1743話 終結
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勇者たちは今、何を思っているのだろうか?
おや? 勇者の1人が、銃みたいな武器を取り出したぞ。レベルが高いのに銃に頼るっておかしくねえか? あの武器に銃並みの威力があったとしても、使い捨てでも槍を投げた方が圧倒的に強いんじゃないか?
マガジンを入れる場所が見当たらないので、魔法銃って所か? 撃ち出すが弾丸が魔法なら、威力は減算されないってところかな。
思った通り、魔法みたいなのが飛び出てるな。土魔法で弾丸を作って、風魔法をまとわせているのかな? 見て回避できるレベルの武器ではない。だけどあの程度の弾丸であれば、強化外骨格が無くても受け止められそうだな。
あれは、銃というよりは杖に近い機能がある武器ってことか。なるほど、俺が今まで作ってきた銃は、土魔法で弾丸を生成して火魔法の爆風で弾丸を飛ばし、風魔法の補助を使ってまっすぐに飛ばしてたんだよな。構造的に銃の扱いになってダメージが減算されてしまっていたはず。
この方法なら、ダメージ減算は無いのかな? 魔力等に依存したダメージを与えられるなら、いい武器なのかな?
普通なら水に弾丸を打ち込めば、抵抗によって弾丸の速度が遅くなるのに、風魔法をまとわせているせいか魔法の所為なのか分からないが、ものすごい速度で俺やシリウス君に向かって弾を撃ち出している。
さっきから、キンキンと強化外骨格が弾丸をはじいている。ちょっとした衝撃は来るが、俺の行動を阻害できるような衝撃もダメージも無い。シリウス君に至っては、魔法の弾丸に干渉して水流によって軌道をそらしている。
今近付いたら、大変な目にあうだろうな、注意しないと。
こちらが襲ってこないからと、魔法銃使いが牽制してその間に作戦会議かな?
そんな事を悠長にさせる程俺は甘くないぞ。
ダゴン! 俺がシヴァの槍を投げるから水流でブーストしてくれ! そんな感じで念話を送ると、了解の返事が戻ってくる。
俺は槍をかまえて、投擲する。
奴らを凌ぐ力とスキルの補助によって投擲されたシヴァの槍は、こちらに背を向けていた3人の勇者たちの、連れの1人であるヒーラーっぽい女の子に向かって、真っすぐに突き進む。
魔法銃を構えていた奴が、何かを叫びながらヒーラーっぽい女を突き押して、シヴァの槍から逃がした。
が、立ち位置の所為でその槍が魔法銃使いの鳩尾付近に刺さった。
即死では無いが、数分放っておけば死んでしまうだろう。
状況がやっと飲み込めてきた他の奴らが、こちらを罵倒しているように見える。アニメやマンガで良くあるセリフ、元ネタを知らないので様にならないが、
『お前らが何て言っているか分からないが、殺されるくらいでピーピー泣きわめくな。撃っていいのは撃たれる覚悟のある奴だ! 一方的に殺すのは、ただの虐殺だ。お前らが行ってきた行為は、ただの虐殺だったということだな。ちなみに俺は、死ぬつもりは無いが覚悟を持ってこの場に来ているぞ』
覚悟があっても、負けないと確信している卑怯者だけどな。
2本目のシヴァの槍を投擲する。
ターゲットは、死にかけている魔法銃使いの回復をしている、先ほどの女の子だ。戦闘において一番面倒な相手は、ヒーラーだ。そいつらがいるかいないかで、大きく生存率が変わってくる。
まず始めに削るのはあいつしかいない。
2本目の槍は、グリエルの腕を切り落としたクズ勇者が間に入り盾で弾いた。
どんどん行くぞ。2本目が弾かれる前に1本目を回収して、再び投擲をする。
基本的に話を進めていた勇者の1人も間に入り、こちらは両手剣でシヴァの槍を弾き始めた。
この位は出来ても不思議じゃないよな。銃弾だって手でつかめるであろう身体能力をもってすれば、音速にも達していないシヴァの槍に、剣や盾をあわせるのは簡単だよな。
だけどな、合わせるのは簡単でも質量がそれなりにあるので、弾くのにはそれなりに力を消耗しているようだ。
俺と奴らの距離はおよそ200メートルと言った所だろうか。俺が投擲してから槍が届くまでの時間は、およそ1秒。時速700キロメートル以上の速度で投げていることになる。
そんなのが水中から襲ってくるのだ。鎧を付けていようがかなりの衝撃が襲うはずだ。手足に当たれば、当たり所によってはもげてしまうだろう。
そういえば、シヴァの槍と同じような形の槍をドワーフの爺さんどもに作ってもらって、投げ比べをしてみた事があるのだが、威力に差が出たんだよな。武器自体が持つ攻撃力の差だということで、決着がついたっけな。
既に20回は投擲をしただろうか? 最初に仕留めたと思っていた魔法銃使いは、ヒーラーの手によって回復をされてしまった。
だけどさ、俺とシリウス君がここにいるからってこっちを全員で向くのって、バカだろ。召喚した3匹のダゴンの1匹は俺をフォローしているが、他の2匹もシヴァの槍を持ってるんだぞ。
2匹のダゴンは、水流操作で高速移動をして死角からシヴァの槍を投擲する。
腐ってもSランクの魔物だ。そんなに強くないとはいえ、得意の水中でメギンギョルドも装備させているのだ、その投擲速度はなかなかのものだった。
死角からの奇襲攻撃、前衛に守られて後ろへ下がってきていた魔法銃使いと、ヒーラーの首を目掛けて槍が迫っている。
勇者たちが魔法で維持している空気球の中に、槍が飛び出してきた音で半数が振り返った。その時には2人の首が宙を舞っていた。
これはほぼ即死だろう。首を切られても暫く意識があるというが、その間に首と体を繋げられるかもしれないが、まぁ無理だろう。
首が飛んでいる様子を見て、空気球を作ったと思われる魔法使いが吐いていた。
正直、何で? って思った。こいつらのことを知らないけど、言動と行動を考えると、今までに何人もの首を落としてきたはずだ。それに魔法使いなら、火魔法で焼き殺したり、風魔法で切り刻んだり、土魔法で串刺しにしたり、水魔法で溺死させたりしてただろうに……
仲間の首が2つ落とされただけで、そんな反応ができるんだ?
ダゴン2匹と俺からの投擲を何とか防いでいるが、お前らさデカくて忘れているかもしれないけど、海の王者が目の前にいるんだぞ? そいつが口を開けているのに気付いているのか?
次の瞬間、空気球が維持できなくなる程の水流が奴らを襲う。もみくちゃになっている所を、ダゴンと俺たちで槍を突き刺していき、最後にグリエルの腕を切り落とした勇者が残った。
君のお仲間たちは、槍で殺されてよかったかもな。お前だけ、溺死させてやるよ。意識を保っていられる間だけ、迷惑をかけられた人たちのことを考えて死んでいけ。
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