1845話 懐かしい人
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「シュウ様! お久しぶりです!」
ゴーストタウンで一通りの治療を済ませ、排泄の問題もあるので部位欠損して、錯乱している人たちは睡眠状態のまま治療用の水槽……湯舟に突っ込んでいる。部位欠損していても、比較的落ち着いている人たちは治療の説明をして、こちらに協力してもらっている。
片腕などの欠損の人は、先に治療を始めていた人たちが、「もう直り始めている」ということを説明してくれたので、すぐに治療に移ることができた。それでも20人ほどなので……後160人近くは、睡眠状態で湯舟に突っ込んでいる。
湯舟の温度は体温より少しだけ高い37度に設定しており、既に吸引が始まっている。排泄管理と褥瘡対策は問題なさそうだが、この状態で覚醒させると困るので、DPで召喚した魔法の道具を使い、身に着けることで睡眠状態を維持する呪いの道具を全員に装備させている。
そこまで作業が終わり、休憩を取るためにゴーストタウンの領主館に戻ってきたところ、先ほどの挨拶があったのだ。
久しぶりと言われたが……身長が190センチメートルを超えていて、軽量級のボクサーや格闘家をそのまま大きくしたような体系で、細身なのに筋肉がしっかりとついていることが分かる青年が俺に頭を下げているのだ。
俺も訓練やトレーニングをしてそれなりの体つきになっているが、そんな俺をしてもちょっとカッコいいと思うほどの肉体美を持っていそうだ。
「シュウ様は、混乱しておられるようですね。この青年は、ライガですよ。何年か前に聖国との戦争で活躍したあの子です」
隣にいたレイリーに紹介され、記憶を掘り起こしていく。
うん、俺が知っているライガは、小柄で痩せ気味の子どもだったはずだ。正直あのライガとは思えない。シュリと同じ呪い、英雄症候群にかかっている少年だったはず。
それなのに目の前にいるのは、俺より大きくなって顔一つ分は高いぞ。
「混乱が収まったようですので、ここにライガがいる理由を説明します」
そう言って、レイリーが説明を始める。
ライガは軍人としては強すぎるので、軍人と一緒に配置するわけにはいかなくなったようだ。軍人……特にライガの立ち位置である、戦闘を中心にする指揮官ではない兵卒の位置に配置するには、問題があったのだ。
いい方は悪いが、兵卒の立ち位置は誰がいても、一定以上の役割をこなせればいいのだ。特級戦力のライガを使うと隊列に乱れが出てしまうため、軍人としては使い物にならなかったのだ。
だけど、1人で戦場をひっくり返せるライガは、軍人というより傭兵の様な立ち位置に変更されたらしい。
集団の強さは捨てて、1人で強くあるための技術や知識を詰め込んでいるらしい。そして驚いたことに、つい先日レベルがカンストしたらしい。レイリーでも簡単には勝てないほどの、強者になってしまったのだとか。
レイリーの評価では、魔法無しの近接戦ならシュリも凌ぐ強さを手に入れたらしい。何でもありになれば俺に勝てる人間はいないらしいが、限定された空間で戦えば俺でも苦戦は必至らしい。
しかも、ライガのレベルがカンストした原因は、チビ神にあるらしい。俺の勢力にいる、呪いを持ったライガを面白いと思ったチビ神が、俺の手ごまとして活躍させるために縛りを課したらしい。
俺と敵対しない限り、どこまでも強くれるという意味不明な縛りと、ライガの頑張りによってレベルがカンストしたんだとさ。でもさ、これ以上強くなれなくね? って思ったら、訓練によってステータスが地道に伸びているらしい。
「自分は、シュウ様に恩を感じています。拾ってくれたのはゼニス様ですが、母や妹の命を救ってくれたのは、シュウ様の奥様のピーチ様だと聞いています。だから、自分はシュウ様のためなら修羅にでもなります」
……頭はあまり成長していない気がする。お前の話だと、俺まったくかかわってないぞ……
「シュウ様、ゼニスを救ったのもピーチ様を救ったのも、シュウ様ですよね。シュウ様が救った人が自分を助けたのですから、すべてはシュウ様のおかげなんですよ」
うん、意味が分からん。
「で、ライガが今回ここにいる理由はなんなんだ?」
「おっと、忘れていました。ライガは1人で国に匹敵する強さを持っています。魔法は使えませんが、特急戦力であることは変わりません。今回の裏にいる敵に対して、切り札として使おうと連れてきました」
なるほど、犯人が判明したら、ライガを解放して街で暴れさせるようだ。シュリ以上の力を持っていれば、城門なんてあってないようなもんだからな。
装備は成長しきったので、専用の物を準備しているらしい。スカルズの装備をカッコいいと言っていたので、あのスーツを準備してもらったらしい……俺は作ってないぞ。
犯人はバザールと綾乃のようだ。あの2人はライガの生い立ちを聞けば、全力で支援するだろうな……多分だけど、スカルズたちのスーツより数段上の代物になっているだろう。後でしっかりと確認しておかないとな。
魔導無線機も付いているので、随時指示を出すそうだ。
一番驚くことは、昔は猪突猛進のように突っ込んでいくイメージしかなかったが、今はそんなことは無く向かってくるものだけを返り討ちにするらしい。
この理由もわかりやすい。後出しじゃんけんのように、攻撃されてから動いても間に合うため、攻撃してきた者たちを敵として確認するようにしたらしい。
細かい判断はできないけど、受け身でも問題ないライガだけの、敵判別方法だな。
「でさ、気になったんだけど、何で暗部の鬼人たちもいるんだ?」
「決まっているじゃないですか。ライガに付いていける軍人がいないからですよ。いや、いることはいるのですが……大隊長クラスで無いとついていけないのです。傭兵の様な立ち位置なので、身体能力の高い鬼人の皆様に付き人をお願いしています」
あ~軍人の中でついていけるのが、指揮官クラスの軍人だけなのか。それに、この鬼人たち見覚えがあるぞ。確か、鬼人の中でも戦闘能力に特化したメンバーじゃなかったか?
ここまでの人員をつけないと、付いていけないとか相当バグってるな。
「そうだ。襲撃犯からは何か情報は引き出せたか?」
「まだですね。尋問レベルなので、相手もこちらのことを見くびっているのかもしれませんが……」
「はぁ? 何で尋問なんだ? 混乱に乗じての襲撃だろ、拷問しろよ。誰もやらないって言うなら、俺がやるわ」
そう言って動き出そうとすると、レイリーに止められた。
俺があまり拷問とかが好きではないと思っていたらしく、手荒な真似をせずに情報を引き出そうとしていたらしい。いやいや、今までどれだけの人間を殺して貴族も処刑してきたと思ってるんだよ!
って思ってたら、襲撃者の大半は奴隷だったようで、首輪の所為で話せないらしい。解除できる人員がゴーストタウンにいなかったため、ディストピアから呼んでいるそうだ。
それなら俺が外せるということで、サクッと外して情報を引き出そうとしたが……話す気配がない。
「よし、このタイプは拷問しても何も吐かないだろう。今までの経験をもとにして言えば、多分人質がとられているタイプだしな。しゃべったら人質が殺されるんだろうな……生きているかもわからんのにな。
ツィード君とシルクちゃんを呼んでくれ。あの2人なら、確実に情報を引き出してくれる。自殺しないように奴隷の首輪をつけなおして、薬で眠らせておいてくれ」
情報を引き出し終わっていると思っていたが、色々な事情が重なりまだの様だった。
強制されて奴隷の首輪をつけていたかと思ったが、どうやら自分の意志であの首輪をつけたようだな。何があっても情報はしゃべらないという表れだろうか?
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