1878話 ヘンテコなトラブル
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今日も自分の執務室で仕事をこなしていると、グリエルが面会を求めてきた。俺が呼んでないのに、この時間に来るのは珍しいな。なにかあったか? ガリアやゼニスもいるな。
「呼んでも無いのにこんな時間に来るのは珍しいな。緊急の要件か?」
「ついさっき上がってきた報告書なのですが、シュウ様が帝国や王国で商人たちにお金を借りて、近くのシュウ様の街へ行けば金を返すと言って、証文を受け取ったそうです。その証文を持ってきた商人が、金を返せと言ってきているようです」
「はぁ? なんだそれ。そもそも、俺が金を借りるのに適当な商会に顔出すわけないじゃん……それに金が必要ならDPで出しても、自分の商会で引き出してもいいんだから……ん? 帝国や王国? もしかして同じ話が複数あるの?」
「そうなんです。100パーセント詐欺なのですが、証文を偽物だと証明することができないんですよね」
「どういうこと?」
「えっと、証文自体は本物なのですが、証文に使われたサインなどを偽物だと、証明する方法がないと言うべきでしょうか。そもそも、シュウ様はサインとかをされないので、証文に使われたサインを本物とも偽物とも証明する方法がないんです」
「そう言われればそうだな。サインなんてしないで判子だから、手書きのサインなんて無いよな。ゼニス、こういった場合の対処法とかは、何かあるか?」
「そうですね。典型的な詐欺ですが、複数同じ案件があるので信じさせる何かが、あったのだと思います。それが物なのか何なのかはわかりませんが、商人が騙されるのですから、それなりの理由があったのだと思います。
後は、商人がシュウ様の存在をでっちあげて、貸してもいないお金を貸した風に思わせて、多少なりとも金をむしり取るのが目的の可能性もありますね」
ふむふむ、商人が騙されたか、商人が領主代行をダマそうとしているのか、現状ではどちらもあり得るって感じか。どっちだったとしても、詐欺が絡んでくるってことな。
「ゼニス、お前って広く顔を知られている方か?」
「えっと、それは商人にってことでしょうか? それなら、あまり知られていないと思います。ゴーストタウンで実際に顔を合わせて取引することはありますが、他の街まで出向いて取引することはそう多くないですからね。名前だけは一人歩きしているようですが」
苦笑しながらそんなことを話してくれた。
「よし、面白そうだから会いに行ってみよう。ゼニスも一緒に付いてきてくれ。護衛として、シュリとクシュリナも付いてきてくれ。2人は久しぶりに、戦闘メイド服を着てもらえないか? 見た目で護衛だと分からないように、カモフラージュしておきたい」
2人は難色を示したが、久しぶりにあの頃の可愛い姿を見てみたい、と言うと、照れながらだが準備してくれることになった。ここ数年使うことの無かった戦闘メイド服だが、最後に調整した時から体系が変わっていないのか、すぐに準備ができたようだ。
2人が準備をしている間に、俺はゼニスと方向性を決めることにした。1つ目は、証文に対して絶対に金を払うことはしない。偽物だと言うことを、何としても証明する。2つ目は、話が面白かった場合には報奨金みたいな形で金を出す。だけど、これは今回限りだと念押しする予定だ。
もし、面白い話をすればお金を貰えるとなれば、バカな奴が増えるからな。そもそも、ダマすダマされる奴が面白いことを言えるとは思えないんだけどな。
「ご主人様、準備が整いました。今回は、ゲートを使われると言うことですが、それでよろしいですか」
久しぶりに見たシュリたちのメイド姿……うん、悪くないな。なんというか、夜着てこられてご奉仕なんかされたら、今とは違う意味ではっちゃけそうだな。
「その呼び方も久しぶりだな。なんか新鮮だけど、むずがゆく感じるわ」
「クシュリナ、今度する時はメイド服もありみたいですね。ご主人様は、意外にコスプレが好きかもしれませんね。色々試して、皆さんに報告する必要がありそうです」
「こらこら、人の性癖をこんなとこで話さないの。みんな可愛いんだから、どんな格好をしたって似合うよ。夜の営みに関しては、人がいない所で相談してほしいんだが」
2人が確信犯のような顔をして、こちらにニコっとスマイルを見せた。相変わらず俺の奥さんたちは、積極的だな。最近は月に半分ほどしているが、夜一緒に寝る回数が減ったせいか、1回1回が濃くなってるんだよね。チビ神の性欲増進(妻限定)を授けられてから特に……
干からびるから、マジで止めてくれ。
っと、それはいいとして、面会予定をちゃっちゃと取り付ける手配をしておかないとな。
「グリエル、今のところ何件報告が上がってる? 5件か……同時に同じような案件が5つとなると、組織的な何かを感じるな。面倒なことにならんと良いんだけどな。今からすぐに1つ、昼食後から1時間刻みで4つ面会の予定を入れさせろ。領主の代わりにたまたま来ていた、財務関係の人間が対応するみたいな感じでよろしく」
グリエルたちに領主代行たちへ、急遽話し合いができるようになったと、商人へ伝言するように命令してもらった。
俺たち4人は準備が整ったので、一番初めに面会する商人へアポを取ってもらわないとな。始めに向かったのは、フレデリクだ。俺が初めていった街でもあるな。
「急に押しかけてすまんな。何か良く分からないけど、面白そうなことになっているから、自分の目で確かめに来たよ。証文を持っている商人に、すぐ領主館に来るように伝言してくれ。面会する立場は……フレデリクとリーファスの財務系を担当している人物、ということにしてくれ。面会はゼニスを中心に話を進める」
ここで大事なのは、嘘を一言も言っていないことだ。ゼニスは実際に財務関係を担当しているし、俺は領主ではなく執事みたいな立ち位置で話し合いに参加して、シュリとクシュリナはメイドとしてその話し合いで、お茶などを準備する感じだ。
「それにしても、こういった服は着慣れてないからきつく感じるな。少し動きづらい感じがするわ。無理に動いたら破れそうで怖い」
「ご主人様、とてもお似合いですよ。あっ、ご主人様が執事という立場ですと、ご主人様は拙いですね……シュウ様も拙いですから、シュウさ……んでしょうか?」
シュウさんと呼ぶときに、ちょっと照れながら言うあたりシュリらしいな。
「ん~俺の名前は、呼ぶ必要ないかな。ゼニスの事は様付けで呼んで、俺の紹介はゼニスから御付きをしている人くらいの紹介でいいかな。領主の俺が御付きをしてはいけないなんていうことは無いから、嘘にはならんだろ? 嘘をつくのは二流以下だからな」
ゼニスが悪い顔をして、クックックと笑っている。
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