1850話 綾乃出陣
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あれから2日後に教皇から追加情報が届いた。どんな調べ方、どんな聞き方、誰に聞いても、魔力爆発を起こした禁薬について、知っている者はいなかったらしい。教皇派の枢機卿は、名前を聞いたけど忘れたナンチャラ王国に圧力をかけただけで、方法までは知らなかったという結論だった。
情報を得るために禁薬の話をしているため、教皇だけは禁薬の存在を知ってしまった。レシピは存在しているが、教皇には知ることは現状不可能である。もし何か別の理由で知った場合も、すべての情報を破棄するように命令しておいた。
こうでもしないと、あいつは禁薬を使うと考えているからだ。獣人やハーフを奴隷として扱えなくなったとはいえ、奴隷がいなくなったわけではない。大分前に労働力にするために、聖戦と称して他国へ奴隷狩りにいってたしな。
そう言った一方的に邪教の人間と決めつけ、奴隷に落として労働力にしているのが聖国だからな。禁薬を使えば、街の一部が吹っ飛ぶって言うなら、邪魔な街……俺の支配下にある街を、吹っ飛ばす可能性が出てくるので要注意が必要なのだ。
俺のリストにはなかったが、バザールの召喚リストには何故か禁薬のレシピがあったのを、少し前に発見した。
ダンジョンマスターの能力では、レシピがどこにあるかまでは検索できないが、ダンジョンマスターの能力で召喚したレシピにかかれている材料は検索できるので、専属で検索し続けるようにした情報端末を、至る所へ配置して誰でも確認できるようにしている。
初めはスプリガンの皆さんに頼もうかとも思ったのだが、グリエルから待ったがかかり、レシピの内容や素材の名前が分からない状態で、情報端末を庁舎にセットしてほしいとお願いがあり、庁舎の人間が複数人で1時間に1度検索ボタンを押し、結果を共有するようになった。
素材毎に光点の色を変え、一般的に大量に出回っている素材もあるため、それらを省いた5つの素材が表示されるようになっている。光点が5つ集まった場所があったら、最優先で知らせてもらえることが決まっている。
すべての元凶は、そのナンチャラ王国にありそうだな。禁薬で検索しても、その存在を確認できないので、収納のアイテムに入っているか、存在していないと思われる。禁薬については、ゴーストタウン以外で使われると、被害が数倍……下手をすれば十数倍に跳ね上がるので、絶対に見逃せない。
なので、禁薬だけは専属のオペレーターが、8時間交代で1日中監視を続けている。このオペレーターは借金奴隷でお金を稼ぎたい人を募り、単調だけど重要な仕事として斡旋している。本人たちは何をさせられているか分からないが、1分毎に検索ボタンを押させ、光点が現れないか見てもらうだけのお仕事だ。
個人的に、自動でクリックを続けるシステムとかを、導入したいのだが……ダンジョンマスターの能力で検索を使えるタイプの物は、そのアプリみたいなのを起動していると、他のシステムが立ちあげられないので、検索ボタンは誰かが押さないといけないのだ。本当に面倒である。
元凶が判明したところで、綾乃に情報をリークする……漏らすと言うと語弊があるが、知らせないとあいつが暴れ出す可能性があるので、仕方がなく教えたことをそう表すことにした。
その情報を受け取った綾乃は準備した全戦力と、自分用に改造した強化外骨格を魔導列車に積み込み、ライガを引き連れてナンチャラ王国へ向かって行った。
位置的には、聖国と王国の緩衝地帯である小国群で、比較的樹海に近い位置にあるようだ。そして、街の数は5つと多くなく、総人口は10万人ちょっととの事。
俺の街や三大国から見れば多いわけではないが、小国群で見れば中堅位の人口がいるだろうか? 詳しく調べたことが無いので分からないが、そのくらいだと思う。
ナンチャラ王国も掌握範囲に入っているのだが……ダンジョンの形跡は見られないんだよな。街の外は格子状のエリア掌握だったので、万全を期するために領土と思われる場所から、隣の国までを全部掌握したのだが、それらしき場所は見つかっていない。
禁薬に関しても今のところ見つかっておらず、素材も1つだけしかこの国に無いことが判明している。
本当にどうやって手に入れたのやら? かつて作られた禁薬がたまたま残っていたのか、偶然の産物で出来た禁薬を入手したのか……それもと、代々受け継がれてきた物の中にたまたまあったとか?
この可能性を考えるのは、時間の無駄だな。
そういえば、ピーチから魔力爆発……マナエクスプロージョンの話が入ってきたんだった。
改めて詳細を見ると、頭がおかしくなりそうだ。誰が禁薬って言葉を使い始めたか分からないが、この禁薬については、俺が召喚できるのである程度詳細が分かっている。
説明には、薬を服用したモノの魔力を暴走させ、周囲を焼き払う薬。と表示されている。それらを踏まえて色々調べていたピーチから、予想と仮定を組み合わせた報告書が上がってきたのだ。
禁薬は周囲を焼き払うだけの魔力を、服用者から引き出すために、寿命や生命力までを消費して魔力に変換したのではないか? というものだった。仮定でしかなかった寿命を使ったと言う部分が、真実味を帯びてきた形だ。
禁薬は、一定の威力になるまで爆発は起こせなかった……と奴隷の少女の話していたそうだ。死にそうで苦しくて、爆発してほしいと効果時間中に思っていたが、最後の状態になるまで発動は出来なかったらしい。
その時まで意識があった事にビックリだが、その状態になっても詳細を覚えていられるほど、苦しい状態だったのだと考えると、少し足が震えてくる……
生命力を使ったというのは、助けた時に死にかけていた状況を考えたのだと。でも、この少女の体力を搾りつくしたとしても、あの爆発は起こせないだろう。正直なところ、俺たちでも全魔力を振り絞っても、同じことは無理だと言う規模だった。
そこで仮定として、この少女が寿命を迎えるまでの数十年を搾りだし、マナエクスプロージョンが起こったのであれば、可能ではないか? という話が出たらしい。そして、見た目がおばあちゃんだったのに、寿命を1年延ばす丸薬を飲ませたら、年相応まで見た目が戻ったこともあり、有力視されている。
そして、書物を調べていた妻たちから、興味深い情報が上がってきた。
魔力爆発やマナエクスプロージョンについて記載のありそうな書物を、四大精霊に召喚してもらい情報を集めてもらっていた妻から、禁薬が使われた戦争がかつてあったのではないか……という記載を発見したのだ。
この大陸ではなく、俺が掌握している大陸の1つで、1000年ほど昔の話で、特攻兵が急に爆発をして、周囲1キロメートルほどを焼き払う自爆戦術が、何度も行われていた記載があったのだとか。
よく見つけたな……と思う細かい記載だった。しかも自伝小説的なあれだったので、書いた人の主観で書かれているため、分かりにくかったのだ。
そこから、当時の国の情報を引き出して、それらしい書物を年代で召喚して、情報を集めてくれたようだ。
その中に1つ興味深い情報が、禁薬と思われる薬を使っても、レベルが高いほど負担が少なく、5~6回飲んでも死ぬことは無かった……と表記があったのだ。おそらく、捕らえた敵の将兵を奴隷にして、敵陣で禁薬を飲ませたのだろう。
爆発後に向かうと、倒れてはいたが生きており、同じような作戦が5回使われたと、戦術教本らしきものにかかれていた。
奴隷の首輪を使って、自陣に戻らせ禁薬を使わせる……鬼畜の所業だな。奴隷の首輪で命令されたとはいえ、味方を大虐殺してしまったのだからな……
さて、綾乃の位置は……後、5時間もすれば、件の王国に着くな。その国のトップや、情報を知っていそうな人間は捕らえるように言ってあるし、監視の意味を込めてレイリーや副官たち、ディストピアの軍の精鋭を同行させているから、大丈夫だろう……大丈夫か?
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