1894話 仕事が早い
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ふむ、昨日のうちに門番の件は片付いたのか……言った当日に奴隷を買い、最低限の教育をしたということか? 奴隷を見繕うのにも多少時間はかかるし、教育にも時間がかかると思っていたが……
昨日の門番の件の報告書を読みながら、思案する。
2枚目に経過報告のようなものが書かれていて、納得する。条件に合った奴隷を購入して、最低限の教育を済ませずに、門で使う魔道具を使わせているようだ。もちろん1人で使わせているわけではない。
門に最低2人は配置する予定だ。真偽判定の魔道具を2つ置くからな。そして、交代要員として倍は用意する必要がある。俺の街では、奴隷でも犯罪奴隷以外は、労働時間がしっかりと決められている。門が開いている時間は、それを大幅にこすので1つの門に最低4人は必要なのだ。
とはいえ、16人も一度に見繕うことができるのかと言えば、ノーである。忙しくなる門番の兵には申し訳ないが、現場実習で仕事を覚えてもらう形だ。門番以外の仕事の時間は、勉強に当てられるらしい。しばらくは仕事に集中してもらうが、必要数が揃えば教育をするみたいだ。
内容は、ディストピア系列の学校レベルの教育だ。それでもこの世界で見れば、最高峰の教育だろう。これを超えるのは、王都や帝都の高等学校だろうか? 話を聞いただけで良く分からんが、文官に就く人たちの教育をしているんだとか。
でも、即戦力と言われるくらい、ディストピア系列の教育水準は高い。2ヶ国の高等学校も大したことは無い気がしてきた。
国や国民のために働く貴族や文官が、汚職するのが当たり前の世界だ。高い給料をもらって、国民の血税をかすめ取っていくクソどもが多いのだ。それを考えると、この世界の教育は全然ダメなのだろう。
まぁ、奴隷は購入できても半数位だったらしく、今日中には近くの街から購入した奴隷が付くようだ。
最低限の16人が揃うまでは、真偽判定の魔道具を隣で士官の兵長クラスが、一緒に使いながら教えるようだ。完璧になった所で、真偽判定の魔道具は奴隷たちに任せるらしい。
奴隷たちにも健康状態が悪くなり、休ませることもあるだろうから、倍数の奴隷が集まるまで条件に合った奴隷を購入していくそうだ。購入は俺の商会任せだけどね。いろんな街に支店があるので、そこで購入して移動させられるらしい。
問題ないのであれば、それはそれで良しとしよう。
昨日は前の2日に比べて、逮捕者は少なかったようだ。家族内での宗教活動が減り、宣教師の逮捕者が増えたくらいが、変わった点だろう。
おや、王国や帝国からも情報が入ってきたようだ。やっぱり手紙をやり取りする魔道具は、健在のようでしっかり情報共有がされているみたいだな。
王国や帝国内でも、狙われている都市はあるようで、その大半がいわゆるクズ領主の見本のような都市らしい。特に狙われているのは、金のあるクズと無いクズみたいだな。
金のあるクズは免罪符を売りつける対象で、金のないクズは支援などで乗っ取りする対象なのだとか。
可能性の高いクズの所のには、国の精鋭が中隊規模で派遣され、乗っ取られたことを確認次第、騎士を掌握して頭を挿げ替えるようだ。免罪符があっても罰賞が消えるだけで、犯した罪が消えるわけではない。
罰賞はそれを目に見える形にしただけに過ぎないのだ。称号欄に罰賞がないからと言って、犯罪を犯していないわけではない。証拠は腐るほどあるので、国の法律で裁く形なのだとか。
この世界では、罰賞を基準に罰を下している面もあるが、罰賞も無く冤罪で罰せられている者も多い。その大半が、上流階級の人間からの押し付け冤罪なので、今度は自分たちがされる番という訳だ。いや、実際に犯罪を犯している人間だから、少し状況が違うな。正しく罰せられるが、正解だな。
これを機に、膿を排除するつもりだろう。この報告書を見る限り、複数回宣教師と面会したら乗っ取られなくても、状況が整い次第物理的に排除するみたいだな。
作戦は二段構えということか。まずは乗っ取られたクズを排除して、次に乗っ取られていないクズを排除するみたいだな。文官教育を急がせているようだな。後は、実直な貴族の一族から、条件に合う人材を見繕ってトップを挿げ替えるらしい。
トップが実直で、サポートする文官がそれなりに有能であれば、街はある程度回せるからな。
「というか、何で他国のこんな報告書まであるんだ?」
ある程度仕事を終わらせると、グリエルとガリアが俺の執務室に来たので、聞いてみたのだ。
「宗教関係の情報をリークする代わりに、どう対応するかの報告だけは欲しいと言っておいた結果ですね。そこには書いてませんが、金のないクズの方ですが、宣教師から金を搾れるだけ搾りとってから排除するようですよ」
ケラケラと笑いながら、話してくれた。宣教師に乗っ取られても、すぐにどうこうなるわけではない。特に金のない街では、動きは遅くなると推測されているのだとか。お金のある方に関しては、持ち出されたりすると面倒なので、すぐに取り押さえる予定だとも教えてくれた。
膿を出すついでに、貰えるものは貰って、渡したくない物は抑えるってことか。
金がないから、街の宗教として交付したところで、旨味はない。街に金がないから、仕方がない。祈るだけ祈らせて、信仰だけを搾り取る方法もあるかもしれないが、それも余裕があっての話だろう。宗教の名を使って街のために貢献した後に、信仰を集めるために交付する流れを取ると予想しているみたいなのだ。
すでに乗っ取られている3ヶ国以外は、乗っ取りに時間がかかるようなので、準備を早く進めるために協力をお願いされたとか。可能な範囲で協力してやってくれ、もちろん対価は貰うように。安請け合いはダメだぞ。
驚いたことに、街の権利書を使った詐欺は、帝国や王国の街では使われた様子がなかったみたいだ。おそらく俺の街が新しくできたり、領主代行がトップにいたため、こういった方法を取ったのだろう、と皇帝が言っていたみたいだ。
相手が領主本人だったら、余程のバカでない限り詐欺なのは気付くだろうしな。
2ヶ国の方は、時間をかけて排除するみたいだから、解決まではしばらくかかりそうだな。元凶を潰せなければ、ズルズルと時間がかかりそうだけどな。
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