1833話 遭遇
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俺たちは完全武装で、ダンジョン農園から各地へ出発できる魔導列車を使い移動して、グレッグから帝国へ抜ける唯一の門の前に陣取っている。
ここの門は跳ね上げ式になっており、その距離15メートル。シングルの冒険者なら、なんとかなるかもしれないが……人質として、冒険者を連れている状態では、どうにもならんだろう。時間をかければ別だろうけど、俺たちがいるのに時間なんてかけられるわけがない。
「こいつらの本当の目的ってなんだろうな?」
「シュウ君、さっき考えても意味がない、みたいなこと言ってなかったっけ?」
「いやさ、時間があれば気になっちゃうわけで……あやしい動きをしている奴らも、今のところ発見できていないし、俺たちの戦力は十分承知だと思ってるのに、喧嘩を売ってきたバカがいるんだぜ? たかがシングル程度の力で10人しかいないんだぞ。気になるって」
「確かに私も気になるわ。こっちは帝国だけじゃなく、他の大国の中枢も落としたって、知っている人は知っているのに、10人程度でこんなことしてくるこいつらには、興味が尽きないわね」
ミリーは分かってくれなかったが、カエデは分かってくれたようだ。リンドは、苦笑している。他の妻たちも、半々ってところだろうか?
「どうせ、先に帝国の街に入ってしまえば、こっちのもん! とか思ってるんじゃないの? 帝国の街で暴れて、犯罪だ! とか言って、シュウ様を捕らえるつもりかもしれないよ。捕まえられるかは別として」
そんなことを言ったのは、ネルだ。
「でも、それなら、中立地帯というか、俺の街を占拠する大義名分になるか?」
ネルの言った事を吟味して、大義名分として使われる可能性に思い至る。けどさ、もしそうなら、俺たちがここに陣取っている時点で終わりなんだけどな。
『シュウ様、帝国の冒険者ギルドから追加情報を得ました。あいつらはトリプル認定されてはいませんが、その内に認定される予定だったグループの様です。後1つか2つ、大きな仕事をこなしたら、トリプルにする予定だったとか言っていました』
「グリエル、了解した。で、待っている間に1つ可能性を考えたんだけど、あいつらが帝国の街へ着いて、ディストピアの関係者がその街であいつらと戦闘になったら、中立地帯を治めている俺の落ち度、みたいな感じの大義名分で、俺の街を分捕るつもりなんじゃないかって上がったんだけど、どう思う?」
『ありえない話ではないでしょう。現実的には無理でしょうね……そういうことを聞いているのではないですよね? その可能性は、高いかもしれません。言われてみて、しっくりくると言うのも変ですが、地方領主からすれば、いくら皇帝の命令があっても自分の街で暴れたなら……みたいに考える奴はいるかと。
可能か不可能かはともかく、もしできた場合は、帝国だって追認するだろうと思っての行動かもしれませんね。裏にいる人間が誰か分かりませんが、皇帝に連絡を取ってみます』
グリエルは、そう言って無線機を切った。
あいつらがここまで来るのに、まだ1時間はかかるな。暇だ……
「捕まっている5人の冒険者は、今何を思っているのだろうか? 助けてもらえないと思って、絶望していたりするのかな?」
「どういう状況か分からないので、なんとも言えませんが可能性の1つとして、犯罪者集団と陰で繋がっているということもあり得る話かと」
そんなことを言ってきたのは、生真面目なキリエだ。夜はあんな風になるのに、こういう場面だと優等生みたいな発言が多い気がする。
「確かに、その可能性もゼロではないけど、体力が減っている所を見ると、抵抗して攻撃されているとみるべきだと思うんだよね。追撃された時のために、逃げないようにボコった……とかいういい訳じゃなければね」
捕まった5人が5人とも、多少なりともダメージを負っているようなのだ。仲間だったらこんなことしないだろうし、いくらカムフラージュのためとはいえ、実際に体に残るような攻撃をするだろうか?
色々な事を話していると、ようやく奴らが盗んだ馬車を走らせて、俺たちから見えるところまで来た。
「街道を占拠している一団に次ぐ、即刻街道を開けろ! さもなくば、盗賊として処理する」
「見た所、冒険者に見えるが……その馬車は、商人の物だろう。自分の所属も明らかにせず、こちらを一方的に盗賊呼ばわりするとは……どちらが盗賊か分からんな」
犯罪冒険者が口上を述べたので、俺も返してみることにした。
「盗賊のくせにいい度胸だ。こちらは、帝国所属Aランク冒険者パーティー『鉄の牙』だ。こちらは急いでいるのだ。これ以上、邪魔をしないのであれば、見逃してやるからさっさとどこかへ行け!」
「ほ~帝国所属のAランクパーティーね。分かった、こちらも返答しよう。中立地域を治める、シュウだ。所属としてはディストピアになるが、街をいくつも治めている。いわば国王的存在だな。そんな人物に向かって、盗賊扱いしたのだ。不敬罪として処理する」
向こうは、こちらから逃げるために、早く帝国へ移動したかったのだろうが、知らなかったとはいえ不敬罪が成立する。これで、帝国が何といおうと、大義名分として動くことは出来なくなっただろう。
「中立地帯のトップを装うとは……お前等は捕らえて、犯罪奴隷にした方がよさそうだな」
おいおい、それはタブーだぞ……俺が止める前に、周り動き出していた。
こちらがディストピアの関係者だと、本当に思っていないのだろう。もし思っていたのなら、捕らえた5人を使って、交渉や脅しを使ってくるはずだ。
俺の周囲から飛び出していった、妻と従魔たちが敵に食らいつこうとしている。
そして、後ろで隠れていた従魔たちを見てやっと気付いたのか、
「てめえら! それ以上近付くと、こいつらの命がどうなっても知らねえぞ!」
馬車の中に転がしていた5人を引きずり出して、剣を首に当てている。
「……それがどうしたのです? あなたたちは、不敬罪、殺人強盗、拉致監禁、脅迫罪……等々の犯罪によって、捕まるのです。そして、ここでその5人を殺せば、更に罪科が増えるだけです」
「領主様が、自分の街に住んでいる冒険者を見捨ててもいいのか? そんな悪評が広まれば、住人なんかいなくなっちまうぞ!」
「何を勘違いしているのでしょうか? 確かに領主には、住人を守る義務があります。「なら、見捨て」ですが冒険者は、住人ではありません。あなたも冒険者なら知っていると思いますが、冒険者ギルドに所属していて、ギルドを通じて税金を払っている冒険者は、国の所属ではなくギルド所属の人間になるんですよ。
見捨てるも何も、こちらには助ける義務も義理もないのです。それよりあなたたちは、ここから逃げれたとしても冒険者ギルドから追放され、場合によっては国に追われるかもしれませんね。中立地域とはいえ、皇帝と縁のある人間を害そうとしたのですから」
最前線で犯罪冒険者たちと相対しているシュリが淡々と、こちらの意見を述べていく。
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