1821話 都合よくいかないな
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妻たちにエクスカリバーとカリバーンの事を話したが、もともと良く切れる剣としか認識していなかったため、興味を持っている者もいなかったようだ。使い慣れた武器の方が、いざという時に頼りになるということらしい。
他にも理由を揚げるとすれば、切れすぎる剣では、受けることが困難だということだろう。完璧に受けて今までの武器なら、問題なかった行動なのに、エクスカリバーだった場合は……受けた相手の剣が切れて、切れた勢いのままこちらに向かってくるのだから、危なくて仕方がない。
そういう風に言われて、やっと気付いたのだ。良く切れる武器は攻めるのには向いていても、守りには向かない武器だということだ。そういう意味では、二刀流のコンセプトである怒涛の攻撃性は、エクスカリバーとカリバーンの特性に合っているかもしれないな。
となると、専用機の剣オンリーはあまり成果が上がらない可能性があるか? もう片手に防御に向いている、マインゴーシュみたいなのはありかね?
マインゴーシュと組み合わせるなら、レイピアってイメージがあるけど……すべてを受け流す物と考えれば、エクスカリバーとの相性も悪くない気がするな。
すべてを受け流す最強の守りマインゴーシュ、すべてを穿ち薙ぎ払う最強の攻めエクスカリバー、マインゴーシュは基本的に利き手ではない方に持つみたいな話を聞いたことあるけど、あれって本当なのかね? メインの武器を聞き手に持つことを考えれば、ありえる話だけどな。
夜は、年中組のみんなに押し切られて、みんなで致すことになり、俺は時を経るごとにやつれていくが、妻たちは永久機関か! と言わんばかりに元気になっていたな。原理は分からないけど、理不尽だと思う!
朝起きればすでに12時を回っていた。シルキーたちは、妻から報告を受けていたので何も言わなかったが、昼食は思いっきり精のつく料理が並んでいたな。
午後からでも庁舎へ向かおうとしたが、今日は問題ないので家でのんびりしていてください、と連絡が入っていたようだ。
のんびりと本でも読もうとしたら、スプリガンから連絡が入る。
『ご主人様、大至急監視室に来てください!』
慌てている様子のスプリガンが、緊急だと言って早く来るようにお願いされた。普段は使わないのだが、大至急なのでゲートを使っての移動をして、監視室へ向かった。
「ご主人様、勇者を監視していたのですが、急に仲間割れを始め、殺し合いを始めてしまいました。勇者はまだ無傷なので問題ないですが、人数を考えると殺されてしまう可能性もあり、大至急来ていただきました」
良く分からないが、勇者たちが殺し合いを始めたそうだ。スプリガンの話では、勇者の持つ収納のアイテムに多少の食料は入っているが、男のメンバーに分け与える量が少なく、勇者+女と男に分かれて殺し合いが始まったそうだ。
ここにきて、勇者の称号なんてクソの役にも立たねえからな。今まで傲慢だった勇者を殺して奪う……っていう選択肢があってもおかしくはないか。それに優遇されている女たちも憎く見えるだろうな。
といっても、勇者を殺されるのだけは困るんだよな……しょうがないか。
「こいつらのやってきたことを考えれば、食料が少なくなれば殺し合いがすぐにも始まるのは、おかしくないよな。女は今のところ、勇者に従っている感じか?」
「それなのですが、食料を持っているのがあの勇者なので、従っているだけに見えます。何かのきっかけがあったら、あの勇者を殺して収納のアイテムを奪いそうですね」
「そこまでボロボロな内部状況なのね。こりゃ駄目だな。勇者だけを隔離するか……何とか落とし穴に落ちてもらい、1人でダンジョンを彷徨ってもらうか?」
「生き意地の汚い勇者なので、自殺は無いと思いますが……どう転ぶか分からないので、神経を使いますね」
「そっか、負担かけてごめんな。それなら、勇者だけ回収してしばらくは、オリバーに頑張ってもらうか」
よし、そうしよう。集まれるメンバーだけ集まってもらい、オリバーとジャックとオスカー、それに従魔たちに招集をかける。妻は、半分程が来れたが、これ無かった妻たちの代わりにメグちゃんが来ている。シリウス君とメグちゃんの、リバイアサンコンビだ。
本当の姿をみたら1匹でも絶望的なのに、それが2匹もここにいる。ついでとばかりにバッハも来ているし、あれ……何でお前までいるんだ?
バッハの後ろにたまに見かける、ユグドラシルの分体がいた。話を聞くと、ドリアードとは方向性が別だが、植物に干渉することのできる分体が手伝いに来てくれたようだ。
植物に干渉すると言っても、本体があのユグドラシル……世界樹なので、分体から本体の世界樹を生やして、それに干渉して攻撃や罠、防御に転用するのがこいつの戦い方らしい。
それを聞いて、対象だけを隔離できないか聞いてみると、木の根で分断するのであれば問題ないとの返答がある。よしよし、これで簡単にとらえられるな。
ということで、ユグドラシルさん、やっておしまい!
指示を出すと、勇者たちが戦っている部屋に、急に木の根が生えだして、部屋にいる勇者パーティーを攻撃し始める。おや? 隔離してほしいと言っただけなんだが……
すぐに答えが分かった。攻撃を仕掛けることで、勇者から人を遠ざけているようだ。十分に離れた所で、勇者だけが木の根の檻に囚われた。
俺はすかさず、勇者の隔離されたエリア一帯を落とし穴に変え、下に作ったダンジョンへ落とす。
予定だったのだが、勇者が粘って何とか木の根に飛びついてしまったようだ。ユグドラシルも木の根で攻撃させているのだが、ここにきて勇者の特性が効果を発揮しているのか……木の根を攻撃に使っている木の根を、簡単に切り払っている。
檻用は頑丈なようだが、攻撃に転用しているのは強度が低いらしい。
となれば、メグちゃん、シリウス君、お願いしていいかな? シェリルとイリアに抱かれている2匹が、一鳴きして水を生み出し、木の檻に向かって流れを生み出した。
「クソが! また水責めかよ!」
少し離れた部屋にいたのに、ここまで響いてくるような声で、勇者がそんなことを言っていた。
2匹のリバイアサンの水責めに、ユグドラシルの木の根攻撃をくらって、奮戦むなしく新しく準備したダンジョンへご招待。
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