1886話 癒しの子どもたち
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時計を見る……やはり歩いて帰ると、時間が遅くなってしまいそうだな。往復にゲートを使うつもりだったからいいけど、ちょっとだけ歩いて帰れるかと思ってたんだけどな。あっ! でも、護衛がいない状態で歩いたら、怒られそうだな。
安全だけど、だからといっていいという問題ではないらしい。安全ならいいじゃん! とか思うんだけど、この世界ではそうじゃないんだってさ。俺のイメージで言えば、日本の人口数百人の村の道を護衛をつけて歩く感じなんだよな。
都会だと万が一のことがあるけど、人口数百人の田舎ならでてもイノシシとかそんなもんでしょ。悪さをする人間なんて、田舎にはほとんどいないからな。
おっと、ゲートをくぐって自分の部屋で少し休んでいたら、足に何やら感触がある。覗いてみると、シンラだった。
おぉ、かまおうと思っていたシンラが自分から来たのか。愛い奴だな! ここを撫でてほしいのか? おっと、怒られてしまった。どうやら膝に乗せてほしいようだ。しばらく乗っていなかったのに、今日はどうしたんだ?
最近は普通にしゃべれるようになってきたので、聞いてみることにした。
「プーちゃんとシーちゃんに追いかけられて、逃げてきた」
「お前たちは、生まれてからずっと追いかけっこしてるよな……シンラが一方的に追いかけられているだけなんだけどな。シンラは、姉妹を引き付けるフェロモンでもでてるのかね?」
「ふぇろもん?」
「あ~、フェロモンって言うのは……なんて説明すればいいんだろうな。引き寄せるにおいみたいなものかな?」
「シンは、くちゃいの?」
自分の服を嗅ぎ始めた。この歳でそのネタをやるのか!
「においって言っても、意識的に嗅ぎ分けられるようなにおいじゃないから、シンラは臭くないぞ。そんな事より、そろそろご飯になるから、食堂に行くか?」
元気よく返事をしたシンラを肩車して、落ちないように少し前かがみになり足をしっかりとおさえる。
「シンちゃんいた! また、とーたんと一緒にいる!」
シンラを探していたプラムに見つかった。だけどプラムには届かない位置にシンラがいるので、シンラは余裕の表情をしているだろう。トットットと足音が聞こえると、2人目が現れる。
「いた! また、とーたんと一緒!」
シオンがシンラを発見して指を指している。
それにしても、上の子も下の子も何で「とーたん」なのだろうか? 上の子たちは、呼びなれたから直す気がないとか、そんな感じなのかね?
む? どうしても、シンラのもとに行きたいのか、俺のズボンにしがみつきよじ登ろうと頑張っている。右がプラムで左がシオンだ。
この状態でもゆっくり歩いているのだが、落ちて怪我をしたら困るので、スライムたちに目配せをして足元に待機してもらっている。もし落ちても、スライムの完璧なクッションで受け止めてもらえるぞ!
2人とも何とか腰のあたりの服を掴んだが、そこで食堂へ到着する。
おや? 上の子たちがいないな。ちょっと早すぎたか? シンラをいつもの席へ座らせ、プラムとシオンも同じように座らせていく。
あれ? 声が聞こえるってことは、食堂にいるはずなんだけど……おぉ、今日は料理を手伝っているのか! 怪我はするなよ! したところで、回復魔法使いが沢山いるから問題ないか。
自分の席に座って、シンラたちの様子を見ていると、
「シュウ様、少しいいですか?」
リリーから話しかけられた。
「どうかしたのか?」
「おじいちゃんから聞いてほしいとお願いされたんだけど、コロッセオを使う許可が欲しいみたいなんです。利用許可をもらってもいいですか?」
「ん? ゴーストタウンの施設だろ? それなら、グリエルか領主代行のドワーフの爺さんに聞けばいいんじゃね?」
「あ、あれではなくて、その……シュウ様は思い出したくないと思いますが、神様から作れるように付与してもらった、死なない方のコロッセオです。あれの利用許可ってもらえますか?」
……あ~、チビ神が妻たちと強引に戦わせた、あの闘技場か!
『私のせいじゃないわよ! あんたの奥さんたちからお願いされたから、作れるように頑張ったんだからね! 反対に感謝してほしいくらいだわ!』
知るか、アホ! 手前が無駄に頑張ったから、そのせいで戦いを強制されて、あの結果になったんだぞ。ったく、呼んでねえのにくんな! シッシ!
『何よ! 人を野良犬みたいに扱って!』
プリプリ怒りながらどっかへ行ったようだ。このチビ神、いなくなる時は大体どこかに立ち去る気がするんだが、経路を遮断するだけでいいんじゃないのか?
「……ウ様、シュウ様!」
「あ~悪い。急にチビ神から言葉が届いて、追い返してた。あのコロッセオなら、使ってもいいぞ。ただ、管理の問題があるから……マイワールドにあるんだったか? 出入り口を厳重にしないとな。後、DPを使うアイテムが必要だから、召喚を付与できる精霊とかがいないと、どうにもならないぞ」
ブラウニーたちは、絶対にあそこにはいかない。だって、仕事がないから絶対にいつかないのだ。マイワールドは、全体がダンジョンになっているので、放置しても埃とかが貯まらないんだよね。設定すれば、地面だって問題なく耕せるようになるしね。
「シールドみたいなのを装備しなくても、問題ないと認識していますが、違いましたっけ?」
「えっと、怪我やダメージが直接体に入るけど、致命傷になると控室みたいなところに戻されるんだったかな? シールドが無いと、怪我はするはずだぞ」
「それでいいんです。むしろ、怪我をしない方が問題です。痛みのない訓練など、大した価値はありません。痛みが伴うから、必死になるのが当たり前です。痛みが無ければ危機感が生まれませんからね。ゲートは、どこに作ってもらえますか?」
「ん~、兵士が訓練に使いたいなら、レイリーの管理しているエリアがいいよな。って、後でどこに作ってほしいか聞いておいてよ。いくつか候補の場所をあげてくれたら、そこから選ぶからさ。レイリーにそう言っておいて」
「ありがとうございます。明日にでも連絡してみます」
おっと、リリーと話している間に、シンラがプラムとシオンに捕まってる。3人とも椅子の上だから、捕まっているという表現はおかしいのだが、両手をガッチリと掴まれているのだ。
悟った顔をしたシンラを見るのは、久しぶりな気がするぞ。こっそりと写真におさめておいた。
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