1831話 不測の事態
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爺ドワーフどもに罰を言い渡した次の日、庁舎へ行く前に様子を見にゴーストタウンの領主館へ向かっている。昨日の今日で酒は飲んでいないと思うが、アイツラノコトだから……何をしでかすか分からんからな。
「あ~、今日は昨日の爺様方の様子を見に来ただけだから、気にしなくていいよ。むしろ仕事がはかどらなくて、残業とかになると困るから、仕事を優先してくれ。いや、俺を接待するのが仕事って……俺は接待されなくてもいいから、そんなことで怒らない怒らない。仕事が遅れる方が怒るかもな」
そう言うと、やっと自分の仕事へ戻ってくれた。どこに行ってもこんな感じなのが面倒だな。グリエルたちに仕事に入れるなって何度も言ってるのに、一向に無くならないんだよね。グリエルたちの指示が届いていないのか、指示に従っていないのか……
「おぉ~、今日はしっかりと執務室にいるな。爺共、しっかり仕事しているか? って、おい! なんでそんなにやつれてるんだ? 昨日の今日でこんな風にはならんだろ……ブラウニー何があった?」
お目付け役のブラウニーに聞いてみると、昨日の夕食時に水だと言って、アルコール度数30度のお酒を飲もうとして、ブラウニーの逆鱗に触れたらしい。
ドワーフは、アルコール度数40度以下は水だと言って、カパカパ飲むのでその認識で飲もうとしていたらしい。そのため、ブラウニーに見つかって、水と言い張ったドワーフたちの食事が、精進料理になったらしい。
肉と味の濃い食事を好むドワーフに、精進料理か……それでも1日、いや半日でこんな風になる物か?
もうね、別人って言うレベルで、体が細くなってたわ。ここで働いている老ドワーフたちは、ずんぐりむっくりでビア樽体系で筋肉の塊なのだが、何かね筋肉ダルマからちょっとマッチョに変わっていたのだ。
どっちにしろ筋肉ではあるのだが、一回りくらい身体が小さく見えたのだ。食事の所為か? それともアルコールが無いからか?
「ブラウニー、お前たちから見て、減刑してもいいと思える仕事っぷりをしたら、お前たちの判断で罰の期間を短くしていいぞ。だけど、昨日みたいにアルコールが入った物を水と言って飲もうとしたら、ヴローツマインに叩き返すぞ。リンドの弟に仕事をしませんでした、って張り紙してな」
この老ドワーフたちは、領主の仕事をするという契約で、俺が中級の火精霊を住まわせた精霊炉を貸し出しているのだ。それが使いたくて選抜されたドワーフたちなのだが、それが仕事をしないって張り紙されて送り返したら、残った老ドワーフたちにボコボコにされるだろうな。
さすがに、状況を理解した老ドワーフたちは、仕事のペースを上げた。
よし、これで問題なさそうだな。ブラウニーたちに後を任せて庁舎へ向かう。
庁舎へ着くと、グリエルやガリアはすでに仕事を始めていた。本当に仕事ばっかだな……強制的に休みにさせて、旅行に行かせたけど、あれって評価どうだったんだろう? 喜んでいる職員が多かったって言ってたけど、実際どうだったんだろうか?
妻たちが仕分けを始めたので、秘書たちがいる前室に話を聞きに行ってみる。
「あ~あれですね。皆さん、本当に喜んでいましたよ。皆さん、仕事が嫌いってわけはなく、むしろ働けば働くだけ評価されるので、喜んでいる人ばかりです。そのせいで、シュウ様の残業をゼロに……という施策が上手くいっていませんが……」
強制休暇は、好評だったようだ。今度からはしっかりと、休みを取るようにさせないとな。有給休暇って言っても、理解してもらえてないからな。この世界は、商会のトップや幹部でもなければ、毎日働くのがデフォルトみたいだからな……
仕事は好き好んでやってくれているのは嬉しいが、そのせいで残業がゼロにならないって……本末転倒か? その前に、残業しても仕事が終わっていないって言うのは……仕事が多すぎるってことか?
「気になったんだけど、残業しても仕事が終わらないって、仕事量に対して職員の数が少ないのか?」
「いえ……そうことではなくて、仕事ではあるのですが、優先しなくても時間がある時にすればいい仕事を、残業して行っている感じなんです。それも、自分の時間を使って勝手にやっているという体で、残業しているが残業をしていない感じになっているんです……」
自分勝手にサービス残業をしている感じか? いや、サービス残業って、どういう意味だっけ? お金にならない残業を示すならその通りだけど、会社が強要しているって言う条件が付くと、この件はサービス残業じゃなくなるな。
どうでもいいことを考えながら……
「じゃぁさ、その後回しにしてもいい仕事で残業している人を、その仕事に専念させたら、他の仕事が滞るかな?」
「えっと……6割くらいの職員がやっていますので、全員を回すとなると、メインの仕事が追い付きません」
答え辛そうに秘書の子がこたえてくれた。確かに、6割も俺の施策を無視しているとなると……言い辛いよな。
「了解。じゃぁ、メイン……通常の仕事が回る人数を残して、後回しにしている仕事に人を投入するのはどうだ?」
「それなら問題ないですが、それでも残って仕事をしようとする人は出ると思いますが……」
「じゃぁ、面倒だけど、残業じゃなくて庁舎に指定された時間以降も残る場合は、残る理由を出してもらうって言うのはどうだ?」
「それでしたら、全員で通常の仕事を終わらせてから、全員で残りの時間に後回しの仕事をさせても、同じなのではないでしょうか?」
……言われてみれば、専属で仕事させる必要ないよな。
「なら、今日から『就業から30分以降も庁舎に残る場合は、残る理由を先に提出するように!』って通達出してくれ。これなら、残る人がどんな仕事しているか分かるし、もし回数が多いなら人が足りてないってことだよな?」
「そうですね。文言はグリエル様たちと相談して、お昼前には通達を出します」
「よろしく!」
妻たちが仕分けをしている書類で俺が読まないといけないのは……これだな。いつも通りの報告書だな。特に変わりはなさそうだ。
のんびりとしていると、グリエルが執務室に入ってきた。何かあったのか?
「シュウ様、緊急ではないですが、可及的速やかに処理した方が良い案件が上がってきました。ゴーストタウンで問題が発生して、どう対応するのか見当が必要です」
あの爺共、何かしたのか?
「帝国から来た冒険者グループなのですが、シングルではないのですが、シングルと同程度の力があるグループが、ゴーストタウンで専属で働いているこちらの冒険者5人を捕らえ人質として、グレッグへの地下通路を通ってグレッグへ向かっています」
はぁ? 人質? グレッグにすでに移動を開始している? 何が起こってんだ?
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