1881話 呆れた
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俺には鑑定スキルとダンジョンマスターのスキルで、ギルマンって奴が複数の罰賞を持っていることは分かっているが、残念ながら今回の詐欺に当たる罰賞を持っていないんだよね。まぁ、殺人教唆とか奴隷殺しとか違法奴隷の売買って罰賞があるので、護衛もさすがに手を引くだろう。
それにしても、奴隷殺しって殺人とは別枠なんだな。初めて知ったよ。厳密に言うと、犯罪奴隷を殺すと付く罰賞で、殺人の1ランク下に位置付けられる罰賞なのだとか。殺人を持っている場合は、奴隷殺しの罰賞は上書きされてしまうのだ。シュウはこの時初めて知った称号である。
商人はかなり余裕の表情をしているけど、最近真実の瞳使ってないんじゃないか? ん~さすがにないか? なら可能性としてありそうなのは、罰賞を隠蔽できるアイテムか? 俺は席を外し、検索をかけてみた。それらしいアイテムは無いな。
こいつの自信はどこから来るんだ?
兵士によって真実の瞳が持ち込まれた。念のための確認動作で、持ってきた兵士2人が手を置き問題なく表示されることを見せた。
次に、自分たちが他の犯罪には加担していないことを証明するために、護衛の5人が真実の瞳を起動させ、罰賞がついていないことを確認する。
ニヤケ面をした商人が手を乗せると……もちろん、真実の瞳が映し出したのは、『殺人教唆』『奴隷殺し』『違法奴隷の売買』と表示された。
「馬鹿な! 私はこんなことをしていない! 何で表示されるんだ! さては、私を陥れるために準備した奴だな!」
そんなことを言うが、さすがに護衛たちもドン引きして、こちら側に寝返った……というのは変だが、ギルマンを援護することは無くなった。
契約違反だ! とか騒いでいるが、護衛から見れば自分たちが知らない間に、犯罪の片棒を担がされるところだったのだ。内心穏やかではいられないよな。
こんな拙い方法で街の権利をどうやって奪おうとしてたのかね?
「あ~、君たち、さっきも言ったけど、敵がいる場合はしっかりと情報収集するべきですね。冒険者ギルドにも非はあったかもしれません、あなたたちはシングルなのですから、ギルドからの信頼も厚いですよね? 先にギルドを通じて、罰賞などの確認をするべきでしたね」
ゼニスにそう言われ、今回のように人と人が関わるケースは、可能な限り情報を収集してから受けることを決めたいと思います、だってさ。こちらの忠告を受け入れられる度量はあるらしい。
「さて、シュウ様。このアホはどうしますか?」
「あまり時間がないから、暗部を呼んで情報抜き出してもらおう。何でこんなことしたのか、強気だった理由とか、背後関係がないか徹底的にすっぱ抜いてもらおう」
っと、元からその予定だったのか、俺が言い終わると同時に鬼人の皆様が連行していった。あまりの手際の良さから、シングルの冒険者たち5人も呆気に取られている。
「あっと、そっちのリーダーの人、依頼書はしっかりと持っていますよね? 今からフレデリクの冒険者ギルドに行くから、そこで少しお話ししましょう」
ブンブンと縦に首を振っているので、問題なさそうだ。領主館から冒険者ギルドへ急いで移動する。
そう言えば、冒険者ギルドのマスターは、他国から派遣されるようになったようだ。特に大国の中で選ばれたマスターは、不正に加担しやすいので他国からマスターを派遣するようだ。それでも不正はなくならないらしいが、以前に比べれば減っているらしい。
俺の件もあるし、スカルズのケモミミ3人娘の件もあるからな。王国内の冒険者ギルドマスターは、完全に信用がガタ落ちしており、各街のマスターとサブマスター2人は、他国の人間で占められている。
国ごとの派閥があったようだが、それでは駄目だと理解したのか、国と密接関係にあった冒険者ギルドは、半分以上は独立した組織になったらしい……国とは別の組織だって、初めは聞いてたんだけどな。
今回の件をギルドマスターへ伝え、どう対処するかはギルドに任せることにした。情報を抜き取ったら、冒険者ギルドにギルマンを連れてくることをお願いされたよ。被害にあいそうになって、不敬罪もあったが、ギルドでも調べて対策を考えたいと言われたからね。
で、問題は……ギルマンの犯罪が立証されて、被害者である俺が取り押さえたとなると、ギルマンの持つ商会が俺の物になってしまうのだが、ケープマインには正直いい思い出が無いのでいらないんだよね。かといって、クズの家族に権利を引き継がせるのはありえない……
「ゼニス、なんかいい方法ないか?」
「そうですね……おそらく家族にも罰賞があると思うので、奴隷落ちは間違いないですし……っと、ちょっと待ってくださいね」
何かを思い出したのか、タブレットを操作して何かを調べ出した。
ギルドマスターとシングルの冒険者たちは、何か話し合いがあるようで部屋を移動しているので、ゼニスも遠慮なくタブレットを使っているな。
「あ~ありました。ギルマンに冤罪をかけられた商人の家族を奴隷として、購入していますね。そこそこ優秀だったので、支店を任せている人材がいるので、その家族に引き継がせましょうか? その家族も恨みを持っている人間が多いと思いますので、ケープマインで強制労働させるのもありかもしれませんね」
ケープマインは鉱山都市なので、犯罪奴隷が鉱山を掘っているんだよな。そんなところに放り込まれれば、冤罪とかで恨みを買って放り込まれた奴隷たちにリンチされるかもな。噂では、ガス抜きのために生贄にされる奴隷もいるって話だしな。女なら、体力が無ければ性の捌け口にされたりとかね。
「ギルマンは、確実にケープマインの鉱山にぶち込もう。家族は、罰賞が無ければ街外退去で、有れば度合いにもよるけど鉱山行きかね? 後、ケープマインの領主は絶対に便宜をはかっているから、冒険者ギルドで対応してもらうべきかな?」
「ギルマンと家族は、それで問題ないと思いますが、ケープマインの領主は深紅の騎士団に任せた方が良いのではないですか? ギルドによって領主が排除されても、寄り親の貴族が自分の手の物を派遣して、大して変わらない状況になると思いますよ」
なるほど。特に国の重要な資源を生み出す場所なら、国の直轄地だと思うが、それでも派閥はあったりするのだろう。国王にとって都合のいい領主の方が、何かと便利だ。商会を例の家族に任せるなら、俺の商会と提携する形にするだろうから、金にがめつい領主が来ると困るしな。
「よし、そこらへんは任せる!」
昼食を食べながら、美味いな……とか考えていると、暗部から連絡が入る。
どうやら、黒幕はいないようだが、横のつながりで同時期に仕掛けようという話が回ってきて、ほぼ勝てるであろう作戦で今回の騒動を起こしたらしい……あの杜撰な計画で、勝てると思っていたのだろうか?
後、強気だった理由は、免罪符と呼ばれる意味不明なアイテムを購入して、罰賞を消したためだとか……詐欺する前に、詐欺に引っかかってるやんけ! 単なるバカだったってことだな。この様子だと、他の街も似たり寄ったりなのかね?
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