1862話 強敵殺し
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結論から言おう。1階最終フロアの戦闘は、負けた。
7割くらいの魔物を倒すことに成功したのだが、やはり指揮官っぽい魔物がいたのが敗因だろう。あいつのせいで、倒しても倒しても陣形を崩すことが出来なくて、最終的には専用機を3体とも壊されてしまった。
人造ゴーレムたちは、Sランク相当の強さはあるのだが、魔物との戦闘経験が少なく、自分より早い魔物に連携を取られて、胴体に噛み付かれた後に腕をもぎ取られたりなどして、スピードで戦闘する魔物には勝てなかったのだ。
反射神経だけでは覆せない速度は、やっぱり駄目だね。バザールの専用機は重装甲だったけど、人造ゴーレムはノーマルのやつだけだったからな……
ちなみに俺の専用機は、6匹目を倒した後に死角から攻撃されて、地面に押し倒されて腕や足をもぎ取られてご臨終でした。死角がないはずなのに死角からって、おかしいと思うでしょ?
それがさ、全周囲が見えていても死角って存在するんだよね……倒した魔物が消えると同時に突っ込んできたからね。あれはさすがにかわせないっしょ。
次にバザールの重装甲だが、4匹目を倒したところで1匹だけいた、ヘビタイプの魔物に締め付けられて、内部が壊されて動きが鈍ったところで、止めを刺されて終わった。
最後の綾乃のマルチウェポンタイプだけど、俺たちがやられてから1時間くらい暴れまわってたな。一時も同じ場所に留まらず、周囲の状況を完璧に把握しているような動きだったな。合計で52匹倒したところで、ダメージが蓄積して動きが鈍くなり、タフネスがないので倒されてしまった感じだな。
専用機を操縦するコクピットから降りてきた綾乃は、悔しがっているかと思ったら、めっちゃすっきりとした顔をしていた。
「52匹か~まぁまぁ頑張ったかな。最後の攻撃はハンマーじゃなくて斧だったら、スコアをもう1個伸ばせたかもしれないわね……って、何よ? 私が落ち込むとでも思ってたの? ロボットは壊れてなんぼよ! Sランクの魔石を24個使ったけど、私が倒した魔物の数を考えれば、かなりのプラスでしょ?」
そうなのだ。Sランクの魔石は魔物にもよるが、フェンリルで見ると大体10分の1のDPで召喚が可能なのだ。今回攻めてきた魔物のレベルを考えれば、3匹も倒せれば魔石の召喚DPが相手の魔物の召喚DPを上回るのだ。
そこに賢者の石や金属の召喚DPを考えると……4匹も倒せば、お釣りがくるくらいには得をする計算だ。道中の魔物が役に立たなかった分、ここで回収できたと思えばいいだろう。
ちなみに、ダンジョンバトル中に自分のダンジョン内で倒された敵性魔物は、ダンジョンに吸収されてこちらのDPになる。
こういうルールでもないと、この負け試合だと思われている変則ダンジョンバトルは、絶対に受ける奴がいなくなるからな。多数に攻められるとか、DPの無駄使いにしかならんもんな。それでも行われるのは、強い奴がやられるのを神が見たいためだな。
強い奴がやられると、なんかスカッとするんだとさ。気持ちは分かるが、やられる方からすればはた迷惑な話である。
で、今は綾乃の作ったデストラップの2階を魔物たちが進んでいる。その数残り1匹。
1階を突破できたのは、大体20匹ほどで良く分からん亜人の指揮で侵攻してきているが、初めのデストラップで半数が一気に死んだ。ダンジョンの典型的トラップ落とし穴の下に、剣山が用意されていて自重で体に穴が開き30分くらいでDPに変わった。
次に綾乃が準備したのは、死に覚えゲーでも出てくる、巨大な刃物の振り子だ。普通の刃物だったら、ここまで来たSランク相当の魔物には聞かなかったのだが、ここで綾乃が準備したのは、魔力を湯水のように消費して作った、アダマンタイト製の高周波の刃物だった。
一番タフそうだったアルマジロっぽい魔物が、自分の身を盾にして止めようとしたのだが、硬い皮を半分以上切り裂き絶命させたのだ。止められた刃物は一時的にふり幅が狭くなったが、ダンジョンのトラップなのですぐに最大まで戻った。
その振り子が合計で10個、そして嫌らしいことに、あまりに体が大きいと刃と刃の間に収まらないので、体が削られてしまうのだ。タイミングもバラバラで、通すつもりないんじゃねえか? って思ったね。でも、よくよく考えたら、人間だったら余裕で通れるトラップなんだよね。
そこでまた半分が脱落して残り5匹。
綾乃が次に準備したのは、これまた古典的なトラップで巨大な岩を転がして、すり潰すタイプのあれだ。巨大な岩じゃなくて、DPで呼び出したアダマンタイト製で直径3メートルはある球だ。
直径3メートルということは、隙間がほとんどない状態で転がってくるので、高さが3メートル以上あるとかがんで通る必要があり、そこまで大きいと途中で逃げるために用意されていた、横穴に入れずに潰されて終わりである。これも人間なら、簡単に回避できる罠だな。
ここで司令官っぽい亜人が死んで、他にも3匹が死んだ感じだ。で、残り1匹。
結局残ったのは、動きの速いオオカミ系の魔物だった。クロやギンより小型で、体高は1メートルちょっとで、頭からお尻までで3メートルは無いくらいだろう。
綾乃が準備した4つ目のデストラップは、また落とし穴だった。でも、この落とし穴は絶対に落ちないといけない、通路タイプの落とし穴なのだ。そして、よく見ると人間用にしっかりと梯子が付いているのだ。
人間相手には大したトラップではないのだが、魔物が相手となるとかなり凶悪なトラップになるな。底にはまた剣山の様なトラップがあり、落ちればひとたまりもないのだが、そこから5メートルほど上に出口があるのだ。人間なら梯子を下りるだけなのにな……
オオカミの魔物が落ちた……
「マジか! 初見であの通路に入れるっておかしくね?」
目の前で起きたオオカミのありえない動きに、俺はビビってしまった。
「何言ってんのよ。あれくらいできてもおかしくないでしょ。本命はこの後のトラップよ。あのサイズの四足歩行のオオカミには、難しいんじゃないかしら? もっと小さければ可能性はあっただろうけどね」
次は、さっきのトラップの逆パターンだ。梯子を上っていくタイプなのだが、今生き残っているオオカミでは、壁を三角飛びみたいに蹴って進むには大きく、足を突っ張って背中を押し付けて上るには小さすぎる。
いわゆる今攻めてきている魔物では、詰みの状態である。
綾乃は魔物を配置せずに、トラップだけで撃退するように2階を作っていたのだ。しかも、大きすぎると通れないと言う、強い魔物にとっては地獄のようなトラップである。
実況者も観戦していた神たちも、大ブーイングだけどルール上何の問題も無いので、
「文句を言うくらいなら、初めから禁止しておけってんだよ!」
神界に届くように念を込めていってやったさ。明日は突破するみたいなことを言ってるけどさ、綾乃の作ったトラップの1割もまだ判明してないんだけど、大丈夫か?
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