1879話 話し合い
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フレデリクの領主館で俺たちは準備を始めている。基本的には、ゼニスに話の流れをコントロールしてもらう予定だ。俺がアシストする必要なんて何もないだろうが、もしもの時は俺の出番となる予定だ。あり得るとすれば、武力行使をされた場合かね?
領主代行から、俺に金を貸したと言っている商人が来たと連絡が入る。誘導してもらい、準備していた部屋へ入ってもらう。
「どうも、初めまして。フレデリクとリーファスの会計役を務めさせてもらっています、ゼニスと申します」
「やっと話の分かる人が出てきたみたいですな。私は、商人のギルマンと申します」
ギルマンね。今、この情報がカメラを通じて、俺の商会や暗部全体に共有されている。名前から、どこの商人でどのような商売をしているのか、全力で調査が始まっている。
「さっそく話を始めましょうか。私どもの主が、あなたよりお金を借りたとのことですが、いつどこでいくら貸されたのか、説明してもらってもよろしいですか?」
「ケープマインの私の商会で、1ヶ月ほど前に貸しております。金額は金貨50万枚ですね」
「金貨50万枚……ちなみに、何に使われるか聞いていますか?」
「いえ、それは話すことができないと言われたので、いくつか話をして担保としてフレデリクの街を差し出すと言われたので、街の権利書類をお預かりして、直接フレデリクへ向かうように言われましたので、商売のついでに訪れた次第です」
「なるほど。では、街の権利書類を見せてもらってもよろしいですか? 後、一緒に証文も見せてもらってもよろしいですか?」
「……さすがに、お金を準備していただかないと、書類関係は見せるわけにはいきませんね」
「ふむ、そうなると……こちらとしても、本当にお金を貸しているのか判断できませんので、お金を準備するわけにはいきませんね。少し昔に違う国で、領主が街にいないタイミングを狙って、領主にお金を貸したという商人が、証文を偽造してお金を騙しとったと言う話がありますからね」
「なっ! 私を侮辱する発言をするのですか! ケープマインで一番の商会の私を侮辱すると言うことですか! 敵対すると言うのでしたら、フレデリクとリーファスへ向かう商人に声をかけて、物流を止めることだってできるのですよ!」
「商人たるもの、自分の目で見た物以外信じないと思いますが、あなたが私の立場で、自分の目で見てもいない証文と権利書類が本当に存在すると、信用できるのですか?」
「あなたの立場は関係ないでしょう。私は、この街の領主から書類をお預かりして、証文もこちらが持っているのです。あなたたちは払うのが常識でしょう」
「ふむ、領主から預かったと言っていますが、姿を見ているのですよね? それと領主のフルネームを聞いてもよろしいですか?」
「もちろんです。私の商会まで来られて、そこで書類を受け取り、証文を書いております。フレデリクの領主の名前は、フレデリク・フォン・シュウですよね。何故そんなことを聞くのですか? 何故笑っているのですか!」
領主の名前を聞いて、クックックと笑っているゼニスに、金を貸したと言っている商人がキレている。
「そもそもの話ですが、シュウ様がどういう流れでこの街を手にしたか知っておりますか? その中で因縁のあるケープマインに、シュウ様が行くわけないと思いますがね」
「街を得たのは、フレデリクとリーファスの戦争で、勝利したからに決まっているじゃないですか。当時住んでいたフレデリクの街の領主を引き継いだと聞いています。リーファスには代行を派遣して、管理させていたことは知っています」
「あなた、もう少し情報を正確に仕入れるべきですね。商人には向いていないのではないですか?」
「いい加減にしてください! 私はお金を貸している立場なんですよ! それなのにそんな態度をとっていいのですか!」
「話になりません。大方、シュウ様がいなかったときに、ここを管理していたアホ貴族の作成した、権利書類を掴まされたのでしょう。全部を説明してあげる必要はないのですが、簡単に教えて差し上げましょう。
シュウ様の能力を欲した国王が、シュウ様をケープマインの鉱山を使って陥れ手に入れようとしたのを、全てはねのけ樹海へ逃げ、街を作ったのです。国家反逆罪にされていましたが、冤罪による物だったのを認めさせ取り消させています。
取り消されシュウ様の元にフレデリクとリーファスが返ってくるまで、管理していた者たちがいたのですが、そいつらが不正を行っていたりしたので、排除しているんですよね。その親族にでも騙されたのではないですか?」
「ダマって話を聞いていれば、こちらを侮辱するにもほどがあります! あなたでは話になりません! 私がお金を貸した本人である、領主を呼んできなさい!」
「はぁ、どうしようもないバカですね。本当に領主に会っているのであれば、私たちと会った時に気付いていないとおかしいんですよ。そもそも、フレデリクを嫌っているシュウ様が、自分の名前を名乗る時に、フレデリクを名乗るわけがないんですけどね。そうですよね、シュウ様?」
おっと、俺に話の流れが来たな。ゼニスに呼ばれたので、ゼニスが立ち上がった場所に俺が座り、
「そうだな。フレデリクの元領主と同じに見られるのは嫌だから、フレデリクを名乗ることは一生ないだろうな。そもそも家名を名乗った事なんて、無いから俺が借りたとなれば、シュウとしか名乗らないだろうな」
「……ゼニス殿、若造を私の前に出して、話を混乱させるのは止めていただきたい。私は領主を呼んで来いと言っているのに、こんな奴を話の席に座らせるとは……」
暴言を吐いた商人と護衛が、絶句している。おそらく今回お金で雇われた護衛のシングルの冒険者5名が、メイド姿のシュリとクシュリナに圧倒されているのだ。
「ったく、話の流れで分かれよ。俺がその領主だよ。そして、今怒っているのは、護衛を務めてもらっている妻の2人だ。戦争で活躍した2人でもあるぞ。俺の顔を知らないで、金を貸したとかバカも休み休み言えよ。本当に貸したのなら、騙されたってことだろうな」
「シュウ様、話の流れを考えれば、不正をして追い出された奴らとグルになって、フレデリクを奪おうと思っていたんじゃないですかね? いくら何でも、ただの護衛でシングルの冒険者パーティーを雇うのは、明らかにおかしいです」
「合法的に手に入れるために、強引に話を進めてこちらから手を出させて、反撃するためのシングルなんじゃねえのか? 俺たちがいなければ、この5人と仲間の10人がいればフレデリクを制圧できると、おもっているんじゃないかな?」
俺たちが呑気に話していると、
「ふざけるのもいい加減にしていただきたい! さっさと金貨50万枚を用意するか、領主を呼んできなさい。そうしないと、実力行使をします」
「だから、目の前に領主がいるだろうが。言っておくけど、後ろの護衛の5人、どういう契約をしているか分からないけど、実力行使に出たら犯罪の称号がつくから注意しろよ」
「訳の分からないことをいうな! 私を侮辱した罪は重い、契約に基づきフレデリクを接収します。皆さん制圧してください」
商人が護衛に向かって指示を出した。
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