1775話 厄介事
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テトたちを呼び出してから、数日が経った。こいつらの行動パターンが分かってきた。
基本的には、ちょっと前までのダマの立ち位置が近いだろう。最近は護衛以外では自由にしているダマたちだが、テトたちに仕事を教えるために付きっきりである。
今、庁舎に向かって歩いているのだが、色々な人に声をかけられる。会いに行けるアイドルならぬ、よく会える領主は街の人にフレンドリーに接してもらえている。
度が過ぎた対応をすると、ダマたちが怒るので今のくらいの対応がベストだと、街の人たちが理解して声をかけてくれているようだ。
庁舎に向かって階段を上がっていると、学校エリアで子どもたちに捕まった。
小さいダマも人形みたいで街の人に人気があるのだが、大きな毛玉のランは特に、子どもたちから絶大な人気を集めている。ディストピアには、魔獣の猫も放し飼いにしているし、人造ゴーレムの猫型も放しているので、猫が好きな人が多いのだ。
そんな猫が大きな姿で現れれば、子どもたちが飛び付いても仕方がないだろう。
猫といっても身体の大きな魔物なので、ステータスは高いため子どもたちが飛び付いても、ビーチボールをぶつけられた程度の衝撃しか感じていないため、怒ることもなく子どもたちの相手をしてくれるしな。人気になるのも頷ける。
ライの方も人気はあるのだが、ランがどちらかというと男の子に人気があるのだが、ライは女の子に人気がある。猫としては大きいけど、抱き付くにはちょうどいいので、女の子に人気なようだ。娘たちもよく抱き付いているしな。
ダマ、人気が取られたからって拗ねるな。俺が撫でてやるからさ。よしよし、ここがええのか? 耳の後ろをかいてやると、目を細めている。追い討ちで顎のしたもやってやろう。
ランが来たことによって、俺の執務室は少し手狭になってしまったので、ダンジョンマスターの能力を使って、建物を少し高くしている。
先日までは、俺の執務室は職員たちと同じフロアにあったのだが、改装後は最上階のフロア全体が俺専用になっている。階段の側に秘書が詰めている部屋があり、その先が大きな部屋になっており、俺が仕事をする空間だ。
グリエルやガリアの執務室は、階段のすぐしたにあるので、呼べば1分もあればこれる距離だ。前みたいに、呼んですぐ来てもらえるように、同じフロアに執務室を作ろうとしたが、職員たちと距離が離れると仕事の効率が下がるので拒否されてしまった。
全てが俺の都合でどうにでもできる訳じゃないので、しょうがないよな。グリエルたちの執務室は、もともと俺の執務室があったところなので、無駄にハイテクな空間投影などをつかえるから、俺が行っても問題ないしな。
それに、俺に対するグリエルやガリアの立ち位置は、今は妻たちに引き継がれているので、近くに自分たちがいる必要がないと考えているようだ。
大きな執務室があるのだが、あまりにも広すぎるので、俺は執務室のいっかくに本棚やロッカー等を置いて、20畳ほどの空間を作って妻たちと仕事をしている。
もちろん広すぎる執務室も使えるように、色々準備しているので話し合い等をするときは、使えるようにしている。まぁ、大半は従魔たち運動スペースになっているけどね。
クリエイトゴーレムで、下の階に足音が響かないように処理している。あ、日の当たる窓の近くには、テトたち専用のクッションが置かれている。運動をした後にあそこで休むのだ。ストームキャットは、自分お腹の毛の手入れをする場所でもある。
今は、ダマを呼んで胡座の上に乗せ、モフりながら妻たちが、仕分けしてくれた報告書を読んでいる。
いつもある報告書ばかりだな。マンネリ化している報告書だが、しっかりと隅々まで読んでいく。ありきたりな報告書や日報などは、読む人間が重要だと思っている部分だけを読んでしまう、ということがあるそうだ。
意識的に読んでいればそんなことはないだろうが、時間に追われていたり、忙しかったりするときやマンネリ化しているときに多いのだとか。
俺の仕事はこれしかないのだから、マンネリ化なんて言ってはいけないな。気を引き締めないと!
報告書を読んでいると、飛び入りで早急に判断してもらいたい案件として、一つだけ緊急マークの付いた報告書が上がってきた。
緊急ということは、ディストピアの上層部全員に届いていることになる。妻たちにも届いていることになる。チラッと今日のお供の妻たちを見る。シュリとマリアが険しい顔をしていた。
ムムム? 俺が読む前に既に読んでいたようで、内容が拙いのだろう。
俺も読んでみよう。
ふむふむ…………確かにこれは、問題だな。二人の顔が険しくなるのも仕方がないかな。
要約すれば、勇者が俺の商会に保護を求めてきたそうだ。
勇者ね……関わってきた勇者は十中八九面倒を起こしてるからな。関わった勇者で面倒事じゃなかったのって、綾乃だけだもんな。いや待てよ……綾乃も面倒といえば面倒だったな。そう考えると全員か?
そして助けを求めてきたのは、フレデリクの支店なのだとか。聖国から逃げ出して、小国郡を抜けてフレデリクまで来たそうだ。抜けてきた小国郡にも、支店はあったんだけどなんでフレデリクだったんだろうか?
妻たちも、フレデリクで助けを求めた理由が気になるようだった。
俺たちが危惧しているのは、聖国の上層部は俺がダンジョンマスターだと知っている。勇者がダンジョンマスターに対する切り札だということも知っているはずだ。
教皇が逆らうとは思えないが、あの腐った宗教なら上層部は欲まみれだし、俺を排除してミューズや俺の支配下にある街を、手中におさめることを考えてもおかしくない。
本当に助けを求めてきているのかもしれない……
そう考えると、どうしていいのか判断に迷う。
部屋の外から階段を駆け上がってくる足音が聞こえる。ノックもしないで、俺の執務室の扉を開けて誰かが入ってきた。
グリエルとガリアだ。この二人も険しい顔だ。
話し合いを始めるために、狭い部屋から出て広い空間へ。
「シュウ様、その様子だとお読みになったようですね。ゼニスさんもすぐに駆けつけるそうです。ドワーフの皆様も領主代行も、通信で集まれるようになってます」
上層部が揃うようだ。
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