1756話 キャンプは予想より高評価
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「そういえば、あれってキャンプっていうんですよね。私たちには無縁で、この世界で同じような場所でやろうとしたら、野営って気分でとてもレジャーとは言えないですからね。新鮮な体験だから、人気は出るのではないでしょうか?」
ガリアはこう評価している。
昨日のことがあったので、休憩の合間に2人に聞いてみたのだ。
「そもそも、シュウ様は普通の冒険者たちのキャンプというか、野営ってどういうものかご存じですか? 荷物がかさばるので、革の外套だけで寝たり雨除けの屋根だけで、その下で休んだりするんですよ。そんなことしたことありますか?」
グリエルにそう聞かれて……想像してみたが、やったことも無ければ、耐えられるとも思わない。ディストピアは比較的、テントの性能が良く軽いので忘れられがちだが、普通の冒険者たちは可能なら、野営はしたくないと考えているのだ。
護衛で街から街へ移動するときは、ある程度の野営装備は馬車に積んであるので、まだ楽な方である。魔の森の中での野営は、神経を削られるし大変だから、よほどのことが無ければしないことが多いのだとか。
魔の森でも、地下に休憩所作ってしまう俺は、冒険者の中で異端の部類に入るのだろう。でも、そういえばフェンリルを倒したときのパーティーでシングル冒険者の1人が、大岩に穴をあけて休憩所にしてなかったか? 同じようなこと考える人がいるんだな。
「テントが安くなってきたとはいえ、街に住んでいる人はまず使わないですし、娯楽として買うには高いですね。そういう意味では、貸出は悪くないと思います。貸し出すとなると、破損が気になりますね」
「そこらへんはさ、軽さや便利さを追求して頑丈さが損なわれているからな。長距離を持ち運ばないから、重くても頑丈な素材に変えれば良くないか? テントが高い理由のは、素材の特殊な加工による軽量化が大半を占めてるんだからさ」
「そうでしたね。合成繊維でしたっけ? あれを真似るとなると、それなりの素材を加工しないといけないから、高くなってしまったのでしたね」
「シュウ様のアイディアで、幌馬車の幌を余分に確保して、野営時にそれを広げて設営の時間短縮が商隊に広まってますよ。ポールを使って、屋根を高い位置に固定できるのも人気だと聞いています。ジェノサイドキャラバンの活躍を見れば、真似したくなりますよね」
「じゃぁさ、地球のテントを参考に、頑丈な素材でテントを作ってもらえば、寝床は問題ないかな?」
調理器具も持ち運びが面倒なので、ある程度こちらで用意できる方が娯楽として楽しめるかもしれませんね、だとさ。確かに荷物運ぶのって結構面倒だよな。俺たちみたいに収納の腕輪も無ければ、馬車も無いわけで、自分たちで運ぶとなると足が遠のくかも。
「後、思ったのですが、日帰りみたいな使い方はできないのですか? テントを使うとなると、泊まるイメージが強くなってしまいますが、休みの日とかに日中だけ楽しんで、夜には帰る……みたいな感じですね。そうだ、バーベキューを楽しんで帰るようなことも出来ませんか?」
確かに娯楽として地球にあるな。俺の中のバーベキューのイメージは、河原でワイワイするものだが、キャンプ場とかにバーベキュースペースがあるところもあった気がする。
「泊りはハードル高いけどキャンプの入門みたいにして、バーベキュー体験みたいなのもありなのかな? 考え始めると、いくつも問題があるもんだな。食材も各自持ち寄る……とかになると、面倒があるかもしれないな」
困ったもんだ。3人で頭を悩ませていると、今日一緒に来ていたエレノアが、
「娯楽として楽しんでもらうのでしたら、街の方の手を付けていない善意の寄付と人頭税を、還元してみてはどうですか? 今まで貯まった金額と、これから貯まる金額のペースを考えれば、街の住人が月に1回2泊した場合の食材を準備しても、5年は問題ないと思います」
街のことに使おうとしていた、住人たちからの寄付をここで使ってみてはどうか? と、エレノアからの提案があった。
「ふむ、悪くないと思うけど、寄付してもらったものだから、街の人たちに聞いてからだな。自分たちが寄付したお金で、娯楽が楽しめるとなれば行く人も増えるかもな」
「月1回の利用ならタダ、2回目以降はレンタルや食料代を貰う形にすれば、利用したい人はお金を払ってでも利用すると思います。たまに遊びに行く感覚でいいと思います」
今度はサーシャの意見だ。確かに、月1回利用している人も、月4回利用している人も全員がタダ……となると、さすがに不公平感が強いな。それに月1回タダなら、休みの日に集まっていくのも悪くないって考えるんじゃないか?
サーシャ、それ採用! どっちにしても、住人たちからの許可が出たらだけどね。
この計画は、2ヶ月後に正式にスタートする。庁舎で働いている人たちの特別休暇が終わり、バーベキューの体験ということで、普段忙しく働いている海産物エリアのおばちゃんたちや、畑エリアや家畜エリアで働いている人たちを、何度かに分けて体験してもらった。
そうしたら、税金を使わなくてもいいから、利用させてほしいとお願いが多数あった。よくよく考えたら、海産物エリアと畑エリアで働いている人たちって、結構高給取りだったわ。海産物も畑も作れば作っただけ売れるもんな。
少数派の意見で、忙しい時期だと行きたくてもいけないから、月1回じゃなくて年に何回とかになってほしいと言われた。
海産物も畑も、年中フル稼働しているけど、時期によって忙しかったり余裕があったりするもんな。月1回となると、利用できない月も出てくるか……
色々な問題はあったが、しばらくは善意の金額で様子を見てから、本格的に利用回数などを決めることになった。
そして、この娯楽の登場によって、キャンプ場を利用した際の寄付金が、食料の代金を上回り更に寄付の総貯蓄額が増えたことに気付き、庁舎の人たちが頭を抱えるのは1年の帳簿を作る時だ。
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