1748話 仕事で疲れているのに
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どうやら、及第点だったようだ。いろいろなところにヒントがあったので、もう少し早く気付いてほしかった、というのがガリアやその部下たちの評価だった。
俺が知らなかっただけで、グリエルとガリアは部下たちに個別に裁決権を与えているらしい。うん、2人に任せてるからそれでお願いします。
ディストピアの裁決権を分類すると、グリエルの部下たち、グリエルとガリア、俺の3種類がある。後者になるほど権限が強くなるかたちだ。
今回は、グリエルの部下たちの決裁権に当たる部分の報告書が俺に回ってきていたようだ。グリエルとガリアの分はガリアが1人で行い、ほとんどが俺に回ってきたため俺の仕事が終わらなかったようだ。
気付かなければポンコツのレッテルを張られた上に、残業を余儀なくされていただろう。仕事をしっかりと覚えなければ、庁舎からも追い出された可能性があるな。
社会に出たこと無くて、すべてをグリエルたちに任せていたツケだろうか?
手伝うと言っても邪魔になるだけだけど……グリエルたちに全部任せると言っても、「いるだけでいいから」と言われて、留まるようにお願いされるもんな。どうすればいいのやら。
この世界って世襲制なんだよな。それなら子どもたちの誰かにディストピアの領主になってもらわないといけないか? 上の子たちは、絶対に領主をやりたいなんて言わないだろうな。そう考えると、プラムとシオンも今の様子だと無理そうだ。可能性があるとすれば、シンラかな?
俺に寿命という概念が無いので、いつまでも領主を続けていられるのだが、それだとただの老害だよな。お金に困ることも無いから、ディストピアの信念さえ間違わなければ誰が領主でもいいと思うんだよな。選挙みたいなことをしてみるか?
実験的にやってみるのも悪くないんじゃないか?
そう思ったので、ガリアに話してみた。
「シュウ様、ディストピアの知識レベルは上がってきました。ですが、知識レベルが上がれば上がるほど、領主になりたい人はいないと思います。大変なのもそうですが、それ以上にシュウ様がいる限り誰も立候補なんてしないですよ。今の子どもたちの孫世代でやっと立候補者が出るかもしれないですね」
いや、俺は立候補しないよ! って思ってたら、シュウ様が出ないなら誰も出ないです。と言い切られた。
解せぬ! 街の最大権力者だぞ、住人は誰も憧れないのか?
「馬鹿なこと考えないでください。住人に権力者に憧れないのか聞く前に、シュウ様は何で領主でいることが嫌なのですか? シュウ様のように考える人が多ければ、誰もなろうとしないんじゃないですかね。私は、領主になりませんからね。今のポジションで十分です」
何でグリエルやガリアは、領主になりたいと思わないのだろうか? 俺の場合は、権力にさほど興味がないからな。最悪、力で押しとおることができるからだろうか?
「くだらないこと考えていないで、仕事を片付けてしまいましょう。ペースを上げないと、今日も残業になりますよ?」
むむっ! それはいかん。頭を切り替えて、報告書に目を通していく。
なんとか時間内に仕事を終わらせた俺は、深く息をつく。部下たちに仕事を割り振ったので、明日からはもっと早く終わるだろう。割り振るのに時間がかかって、今日はギリギリになってしまったんだけどな。いや、割り振ったのではなく戻っただけだな。
ゲートを使わずに家に帰り初めに目に入ったのは、スライムに乗ったプラムとシオンだった。
見るからに怒ってますよ! という雰囲気を出している。えぇ~、シンラを放置すればシンラに怒られると思って助けたら、プラムたちに怒られるのかい! どうしろってんだよ。
どちらを選択しても、正解でも間違いでもあるな。どうにもならんな、娘たちに嫌われるのは辛いがシンラは唯一の男同士だからな。娘はミーシャたちもいる、今の様子なら全員に嫌われる心配はないはず!
プラムとシオンは抱き上げる前に逃げて距離を取っている。この2人はあまり俺に抱きあげさせてくれないんだよな。こら! スライムたちを投げるな! そしてスライムたち、2人に協力するなっての!
プラムたちが投げても威力は全くないのだが、スライムが協力するためすごい勢いで飛んでくるのだ。ダメージを負うことは無いのだが、スピードがあって俺の体にまとわりつくようにぶつかるのだ。皮膚に張り手をくらったような痛みがあるんだよな。
ダメージは無くても地味に痛いから止めれ!
しょうがない、必殺技だ。
「シンラ、帰ってきたぞ」
大きな声でシンラに帰ってきたことを伝えてみた。ってか、プラムたちはいつから待っていたんだ?
何やら走って近付いてくる音が聞こえる。シンラはまだ走れないから、ミーシャたちだろうな。
漫画の1シーンのように廊下から滑るようにして、ミーシャ・スミレ・ブルムの3人が玄関に現れた。
「シンラを呼んだつもりだったけど、ミーシャたちが来たか。ただいま」
「「「おかえり!」」」
3人が飛びついてきた。体が成長してきたから、3人を抱きかかえるのは大変になってきたが、嬉しい悲鳴である。決して壁ができた! みたいな浅ましい考えは無いぞ! 娘たちが自分たちから飛びついてきたんだ。
プラムたちからの攻撃は止んだが、刺さるような視線が2つ……俺は、2人と仲良くできるようになるのだろうか? 毛嫌いされているわけではないが、臭いとか言われないよな?
遅れて来たシンラは、プラムたちに捕まり助けを求めるような視線を向けて来た。俺にどうしろって言うんだ? 悩む必要はなくなった。
ミーシャたちを追いかけて来たと思われるウルが、シンラを抱き上げていた。お姉ちゃんたちには逆らわない、というか仲良しなので怒っている雰囲気もない。
やっぱりシンラのことは、姉たちに任せるのがいいかね。
抱いていた3人を降ろして食堂へ向かう。ちょうど夕食の時間だ。今日のご飯は何かな?
おぉ、今日の夕食は、魚尽くしだな。
いろんな種類の刺身があるな。タイ・マグロ・カツオ・ヒラメ・ブリ・タコ・イカとかがあるな。白身のよくわからない魚もあるぞ、一緒に盛られているのは肝かな? もしかして、カワハギか? あれって美味いんだよな。
他にもフライや煮物などいろんな種類が机に並んでいる。一番目を引かれるのは、七輪で焼かれている半身の伊勢エビだろう。刺身はカエデが好きだからよく出るのだが、焼きはなかなか出ないから貴重なんだよね。いっぱいあるからみんなで食べような。
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