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ダンマス(異端者)  作者: AN@RCHY


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1744/2519

1744話 幕切れ

アクセスありがとうございます。

 俺は、右手で持ち上げている生き残りの勇者を見ている。


 素のステータスは、DPを使って体を魔改造した俺の方が高いだろう。そこに強化外骨格によるブーストや、メギンギョルドによる強化も行われているため、俺の手から逃げられないでいる。


 始めは、殴る蹴るなどして抵抗してきたが、水中であるため威力がかなり落ちている。生身でも痛みを感じる事はないのでは? と思う程だ。


 次第に苦しくなってきたのか抵抗する力も衰えてきた。そして、懇願するような眼を俺に向けてくる。


『お前たちが秩序を壊して放置して、どれだけの人間が苦しんだか考えた事があるか? お前らの所為で、強制的に奴隷に落とされた者もいるだろう。それだけならまだいい方かもしれない。女性は尊厳を奪われて、犯しつくされて殺された者もいるだろう。


 すべては、お前らが秩序を壊した後に、新たな秩序を作らなかった所為だ。


 すべては妄想かもしれないが、お前たちの自分よがりの正義にはウンザリだ。お前らの勝手な行動によって、迷惑を受けている人間がいるのは事実だから、都合のいい妄想ではないと思うけどな。


 ん? 迷惑を受けた人間なんていないみたいな目をしているが、それは無いだろ。


 お前が腕を切り落としたグリエルは、身を粉にして街の人のために働いているんだぞ。不正を見つければ自分の指導不足を嘆き、改善する方法を必死に考えるような人間だ。


 そして俺の商会は、賄賂の受け取りを禁止している。他にも不正をすれば、内容によっては物理的に首を飛ばす程だと聞いている。商会の名義は俺だが、管理しているのは優秀な部下だよ。そもそも、不正をしなくても稼げるんだから、悪いことをする意味がないんだよ。


 お前らのせいで悪いことをしないないのに苦しんだ人間は、絶対にいる。そいつらのためにも、苦しんで死んでくれ』


 空気球から放り出されて既に5分が経過しているが、まだ意識を失っていないようだな。


 ここからは、見ている方も気分が悪くなると思い、ダゴンに代わってもらう。魔物には罪悪感とかは無いからな、苦しそうに死ぬところを見ていても心が痛む事はないらしい。死因の1つとしか考えていないようだ。


 交換してから1分後、空気球から放り出されて6分とちょっとが経過した時、勇者の体が動かなくなった。気絶したのだろう。


 この段階ではまだ死んでいないんだってね。大量に息を吐いていたから、肺の中を水が満たしていると思うが、心臓は最大で20分ほど動き続けるのだとか。その間に肺の水を抜いて蘇生をしてやれば、息を吹き返すだろう。


 でもここは異世界、そして魔法がある。


 ダゴンは勇者に回復魔法を施していた。そうすると、意識が戻ったようでまた苦しみ始めた。苦しんで死んでくれとは言ったが、そこまでしろとは言っていないんだが……


 さすがに回復魔法まで使って苦しめるのは、俺の意に反する。これ以上苦しまないように、頭を潰させた。


 転移してくるまでの世界で正しい事をしていたのかもしれないが、思い込みで殺された奴らもいるんだろうな。秩序を壊したのなら、新しい秩序を作って民に安寧を与えるまでが流れだろうに。


 俺が主導しているわけじゃないけど、俺が関わって秩序を壊した時はしっかりと立て直すことはしているぞ。いい例が、聖国側にあったミューズの街だろう。


 あの街は、聖国の思想に染まっている人が多かったので、新しい秩序を作るために古い秩序を排除したからな。かなり苦労したけど、今は種族による差別なくみんなが明るく過ごしている。


 ダンジョンに水を吸収させ、遅れてきた人造ゴーレムたちに勇者たちの死体を運ばせて、一人ひとり火葬しゴーストタウンにある共同墓地へ納骨しておいてもらう。あっ、結局名前を聞いてないから、刻む名前が無いな。まぁいっか。


 ゴーストタウンでは、可能な限りダンジョンで死体を発見した際には持ち帰ることが推奨されている。もちろん褒賞金を出している。褒賞金目当ての犯罪も何度かあったため、罰則はかなり厳しくなっている。最悪、潰れるまで劣悪な環境での強制労働、事実上死刑だな。


 ダンジョンマスターのスキルで監視できるので、本当に見つけただけなのかを簡単に判断できるのは、現場の人間に喜ばれているらしい。ダンジョンが関わってくると、調べるのが大変だもんな。


 俺は身に着けていた強化外骨格3式を脱ぎ、グリエルのいる部屋へ向かって走る。


 治療は成功して腕も元通りだが、極限まで体力を使い切る治療なので、今はぐっすりと眠っているようだ。


 俺の所為で、グリエルにはケガをさせてしまったな。奥さんに謝りに行かないと……


 俺はすぐにディストピアにあるグリエルの家に向かう。


 グリエルの家って、思ったよりデカいな。俺の家を除けば、一番大きな住宅かもしれないな。


 グリエルの奥さんに今日のことを話して、頭を下げて謝る。


「謝らないでください。私たちは一度死んだも同然だったんです。奴隷に落とされた時は、死に方も選べず死んでいくのだと考えていたこともありました。そこをシュウ様に救われたのです。私たちは感謝こそしていますが、死にそうな思いをしたからといって憎むことはありません。


 主人も私と同じことを言うでしょう。大きなケガをしましたが、治していただいたのであれば何も問題はありません」


 だとさ。助けられているのは俺なのに、苦労させているのに感謝されているんだな……


 しばらくは体調が優れない状態が続くので、戻ってきたら休ませるようにお願いしておく。ディストピアにいるとグリエルは働き出す可能性が高いので、キャンプ場と一緒に作ったコテージに招待しよう。そこで一週間ばかり、ゆっくりしてもらうかな。


 戻ってきたら、引継ぎをしてガリアにも行ってもらうか。


 庁舎で働いている人たちは、長期の休みを取れているのだろうか? 取れていないのなら、グリエルたちのように強制的に休みを取らせるかな。


 明日、時間があったら勤怠状況を確認してみるかな。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

ブクマや評価をしていただけると幸いです。

これからもよろしくお願いします。

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