギルドや商人、酒場で仕入れることができる情報ではこの辺が限界でしょうか? 後は情報屋から買うか、知っていそうな人間から入手するかですかね?」
「情報屋から買ってもそれが真実と判断する材料がないからな。ただ金をむしり取られる可能性が高いよな。それで知っている人間からの入手って具体的にどういうことだ?」
「この街の領主や商会のトップ、ギルドマスターから入手する方法ですね」
「いやいや、いくら何でもそのあたりから情報を買うのは無理だろう?」
「ご主人様、買うのではなく入手するのですよ」
「あ~、なんとなく分かった。さすがにそこまでする必要はないかな?」
「では、これ以上この街でできることは少ないかと思われます。どうなさいますか?」
「まぁそれなりに情報を得られたから良しとしよっか。この街の冒険者や兵士の総合評価は、ヴローツマインには遠くおよばないしな。そこまで警戒する必要もないと思う。だけど入口を作るにあたって警備は万全にしておかないとな。そこらへんは帰ってからみんなで考えよう」
「では、帰る準備をした方がよろしいですか?」
「焦る必要もないから市場に行って面白い食材や調味料がないか探してみよう。よさそうなのがあったらDPで召喚できるか確認してできなそうなら、ここで種や苗を買っていこう」
俺の言葉を聞いて準備を始めてくれた。自分の部屋に戻って従魔たちにモフモフまみれにされてのんびりしていると、ドアが叩かれてピーチが呼びに来た。
「ご主人様、変な団体が二組ほど押しかけてきましたがどうなさいますか?」
「変な団体? って領主と商会長がいる? 自分でわざわざ足を運んできたのか? 意図が読めないな、追い返すのは簡単だけど面倒になりそうだ。話を聞いても面倒になるか? しょうがない、会うだけあってみるか。みんなの準備はできてるのかな?」
「全員、戦闘メイド服に着替えています。鎮圧用に不殺のグローブも着用済みです」
「じゃぁ会ってみますか、団体さんみたいなので、両方から護衛五人までという事で応接間に通しておいて、俺も一応準備するから」
俺はピーチに指示を出すと、俺のために調整された高機能で薄い革製の鎧だ。その上にリンドとカエデが準備した特製のアウターを身に着ける。アダマンタイト繊維で作られたアウターだ。見た目はどこに出ても侮られないような作りをしている。
アダマンタイトの繊維は、カエデでは扱えなかったがリンドの熟練度が扱えるレベルに達していたため加工することができたと言っていた。加工するための道具を作らされたけどね。その甲斐あって娘達の納得いく作品ができたようだった。下につけている革製の鎧も無駄に見た目のいいものをリンド主導で作ってくれていたのだ。
準備が終わり応接間へ向かうと、誰もいねえし! マップ先生で様子を見ると入り口付近で、何やらしているようだった。しょうがない、出向いてやるか。
「貴様か! この娘どもに言ってやれ、護衛を五人までしか連れてってはいけない、とかほざいてるぞ! この私に無防備になれというのか!!」
「えっと、少しお聞きしていいですか? 何ゆえここに来られたのですか?」
「貴様に話があってきたのだ! それなのにこの娘どもが護衛を五人までと、ほざくからこんなことになってるんじゃないか!」
うん、本当ににめんどいタイプの人間だ!
「わかりました「よし、さっそく入れさせてもら……」こちらの指示に従えないのであれば、お帰りください」
「なん……だ……と? この私がこの街の領主と知っての発言か?」
「一応この街に来て五日程経ってるから、あなたの噂も聞いていますよ? でも俺にはあなたたちに用はないので、こちらのいう事がきけないのであれば帰って下さい。では、ごきげんよう」
「一人ずつ対応すれば護衛全員入っても問題ないだろ? わかったならはやくいれろ」
「領主、それは横暴だぞ! 私から入らせてもらう、ここについたのは私の方が先だ!」
「バカ言うな! 私が先だ!」
「うるさいから帰れ! 一人ひとりと交渉する気はない、こちらのいう事がのめないなら帰れ!」
「しょうがない、領主ここは従おう」
「ちっ、仕方がない早く案内しろ!」
イラッとしたがこっちのいう事を聞いたので、応接間に案内する。
「で、今日はどういった用件で?」
「わしは、商人ギルドに納品された乾燥野菜について聞きに来た。製法を教えてほしい」
「私は、強いと噂される娘たちを護衛として雇いに来た」
「そうですか、製法を教えるつもりはないし、娘たちを手放す気はない! 話終わりなので帰っていただきたい」
「製法を教えてもらえれば、対価を払おう。商人ギルドで商品を売った際の額の十倍ほどはらう、十分すぎるだろう?」
「娘ども、そやつの四倍の金を払おう、文句はないだろう」
俺が何かを言おうとすると、ピーチとシュリが前に出てきた。
「わかってくれたか、それでそやつからいくらもらっているんだ?」
「私たちは、このお方だから従うのであって他の誰にも従うつもりはありません。お帰りください。製法に関しては、一切教えるつもりはない技術とご主人様が言われていたので教えられることはございません」
「女風情が……ん? よく見たらお前ら奴隷じゃないか? 奴隷のくせに私に盾突くこうというのか? お前らのご主人様がどうなってもいいのか? おい、みせてやれ」
「ゲスが、脅しが通用するとでも思ってるのか? お前たちが連れてきた兵士合わせてたった二十四人、その戦力で俺たちにかなうと思っているのか? 剣を出したということは、切られる覚悟があるんだよな? ライラ、扉を開けてみんなを呼んでくれ」
ライラが扉を開けた瞬間、ギンとクロが敵の兵士たちの両サイドにつきニコが俺の膝の上、ハクが頭上でとびながら威嚇をしている。コウとソウは俺の椅子の横にスタンバイしていた。
「……私に歯向かうというのか? 後悔するといい……お主も手伝え、力で押さえつけてやる」
「これは一つ貸しだぞ領主」
領主と商会長が笛のようなものを吹く、甲高い音が聞こえて外の兵士が扉を破って入ってきた。その扉誰が弁償するんだ? 索敵範囲外から複数の反応が範囲内に入ってきた。
「警戒、範囲外から複数の接近あり。戦闘準備、窓から外に出るぞ!」
俺の宣言を聞くといち早く従魔たちが窓を破って外に出て、それに続いて俺、その後に娘たち、最後にシュリが飛び出た。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
ブクマや評価をしていただけると幸いです。
これからもよろしくお願いします。