1802話 気にしたら負け
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昨日は調子に乗りましたが、今日はもう大丈夫だと思います。妻たちが受けた苦情は、拡張による周りへの影響を考えなかったものだ。なので、中身をいじる今日は、特に問題は無いはずだ。
そして、スペシャルゲストとして、バザールと綾乃も呼んでいる。
「何か、1人で完結しているでござるな」
「ああいう時は、放っておいてあげなさい」
「失礼な! 昨日は無計画に拡張してクレームが来たけど、今日は特に拡張するわけじゃないから、クレームも来ないはずだ!」
「分かったわ。それで、今日は何で呼ばれたのかしら?」
スペシャルゲストとして呼んだが、何も説明せずに呼びつけている。こいつらも、案外このスタイルを気に入っているので、表面上だけ文句を言うけどな。
「今日は、アナログなディスプレイ表示をされている映像を、手に付けた特殊な手袋で空間投影できるようにして、拡大縮小交換何でも手の動きだけで操作できるシステムを、開発したいと思います」
「さすがに、それは無理じゃないかな? 空間投影はスパコンを使って、制御関係はDPの魔改造によるモノでしょ? 制御関係をいじれなければ、手袋に反応させることなんてできなくない?」
「機械的に考えれば……無理でござろうな。魔法的に考えれば、出来ないことも無いでござるかね?」
「というかさ、俺の執務室にある空間投影のシステムってさ、物理的なキーボードってないんだよね。投影されたキーボードや、映像をタッチすることで反応するからね。投影されたキーボードや映像をタッチする部分を改変して、手袋に反応させられないかって考えているんだけど、どうだと思う?」
「む~、DPには困ってないんでしょ? 廃棄する前提で、作ったらいいんじゃないの?」
「それもそうか、DP錬金で稼いでいるし、多少なら使っても問題ないもんな」
「作る前に、設定がどこまでいじれるか、確認するでござるよ」
そう言って、俺の部屋にあるシステムと同じものを、スキル上で呼び出して魔改造をしていく。どんなにいじっても、空間投影タッチパネルのようなものはできるのだが、手の動きだけで操作が出来るようには設定できなかった。
「考え方を変える必要が、ありそうでござるな。元々想定されていないシステムを、強引に今の形にしているでござるから、これ以上変えるのは厳しいでござる。パソコンに対するマウスやキーボードみたいに、周辺機器として動きを読み取る機会を、接続した方が良いのではござらんか?」
「バザールにしては良いこと言うじゃない。確か、VR系の機能に、特殊な手袋を装着して操作するタイプのものがあった気がするわ」
綾乃の言った通り、手の動きだけで入力できるデバイスが存在していた。VRではなく、パソコンに繋げるデバイスだったのだが、俺のイメージしているのとは違った。俺が目指しているのは、映画のマイ〇リティ・リポー〇に出てくるあれだ。
空間投影タッチパネルで似たことはできるが、今回目指しているのはあれの進化系だ。よく覚えていないが、あの映画では、ある程度決まった位置での操作が基本だったはず。でも今回目指しているので、手袋をつけてどこでも操作可能、というものだ。
無理と笑うなら笑えばいい! だけど、DPに不可能は無いと信じている!
「デバイスの線は、いいと思うけど……召喚できる奴って、ダサい。もっとカッコいいのにならないわけ?」
「もう、機能だけ残して、クリエイトゴーレムで見た目をいじったらどうでござるか?」
「「それだ!」」
すっかり忘れていた、クリエイトゴーレムの存在を、バザールが思い出させてくれた。色々試していて気付いたのだが、画面の操作という意味では、親指・人差し指の2本だけでも、どうにかなるもんだった。
もっと言えば、中指を入れた3本にすれば、ノートパソコンのタッチパッドと、同じ使い方ができることが判明した。
「だけど、シュウが言ってたみたいな、スマートな感じがしないわね……」
ちょっと無理があったのだろうか?
「思ったでござるが、投影された映像は手袋で操作できるでござるから、それ以外の部分は違うデバイスに頼ってもいいのではござらんか? トランシーバーみたいに、ボタンを押しているときだけ認識する、みたいなのはどうでござるか?
例えばでござるよ。番号を指定すると拡大された画面が投影されて、拡大したい場合は手袋操作……とか、出来ないでござるかね?」
手袋と音声で操作するってことか……
「それ、採用!」
物は試しと思い、俺の執務室と同じシステムのある指令室へ移動して、音声デバイスはワイヤレスイヤホンで、音声認識のシステムを指令室の物に繋げる。
これだと、ただ音声を録音できたり、スピーカーに流すだけなので、指令室のシステムに追加プログラムをインストールする。融通の利くDP様様である。ワイヤレスイヤホンにクリエイトゴーレムをかけて、専用手袋で触れている間だけ起動するように設定する。
ワイヤレスイヤホンに触れ、
「一番」
30個写しだされているモニターの内、拡大したい番号を告げる。そうすると、目の前に一番モニターの映像が、空間投影される。投影された映像を手袋を使い、拡大・縮小・移動・モニター交換などを試していく。
「問題なく使えているな。解除」
再びワイヤレスイヤホンに触れて、空間投影を解除してみる。問題なく消えた。
俺、バザール、綾乃の3人で同時に試してみたが、問題なく機能している。ちょっと想像していたのとは違うけど、これで十分だろう。これ以上となると、思考を読み取るような何かが必要になってきそうだ。
「驚いたでござるな。この空間投影のシステムに、こんな隠された機能があったでござるとは……」
今俺たちが驚いているのは、空間投影された映像についてだ。どういう理屈か分からないのだが、他人に不可視化が出来るのだ。空間投影なので、全員に見えるとばかり思っていたのだが、手で操作するときにボタンを押すと、他の人に見えなくなったのだ。
集まったところで使うと、映像が重なったりしないか心配だったのだが、特にそんなことも無くかなり便利に使えるようになった。
ご都合主義的力が働いているとしか思えなかった。
完成したシステムは少し調整して、指令室に使っている100倍の性能のスパコンを召喚した。かかったDPは50億程……日本円にして5兆という途轍もない金額を使ったことになる。オイル漬けの氷点下50度の部屋に押し込んでいるので、管理は楽である。
あ、1週間ほど、無駄に使ったDPを戻すために、3人でせっせとネタ武器を作って、DPに還元したよ。
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