1884話 予想された事態
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2つ目3つ目の交渉が短時間で終わっており、多少前倒しで4つ目の交渉が始まったのだが、トラブルがあり5つ目の交渉は、少し時間が遅れてしまった。今回は、帝国の領土内にあるメギドが、交渉の場となっている。
そして……
「えっと、メギドと周辺の領地の権利を担保に、金貨20万枚を貸し出したと……担保になった権利書は、そちらの手にあって見せることは出来ない、ということですか?」
「そう言うことだ、さっさと金を払うか領地を明け渡せ」
「面白いジョークですね。廃れてどうしようもない領地なら、金貨20万枚でもおかしくないでしょうが、ダンジョンを有していて、他にも特産品のあるこの領地を担保に、20万枚しか借りない領主はいませんよ。それに、話を聞いていれば、証文も見せてもらえないのに金を払えと言うのは、無理がありますね」
「実際にこちらに証文も権利書もあるのだ、そちらの言い分は聞かん。さっさと払うか領地を明け渡せ」
「そもそも領主だったとしても、街の外へ権利書を持ち出せるわけがありません。権利書を担保にするのであれば、最低でも街の中で貸し借りが行われているはずです。それはご存じですよね、隣街の領主様ですからね。現物も見せてもらえない、金は払え、詐欺の上等手口ではありませんか」
「そんなものは、領主に言え。実際に金が必要だと言って、こちらから20万枚貸し出しているのだ。文句を言わずにさっさと金を払え」
「そもそも、20万枚貸したという話がおかしいのですよね。あなたの街の財政状況を調べさせていただきましたが、とても金貨20万枚を貸し出せるだけの財源はありませんよね。そのお金はどこから出てきたのですか? あまりこちらを舐めていると……」
突然のことで反応できなかったが、ゼニスの首が飛ばされた……ゼニスはドッペルだったので、生死に問題はないが、ドッペルで殺されると結構精神的に負担があるんだよな……
「始めから金を払っていればいい物を……お前たち、この街の金をありったけ集めるぞ」
隣街の領主……名前は忘れたが、こいつが指示を出して盗みを働くと言っている。
「はぁ、護衛に無駄にレベルが高い奴がいたと思えば、こういうことだったのか……初めから殺して奪うつもりだったわけな」
「ふん、雇い主が死んだからと言って、頭でもおかしくなったのか? そうだな、メイドの2人は美人だから、俺の奴隷にしてやろう。捕らえた奴には、貸し出してやるぞ」
護衛でついてきていた5人が、奇声をあげている。こいつらは同時に地雷を踏み抜きやがって……
「シュリ、クシュリナ、防御フラッシュバン」
俺は2人に、短く指示を出した。隣の部屋で待機していた、鬼人たちにも聞こえており、戦闘態勢に入っているはずだ。
俺は収納の腕輪から、魔改造したフラッシュバンスタングレネードを取り出し、ピンを抜き放り投げる。普通のグレネード系は、3~5秒で爆発すると言われているが、取り出した魔改造済みのこれは、投げてからコンマ5秒で爆発するアホな兵器である。
光の強さも音の大きさも、数倍になっているため、目をつぶっただけでは失明するレベルだ。最低でも手で目を隠さないとヤバい。音に関しては、鼓膜が破れるかと思っていたが、レベルによっては破れないが、回復するまでは何も聞こえない状態になる。
何の予備知識のないまま、目の前でフラッシュバンスタングレネードを使われた、隣街の領主と護衛の5人はその場にうずくまった。
護衛の1人でレベル600オーバーのリーダー格は、ゼニスのドッペルの首をはねた奴だ。こいつには、殺人鬼の称号と強姦魔の称号がついていたので、注意を払っていたが対応できなかったな。俺たち全員は、全員ドッペルで参加していたので問題なかった。
そもそも、詐欺や犯罪を犯す相手の前に、生身で出ていくこと自体ありえんけどな。
他の4人にも、殺人鬼と強姦魔の称号がついていたので、トリプルの冒険者が重犯罪を犯し続けたので、資格取り消しになって前住んでいた国から逃げてきたのだろう。帝国は実力主義だし、強ければ仕事にありつけると踏んで、流れ着いたのだろう。
帝国でも重犯罪者であれば捕まるのだが、捕まる前に隣街の領主が味方に引き込んだのだろう。こいつらの力があるから、強引に話を進めてこの街を乗っ取るか、もしくは金目の物だけ盗んでいくつもりだったのだろう。人数的に後者だろうけどね。
まぁ、こんな奴らに遠慮する必要は無いので、手っ取り早くフラッシュバンスタングレネードを使ったわけだしね。
光が収まった次の瞬間には、壁を壊して隣部屋から暗部の鬼人たちが躍り出てきた。そのまま、手に持った細長い針状の武器を、6人に念入りに刺している。
何をしているのかと思ったら、どうやらあの武器は毒針のようで、綾乃とバザールの新作らしい……あいつらも、本当に知らない所で色々作ってるよな。
構造は至極簡単だけど、地球の技術で同じような物は作れるか知らない。
アイスピック状に加工されたアダマンタイトの中心をくり抜き、毛細血管の様な細い穴をたくさん繋げ、そこから毒が漏れ出すように作られた物だ。持つ部分に毒を入れるタンクがあり、刺すことによって相手の体内に直接打ち込む武器だ。
暗部はよく毒を使うのだが、刃物や針に塗布して使っているのを見た綾乃が、「それじゃダメね」とか言って、バザールを引きずり出して作った代物らしい。あいつの感性は良く分からんな。
予想以上に使いやすかったこの武器を、お願いして大量に作ってもらったのだとか。そう言えばちょっと前に暗部から、武器の新調をするのにそれなりのDPを出したけど、綾乃とバザールへの報酬だったのか。DPだから変だと思ってたんだよな。ドワーフだったら、珍しい酒で要求されるからな。
今回は、麻痺毒を使っているようだ。こういう奴らは、自決することは無いだろうが、身ぐるみをはがされ全身を確認し、奥歯を入念に確認されていた。誰一人自決用の道具はもっていなかった。成功すると思ってたのかね?
手錠を手足に着けられ睡眠薬で眠らせてから、領主館の地下にあるゲートを使って、暗部専用のマイワールドに運ばれていった。レベルは高いので、ツィード君特性首輪をはめられて、戦闘訓練用のモルモットになるかな?
「さて困った。このままだと、不良債権の隣街を引き取らなければならなくなるな。ゼニスも今頃精神的にダメージを受けているかもな……アンソニ、領主館の後始末は任せた。何かあったら、ディストピアに連絡してくれ。隣街の件は、こっちで処理しておく」
この街の領主代行のアンソニ君に、メギドの事後処理を任せ、俺はディストピアへ戻る。
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