184話 頭の悪い奴は面倒くさい
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突然現れた魚人の女性が助けを求めている……村で何かあったのだろうか?
「落ち着いてください、救援に行きますが場所がわからないので、案内してくださいますか?」
ハッとした顔をして俺たちの事を案内し始める。泳いだままだと話がきけないので、甲板に上がってもらい方向を指示してもらいながら話を聞くことにした。
魚人の女性の話をまとめると、島の近くで遭難した船があり様子をうかがっていると助けてほしいとお願いをされたため、迷った末に十人程を救助そして島へ連れて行ったとのこと。
島に連れて行ったら急に態度を変え村の人々を殺そうとし始めたらしい。
その時にちょうど俺たちの街に行っていた人たちが帰ってきて膠着状態になった様だ。隙を見てシュウに救援を求めるために目の前の女性を使いに出したようだ。
助けてもらって恩知らずな奴らだな。とはいっても大体どこの人間か予想できるだけに、イラッとするな。急がないとまずいので、機関を全力で回しさらに水魔法で水流操作を行い今出しうる最高速度で魚人の島へ向かう。
島が見えてきた。予想より少し大きい気はするが住んでる人数では、やはり農地としては足りないだろう。できたとしても連作には耐えれず、その内農地が枯れてしまう気がする。
島に近づくと二〇〇メートル以上離れているはずなのに、イラッとする金切り声が響いていた。船で近づいていくと海岸付近でにらみ合っている一団がいた。海岸に船をつけ降りようとすると、一番偉そうにしている騎士っぽい人たちに囲まれた人物が、
「お前、いいところに来た。こいつらを殺したら本国で報酬をくれてやるから何とかしろ! ん? そこにいるのは獣人共か? 合わせてそいつらも奴隷として手厚く保護してやるから感謝しろ!」
無言で一気に距離を詰め、顔面をぶん殴る。
「ブギャッ! 貴様! 私に向かって何をするつもりだ? だが今はそんなこと言ってる場合じゃないんだ、そこの魔獣共をさっさと蹴散らせ! そしたら今回の事はなかったことにしてやるから早くしろ!」
「うるせえ黙ってろ!」
もう一度顔面をグーパンで殴りつけて、バックステップでその場から離れる。とりあえず臭かった。ヒキガエルを思い出す醜悪さだった。
「貴様! この方に何をする! 無礼にもほどがあるぞ! 切り捨ててくれるわ!」
偉そうな奴の周りにいた騎士風の男たちが一斉に切りかかってきた。俺の前にはいつの間にか三幼女が陣取っており、その前にはシュリ・シャルロット・リリーが完全装備で立っていた。
敵が十人いるとはいえ、既に六人が俺の守りに入り、残りのメンバーが敵の周りを囲んでいた。相手に勝ち目はない、一人ひとりがシングル以上の冒険者でもなければ無理だろう。
「警告する、武器を捨て両手を頭の上に乗せろ!」
「どんなに娘っ子たちが強かろうと、神殿騎士の精鋭である私たちが劣るわけないだろう! お前らこいつらを殺して武器を奪え!」
「ご主人様、お下がりください。皆さん敵対行為を確認しました。腕や足の一本は切り落としても構いません、一応全員生かして拘束してください。ご主人様を待たせるわけにはいかないので、一分以内に片付けるように」
ピーチの物言いに神殿騎士と名乗った人物はやかんが沸騰したように真っ赤になり、罵声を浴びせて俺の方(ピーチが横にいる)に向かってきた。
間にいるシュリのシールドバッシュをくらって、十メートル以上に吹っ飛ばされてから落ちてきた。それを見た他の騎士風のやつらは武器を捨てて頭の上に手を置くが、敵対行動と判断されたため素手でボコボコに殴られていた。
真っ先に前に出たのは、今回初実践となるネルだった。シェリルに実戦での効果的な攻撃方法を教わりながら、武器を捨てた後に再度抵抗を試みていた騎士風の人たちを蹂躙していた。こんな子供にとか武器さえあればとか戯言を吐いて倒れていった。
縄抜けとかされても面倒くさいので手錠を召喚して、手足に手錠をかけ手が上がらないようにさらに手足の手錠の鎖を手錠でさらに繋げる。外国の映画で囚人がどっかに連れられて行くときのあれな感じだ。歩きにくそうだな。ついでにロープでぐるぐる巻きにしておく。
「こちらの女性に救援要請を受けてここまで来ましたが、大丈夫でしたか?」
「シュウ殿、ありがとうございます」
女性に聞いていた話と違う点はなく、さらに詳しく説明をしてくれた。女性が救援に出てからは、俺からもらった武器を取り出して抵抗したため、ケガをしたのは助けた後に切りかかられた数人だとの事。けが人のところにネルとキリエに行ってもらい治療をさせる。
「うぅ……体が動かん? なんだこれは! この私にこんなことしてもいいと思っているのか? 早くはずせ! お前たち寝てないでさっさと何とかしろ!」
偉そうにしていた奴が騒ぎ出したので、俺は質問してみることにした。
「えっと、あんた誰?」
「高貴な私に向かって、その口の利き方は無礼であろう! そこの後ろの獣人共早くこの縄を解け! 本国に行ったら手厚く奴隷として迎えてやる。ありがt……ブヘッ! 痛いだろうが! 何度も殴るとはなんたるやつだ!」
「お前が誰だか知らんが、ふざけた口を利くなよ? 今この状況を見ればわかるだろ? お前らは俺らに囚われたんだよ。生殺与奪は俺の手にあるってこと忘れるなよ?」
「ふんっ、捕虜の扱いを知らんのか貴様ら、これだから下賤なものたちは困るんだ。戦時条約でも決まってるというのに、こんな扱いしてもいいと思ってるのか? 捕虜に暴行をするのは重大な違反だぞ!」
「偉そうにしてるのは構わんが、言葉に気を付けろよ? 戦時条約? 今俺たちは戦争してんのか? 俺らは剣を向けられたから撃退しただけだ。盗賊行為をしているお前らから、あの人たちを助けるために捕らえただけだ。たしか盗賊は街に連れ帰れば奴隷だったか? それに盗賊なら殺したってかまわないんだぜ?」
「貴様ふざけるなよ! 魔獣に対して盗賊行為とはなんだ! あいつらは魔獣なんだから殺されても仕方がないだろ? ふざけたことを言ってないで早く縄を解け! 今ならバリス様もお許しになってくれるぞ」
「神殿騎士にバリス様ね、お前らバカなの? この世界で魔獣っていうのは、体内に魔石を持っている生物って言っていいのかな? それらを指すんだぞ。それに魔獣なら殺した後にドロップ品を落とすけど、例えここの人たちを殺したとしてもそんなものは落とさん!
ヒューマンも獣人も魚人も精霊種以外の人型生物は人種なんだよ。魚人が魔獣だって言ってるのはお前らだけだろ? 人殺しを神の名の下? 宗教の名の下? 正当化してるふざけたお前らには救いはねえよ」
「ぎざまっ! 神の名を汚すとはいい度胸だ! 天罰がくだるぞ! そこの獣人共早くこの不届き者に天罰をくだせ! そうだ、お前、早くそいつを殺せ!」
アリスがニコニコとした表情で近付いてくる。俺の横を抜けて高貴な人間とやらの前に立ち左足を踏み抜いた。
「ヒギャァア!!!!」
「私たちに誰を殺せですって? 戯言も大概にしてください。天罰とは天からくだされる罰であって、貴方がくだす罰ではありませんよ? 神の名を騙って都合よく真実を捻じ曲げるのはやめた方がいいですよ」
「っ! この糞アマ! 私はバリス教の大司教だぞ! 私が認めればそれが罪となり、天罰がくだるのだ!」
「で? 大司教だから天罰をくだせる? じゃぁ今の状況は? 誰にも罰はくだってないようですがなぜですか? そもそもあなたはバリスという神にあった事があるんですか? その神から天罰をくだす神通力でももらったのですか? 神は魚人を殺せといったの?」
そういえばバリスなんて神はいるのか?
『いないわよ』
あ……そうですか、ありがと。またみてたようだな。
「バリス様は、私たちにバリス教を伝え決まり事を聖典として預けてくださったのだ! それを受け継いだ私たちには、バリス様の教えに従わないものを罰する資格があるのです!」
「論点はそらさないでいただきたい。私はあなたにバリスという神にあった事があるのかを聞いたのです」
「当たり前であろう! バリス様にあって大司教の座をいただいたのだ。だから私にはバリス様の教えに従わないものに罰を与えられる力をもらっているのだ!」
「ふ~~ん、でどうやって罰をくだすの?」
「今はくだせぬが、いずれくだしてやる!」
「それって自分が無能ですって言ってるようなものだってわかってる? ってこれ以上話しても無駄ね。ご主人様、どうなさいますか?」
「そうだな。ちょっとバリス教に興味があるから、拷問でもして情報引き出すか」
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