1824話 仕事をしよう
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勇者たちのことは、しばらくオリバーたちに任せることが決まっているので、調教し終わった後で本来の目的である神授のスキルを奪おう。
昨日は少しげんなりすることを考えさせられたから、頭を切り替えていかないとな! ちゃきちゃきと仕事をするかな!
久しぶりの執務室な気がするが……気のせいだな! 何日か来てなかったから、仕事が溜まっているかと思えば、俺のことを考えた妻たちが必要最低限まで減らしてくれていたようで、予想していたよりもはるかに少なかった。
基本的なトラブルは、項目だけまとめてあり被害者と加害者の数、そして簡単な内容が書かれているだけだった。普段ならこれに細かい内容と、処罰についてみたいなことが書かれている。
トラブルなら、現場で処理できるのに何でこちらに回ってくるかと言えば、統計を取っているからである。各街ごと、各地域ごとなどに分けて分析するためと、俺の街で起きていることに関心を持たせるために、俺に報告書を読ませているらしい。
普通の領主などは、平民たちのトラブルなど気にも留めない。貴族の思考では、あいつらは勝手に増えて税金を少し払うだけなので、多少の増減など気にしないのだ。
それに対して、金を持っている人間たちのトラブルには、敏感である。多少問題がある商会でも、それに見合ったお金を治めるのであれば、不法行為でも簡単に見逃すのが一般的である。
その他にも、貴族が尋ねてきた時には、気に入った女を宛がうこともするのだとか。そうすることでお金を落としてもらい、自分が相手の街へ行った時に便宜を図ってもらうんだってさ。
金をたくさん払う奴は良い住人、少ししか払わないやつは悪い住人、みたいに分けてるんだってさ。
かみ砕いていったから、大分偏見のある内容にはなっているが、あながち間違いでもないから困ったものだ。
そのせいで、俺の支配下にある街に来て、同じようなことを当たり前にするので、貴族関係のトラブルの多い事多い事……本当に勘弁してほしいね。
分かりやすく言えば、フレデリクとリーファスで、俺が支配する前と後のトラブルは、貴族:商人:住人の犯罪割合が、0:2:8から2:6:2になっている。
住人が多いから、住人のトラブルが多いと思われがちだが、俺の街では住人のトラブルはかなり減っている。多少苦しい生活を強いられている人もいるが、以前に比べれば天と地ほども違うのだ。衛生面も良くなり、健康的な生活を送れているので、トラブルが減っているのでは? との見解だ。
それに対して貴族が0から2になったのは、多すぎないか? と思われるが、これにも理由がある。貴族と言っても、関係者のトラブルも含まれるためにここまで多くなる。今まで見過ごされていた物でも、処罰対象になっているのでこの数になるのだ。
しかも、1つの貴族と関係者で複数……それも、数十と問題を起こすので、数の多い住人と同じ割合でトラブルを起こしていることになるのだ。本当に迷惑だな。
商人の2から6に増えた理由も、分かりやすい。不正、賄賂、禁制品の密輸に加え、大店の商会は貴族と同じような振る舞いをして、金で解決するのが当たり前になっているため、割合にすると激増するという形になった。
これでも、大分ましになった方だって聞いて驚いたくらいだな。俺が書類を読む前なんかは、貴族が5~6割も占めていた時期があったのだとか。
俺の街が景気がいいからって、その恩恵に与ろうと街にやってきて、商会などから金を巻き上げようとしていたり、この街に出入りしている商人たちから、通行税と言って本来払う必要のない金を得ていたんだとさ。
貴族って、そういうもんじゃないだろう。本来貴族というのは、集団の中に生まれた指導者みたいな人が、金を納めてもらい、領地を守り、従人たちのために働くのが本来の形だと思う。で、住人のために働いていれば、自分でお金を稼げないから、税金から給金という形でお金をもらうのだ。
だけど代を重ねるごとに、『人のために』この部分が薄れていき、横のつながりのために金を使ったり、自分のために金を使ったり、懐が寂しくなれば重税をかけたり……と、やりたい放題になっている貴族が多くなっていく感じだな。
時には見栄を張ることだって必要かもしれないけど、必要ない部分はしっかりと切り詰めて、必要な部分にはしっかりとお金を使うのが、貴族だと思うんだけどね。それは俺の意見であって、この世界の常識ではないだろうが、自分のために金を集めるのは、間違っているだろう。
三大国の国王も皇帝も、色々な問題はあったが、今言っているような馬鹿げた政策は行っていない。調子に乗った貴族共が、失策を隠すためだったり、贅沢するためだったりと、バカなことしているだけなのだ。
あまりにも目に余れば、首を切り落として領主を入れ替えているらしいけどね。
国のトップでも、貴族家の問題には手を出しにくいものだと思っていたが、そうでもなかったようだと、聞いた当時は思ったもんだ。それなのに、国王は俺に奴隷兵をけしかけてきたのは、どうしても手元に置きたかったという理由があるようだ。
こっちとしてはいい迷惑だったけどな!
なんて、懐かしいことを考えながら、報告書を読んでいく。
ん? 妻たちが選別している報告書とは別に、3枚ほどグリエルから直接あげられてきた報告書がある。
その内容は、最近湖でリバイアサンの影を目撃するというものだ。報告書は3枚だが、リバイアサンの姿を見たという漁師が複数いる上に、魚人からも同じような報告が上がっている……
「どういうことだ? ソフィー、レミー、メルフィ、何か知ってるか?」
今日の選別に来てくれている3人に聞いてみたが、首を横に振っている。
「メグちゃんとシリウス君って、最近は子どもたちにベッタリだよな? こんなに何度も見かけられるほど、湖に行ってるとは思えないんだけど……魚人からも報告が上がってきているから、多分見間違いではないと思うが、どういうことだ?」
4人で首を傾げていると、今日珍しくついてきているシエルから、
『どんな姿で、どのくらいの大きさだったか分かりますか?』
と聞かれた。
「えっと、大きさは……10~15メートルくらいで、蛇のようなシルエットみたいだな。あれ? あの2匹って、そんな中途半端なサイズになってたことってあったっけ?」
あの2匹は、普段家にいる時は、50センチメートルくらいのつるんとしたヘビ型で、大きくなっても2メートルくらいだったはず。で、湖の中で泳ぐときは50メートルくらいまで大きくなって、深海を泳いでいるはずなんだが……
『もしかすると……』
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