1791話 馬鹿な文官
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子どもたちのトラブルが、イジメでなくてよかった。ミーシャたちには人数の違いで、少ない方がイジメられているように見えたのだろう。実際には、美味いモノの競い合いをしていただけで、ただの言い争いだったのだ。
これで殴り合いの喧嘩とかになるなら、俺も近くにいた大人たちも止めただろうが、自分の好きなオカズ……と言っていいのか迷うが、食べ物への愛を言い合ってただけだ。
これがダメなら、老ドワーフたちを全員矯正しないといけなくなる。あの爺さんたちは殴り合いに発展するが、きちんと決められた場所でルールのある決闘として殴り合うので、セーフである。殴り合いじゃなくて、相撲っぽかったりレスリングっぽかったりする決闘方法もあるな。
これで解決したかと思えば、次の日に同じ内容でまた決闘をするし、喧嘩をするほど仲がいいのだろうか? そういうことなんだろうな。ただ度が過ぎると、店を管理しているブラウニーに、出禁をくらうので節度を守っているようだ。
知らんがな!
それにしても、ミーシャたちの報告書(日記)は、大人だと見つけられなかったり、スルーしたりするような内容まで書かれているので、読むのは大変だが街の様子も分かるので、正直助かっている。今日帰ったら、褒めてあげよう。
それ以外の報告書は、いつもと変わらない感じだな。気になるのは……この収支報告書かな? 前回やその前の報告書と、ほとんど数字が変わってないんだよね。
他の街の収支報告書は、毎月上下はあるのだ。それなのにほとんど数字が変わっていないか、変わっても少しなのだ。何が原因なのか、それともこの報告書が間違っていないのか……調べる必要があるな。
担当者の名前は……あれ? 数字が変わらなくなった3ヶ月前から、報告書をあげてきている人物の名前が変わってるな。人事が変わったなんて報告書……あったっけな?
妻たちに仕事を中断してもらって、3ヶ月ほど前の報告書から人事変更の有無を確認してもらう。同時にグリエルとガリアにも連絡を取り、人事の件を確認する。
2人は各街のトップや周辺については、こちらから派遣しているが、人事に細かい指示までは出していないとのことだ。
報告書を改めて読んで、2人も違和感に気付き確認を始めた。いつも大量の仕事をこなしているので、前の報告書の数字まで把握できていなかったようだ。これからは関連書類として、収支報告書は過去のものと比較できるようにするとのことだ。
俺がこの数字を覚えていたのには、カラクリがある。先月の報告書を読んでいるときに、語呂合わせみたいなことを数字で遊んでいたのだ。そのために、あれれ? と気付けたのである。
この報告書をあげている奴って、現地採用者だよな? 適当な仕事をしても問題ないとか、考えてるのかね? それとも、差額を着服でもしてるのか?
金を出す場所と報告書を書いている部署が違うのに、着服なんてできなくね? それとも存在しない経費や何かを、でっちあげているのかね? 他の可能性としては……他の部署の人間も関与して、着服している?
これは確認が終わらないと、何もわからないな。俺は、自分の仕事を進めていこう。
これも特に問題な~し。これもこれも、だいじょ~ぶ。適当に見えるが、きちんと読んでるよ。まぁ読んでも読まなくても特に変わらないのだが……内容は、そうだな、ブラウニーたちの食堂を増やしてくれ! と、中立地域以外の街のドワーフが出してきている物だ。
本来なら、こんな報告書は上がってくる必要はないのだが、数が数なので何枚あるのかが毎回上がってくるのだ。ちなみに昨日は6枚、今日は8枚だ。同じ街の違うドワーフからの報告書……違うな、これは陳情書だ。
このドワーフたちは前の話と繋がるのだが、ブラウニーたちの店で度が過ぎるおいたをしたので出禁をくらい、老ドワーフたちによって左遷されたようなものだ。
老ドワーフたちは常々シルキーたちに、ドワーフたちのトラブルについて文句を言っているようで、出禁をくらうような馬鹿をしでかした奴は、ブラウニーたちの店でなくても、そこそこの飯とそこそこの酒を飲める、ゴーストタウンやディストピアから追い出されている。
俺は、ヴローツマインから老ドワーフたちを引っ張ってくる際に、飲食代金についてはこちら持ちにして、1日ボトル1本まではタダ、それ以降は自分持ちでドワーフやりくりしているのだ。
この条件が有効なのは、ディストピアとゴーストタウンの2ヶ所だけで、他では全部自分持ちである。飯も良く食べるので、高給取りのドワーフたちでも、酒を控えないとお金が無くなってしまうのだ。
そんな制限のある場所に長時間居たくないと頑張り、早く戻ってくるために努力をするのだが……ブラウニーたちの飯が美味いのが悪いよね。食べたくなって、こういった陳情が毎日送られてくるのだ。
領主館や商会の支店にもブラウニーたちはいるが、ブラウニーたちの管理する場所に出禁をくらっているので、そこへ行っても食べることも飲むこともできないのだ。仕方がなく街の食堂などに行くのだが、美味い飯と酒が忘れられないらしい。
料理も生産系のスキルがあるんだから、自分たちで作ればいいじゃん! とか言ったのだが、料理は作る物じゃない! 食べる物だ! と言って、作ることを完全に拒否していた。
リンドも来た当初は、料理なんて! というドワーフだったが、今はシルキーやブラウニーたちに混ざって、普通に料理を作っているぞ。まぁ、リンドもカエデも飲むこと専門みたいなところがあるので、朝食や昼食の準備を手伝うだけで、夕食まで手伝うことは無い。
っと、なのでこの陳情書は……いつもの場所へポイッ! これで……この陳情書の高さが1メートルくらいになった。これって何枚あるんだろうな?
どうでもいいことを考えていたら、妻たちから報告が上がる。
どうやら、人事が変わった報告書は届いていないようだ。これにはさすがにグリエルとガリアも怒り、慌ててリーファスの領主代行に連絡を取る。
リーファスの領主代行というがフレデリクも兼任しているので、普段いるフレデリクに連絡を入れている。
領主代行も寝耳に水だったようで、フレデリクでも慌てて確認が始まる。
調査の結果、元々能力の高かく問題の無かった文官は、そのまま雇い入れていたのだが、その文官をリーファスの領主代行補佐に就けた結果、領主代行が気付かない間に、勝手に人事をいじっていたらしい。
そんなことをした理由は、コネを使って自分の親戚の子どもを就職っさせたかったのだとか。その領主代行補佐も、今回の件は知らなかったようで、驚いていたそうだ。
だからといって、勝手に採用しちゃダメでしょ。正直収支報告書をあげる部署は、集まってきた数字をまとめて報告するだけでいいのだ。おそらく日本人なら中学生でもできるレベルの報告書である。
それを、面倒だと言って、前の月の資料から抜き出した数字を使い、収支報告書を書いていたのが原因だ。
残念だけど、そんな使えない人間はいらないので、即刻首になり。そんな使えない親戚を無断で採用した、領主代行補佐も一緒にクビになった。
この世界では、この対応が普通なので口を出さなかったが、日本人的考えをすると……親戚のやつはクビでもおかしくないが、領主代行補佐の方は降格、減給などが普通ではないだろうか? 連帯責任で、クビになるかな?
着服とかが無くて良かった。不正というよりは、職務怠慢が一番の原因だったな。不正はなかったので、放っておいても2ヶ月後にある収支報告で、使途不明金が出たはずなのでそこで気付けただろう。
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